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fripSide「only my railgun」から積み重ねた10年 南條愛乃と八木沼悟志が互いの変化を語る

リアルサウンド

19/10/31(木) 18:00

 八木沼悟志と南條愛乃によるfripSideが、10月30日にニューアルバム『infinite synthesis 5』をリリースした。南條愛乃が2009年に加入し、2019年で10周年を迎えた第2期fripSide。11月4日から10カ所10公演の周年記念ツアーをスタートし、ツアーファイナルとして2020年4月に横浜アリーナでライブを開催するほか、さらにアニメ『とある科学の超電磁砲』第3期のオープニング曲にも決定するなど、大きなニュースが続いている。

参考:fripSide 八木沼悟志が語る、アレンジに対するこだわり「メロディメーカーでいることが第一」

 2010年からスタートした『infinite synthesis』シリーズも今作で5枚目。90年代から続く日本のエレクトロポップを現代的に突き詰め続ける八木沼と、ソロ歌手としても活躍する南條の二人にグループメイトとして感じるお互いのアーティストとしての変化、二人三脚で積み重ねた第2期fripSideとしての10年間について話を聞いた。(編集部)

■「only my railgun」の功績

ーー第2期fripSideがテレビアニメ『とある科学の超電磁砲』のテーマソング「only my railgun」をリリースしてからもう10年経つんですね。

南條愛乃(以下、南條):そうなんですよね。私が加入したタイミングなので。

ーー正直「そんなに経ったんだ!」と驚いてしまって。

八木沼悟志(以下、八木沼):皆さんおっしゃるんですよね、「10年って! ついこないだじゃないの?」って。

南條:私たちからしてもあっという間で、「ついこないだじゃない?」みたいな感覚なんですけどね。最近は、放送当時は『超電磁砲』を知らない小学生だった子が成長してオタクになり、ありがたいことにいろんな人に「only my railgun」をカバーしてもらっているので、そのカバーから「only my railgun」を知って、私たちのオリジナルを知り、そこからまた『超電磁砲』を知るという逆輸入みたいなケースもあるみたいで。10年ってそういうことなんだなって驚かされます。

ーー確かにそういう声はよく耳にします。

南條:私たちはフェスやライブで毎回歌って、切っても切り離せない関係で10年やってきて。ここ最近はロックフェスのステージにも立たせてもらって、そこで「生で初めて聴けてうれしかったです!」と言ってもらえると、まだまだ歌いがいのある曲なんだなと実感します。

八木沼:そうだね。もう何百回とやってきて、いまだにそう言ってもらえるのは本当にありがたいです。

南條:なので、「only my railgun」から10年のタイミングに『超電磁砲』新シリーズのテーマソングをやらせていただけるのって、本当にうれしくて。だって、すごくないですか? 9年とか8年みたいなタイミングじゃなくて、狙ったかのように。だから、今からすごく楽しみなんです。

ーー「もう10年経つんだ」という言葉には、この曲をまったく古く感じないという意味も込められていると思うんですよ。

八木沼:今、ちょうど『超電磁砲』第3期の楽曲を作っているんですけど、「only my railgun」を聴き返すとテンポが10年前の感覚で、若干遅く感じるんですよ。

南條:当時はめっちゃ速かったですけどね。

八木沼:当時のアニソンと比べたら「速ぇ!」みたいな。

南條:歌おうとすると「口が回らない!」みたいな(笑)。そこからどんどん、もっと速い曲がいっぱい出てきたし。

八木沼:実は「only my railgun」ってBPMが130ぐらいなんです。

ーー思ったよりも速くないんですね。

八木沼:そうなんです。この10年で音楽業界もアニソン業界もいろいろ変わってきていますし、そういう部分で変化は感じますね。

今の歌い方は嫌いじゃないし、昔の歌い方は真似できない(南條)
ーーこの10年で音楽シーン自体も大きく変わりましたよね。

八木沼:いろんなコンテンツがあふれている中で、いろんな取捨選択ができる。そういう多様性に満ちたシーンの中で、fripSideの立ち位置を今も守れているのは、やっぱりこの方(南條)のおかげでもあるんですよね。

南條:いやいやいや(笑)。

ーーそんな中、「only my railgun」を含むfripSideの楽曲やサウンドって90年代に青春時代を過ごした世代からすると、すごくど真ん中だと思うんです。だけど、そこにノスタルジーみたいなものはなく、ちゃんと今の音として鳴っている印象が強い。古びないというのは、使っている音色によるものなのか、ちょっとした音の重ね方やアレンジの妙なのか、何が理由なんでしょうね?

八木沼:う~ん、どうなんだろう? そういうことを自分でちゃんと考えたことがなくて(笑)。90年代のJ-POPって相当作り込まれていて、よくできていた印象が強いですよね。あの当時って、世のクリエイター、アレンジャーの皆さんの中でDTM(デスクトップミュージック)がひとつ社会的地位を得て、音楽を作ることを楽しんでいた時代だったと思うんです。で、今はソフトもハードももっと便利になって、アマチュアでも簡単に音楽制作ができるようになった。でも、この手のジャンルの音楽は模倣するのは簡単なんですけど、微妙な味付けで聴いた印象が変わるというか、実はアレンジするのが難しいんですよね。

 なので、fripSideとしてこの手のサウンドをどこまで現代風に突き詰めていけるのか、その先の未来に何が待っているのかとか、2019年という現代の音楽シーンの世相を捉えつつ、「デジタルミュージックだけどコードとメロディがしっかりした歌モノ」という部分は踏み外さないように意識して作っているところではあります。ただ、そこもだいぶ歌に助けられていると思っていて。

南條:いやいやいや(笑)。

ーーと同時に、この10年の歴史というのは南條さんの歌い手としての歴史でもあるわけですよね。特にデビュー曲である「only my railgun」を聴いてから最近の楽曲に触れると、南條さんの声が太くなっていたり歌い方の個性も強くなっていたりと、作品を重ねるごとに進化を感じますし。

南條:今「only my railgun」や初期の頃の曲を聴くと、声が超ピュアで繊細なんですよね。特に初期の頃は「fripSideのボーカルだから」とか「fripSideだから」ということを考えていて、「もっと強くなりたい、強く歌いたい」という思いから毎回いろいろ試しながら頑張っていたんですけど、最近は昔も今も、どっちもいいとしか言えなくて。今の歌い方も自分は嫌いじゃないし、ただ昔の歌い方はもう絶対に真似できないし、あの声を出そうと思っても出ない。どっちも正解なんですよね。

■南條さんの歌は僕の予測をいつも上回る(八木沼)

ーーそういう南條さんの歌い手としての成長は、八木沼さんの作る楽曲やメロディにも反映されているんでしょうか?

八木沼:引っ張られるものはありますね。南ちゃんの声や歌い方に曲を寄せないとてんでバラバラになってしまいますし、「きっとこういうふうに歌ってくれるだろう」という予測のもと曲を作りますから。これが新人の歌手だったら、クリエイター側がどうしたらベストな歌を引き出すことができるかを常に考えなくてはいけない。だけど、南條さんの歌は僕の予測をいつも上回るし、「じゃあここの部分は歌に助けてもらおう」と頼ることもできるので、だいぶ楽をさせてもらっている印象がありますね。

南條:いやいやいや(笑)。って、本日三度目の「いやいやいや」ですよ(笑)。

ーー(笑)。その積み重ねの10年だったと。

八木沼:そうですね。たぶん僕の「こうしてほしい、こう歌ってほしい、このラインを突破してほしい」という考えを、わかっていらっしゃるんじゃないかなという気がします。

南條:一時期、歌い方に関して「どのラインまでが、どの範囲までがfripSideなんだろう」ということを試しながらレコーディングしていた時期があったんですよ。「future gazer」(2010年10月発売の3rdシングル曲)よりもうちょっとあとぐらいかな。例えば、ほかの現場で違う表現を見つけてきて、それをfripSideに取り入れてみようと実践するんです。例えばAメロを歌っていたとして、Aメロの最後だけいつもと違う表現を含ませて歌うと、sat(八木沼)さんはどこがダメとは言わずに「Aメロをもう一回」と指示するんですね(笑)。

八木沼:ふふふ(笑)。

南條:で、歌い方を戻すと「OK、いいよ!」みたいな(笑)。「なるほど、これはfripSideじゃないんだな」みたいな、そういうことの積み重ねでfripSideらしさみたいなものが自分の中に蓄積されていきました。

 あとは、ライブの存在もすごく大きいなと思っていて。レコーディングではすごく繊細に、「fripSideらしさ」というものをいい音で録れるし、音に集中して声を録っていくイメージなんですけど、ライブはやっぱりお客さんと一緒に盛り上がる場だし、レコーディングで歌ったものよりもさらに強い声を出したりする。そこから、ライブで身に付いたものが徐々に次のレコーディングにフィードバックされて、「今までの歌い方とは違ってライブ寄りだけど、これはありなんだ」という可能性がどんどん広がってきての今、という感じがしますね。

ーーそういう経験の積み重ねが、fripSideらしさの共通認識を強めていったところもあるんでしょうか。

南條:共通認識やイメージのすり合わせはしてないですけど、積み重ねによる部分は大きいと思います。それと同時に、イメージも最初にあったものからどんどん更新されている。目標のイメージに近づくと、次に作るときはさらに更新されているみたいなことが、ずっと繰り返されていて。

八木沼:常にアップデートしているよね。もう100曲近くいったかな、俺と南ちゃんの曲って。相当たくさん作ってきたけど、今回のアルバム作りにおいてもアップデートしながらやっている感じはありましたね。

昔は「fripSideはこういうものだ」という縛りが強すぎた(八木沼)
ーー歌詞についても聞かせてください。前回のインタビュー(※参照:fripSide 八木沼悟志が語る、アレンジに対するこだわり「メロディメーカーでいることが第一」)でも八木沼さんは歌詞について語られていましたが、この10年で歌詞の部分でも成長が見られるのかなと思っていて。

八木沼:僕も南ちゃんもそうなんですけど、歌詞の面が一番進歩したんじゃないかと思います。何を持ってして進歩とするのかは難しいですけど、いろんな表現が変幻自在、緩急自在にできるようになった印象もあるし。昔はもうちょっと意固地になって、「fripSideの歌詞はこういうものだ」という縛りが僕の中で強すぎたんですけど、今はもっと自由でいいし、場合によってはひとりよがりでも全然面白いし、そのfひろがんじゃないかなと思います。

ーーそもそも、八木沼さんの作詞家としてのルーツってどこにあるんでしょう?

八木沼:幼い頃から文章を書くのが好きで。かつ、ピアノを習う際にうちの母親が「譜面どおりに弾くだけじゃなく、あなた曲を考えなさい。それに言葉を付けてみなさい」と言うような家だったんですね。なので、小学生の頃から作詞や作曲は遊びのような感覚でやっていました。でも、こういう小難しい文章を書くようになったのは、中学生ぐらいだったかな。オリジナルソングをプロになるまでにたくさん作って、自分なりに「これはいい、これは悪い」と線を引くことで自分のスタイルが出来上がったけど、プロになってからしばらく「自分のスタイルはこれだ」と固執しすぎたのがダメだったのかな(笑)。

ーー例えば、アニメのタイアップではテーマが用意され、そこに寄り添って歌詞を完成させるわけですが、思いのままに表現していく手法とはまた異なりますよね。

八木沼:そうですね。アニソンタイアップで歌詞を書くとき……そうだ。実は僕、一度もアニメの制作サイドからダメ出しとか「直してほしい」と言われたことがないんですよ。

ーーそれ、すごいですね!

八木沼:それだけが自慢で(笑)。なので、事前に相当ストーリーを読み込みます。やっぱり、アニメのファンが曲を聴いたときにがっかりされたくないので、全部を調べ上げて、時間をかけて読み込んで、そのあとに書くんです。その原作のファン、例えばアニメにいろんな登場人物がいたとすると、曲を聴いた主人公のファンをがっかりさせたくないし、この脇役のファンもがっかりさせたくない。さらに、原作の先生が聴いてもがっかりしないようにとか、ありとあらゆることを考えて、かつアニメに興味はないけどfripSideの音楽には興味がある人たちもがっかりしない、いろんなバランスをうまく取りながら、限定しないんだけど作品という括りでは限定されているという歌詞を、いつも心がけて書いているつもりです。非常に難しい作業ですけどね。

■共有できる音楽が増えたからこそ表現方法も増えた(南條)

ーーそれってものすごい労力ですね。で、そういう八木沼さんが書いた歌詞を、この10年で一番歌ってきたのが南條さん。八木沼さんの歌詞に変化を感じた瞬間はありましたか?

南條:ありました。それこそsatさんが「fripSideの歌詞はこういうものだという縛りが」って話をされていましたけど、以前はfripSideの歌詞で使われる単語にはもっと限定的で、もっと無機質なものが多かったんですよ。有機的なものや日常感があるものは極力使わず。

八木沼:うん、排除していたね。

南條:それが、如実に変わったと感じたのが『infinite synthesis 4』(2018年発売)の頃。そのちょっと前ぐらいから兆しはあって、「ああ、こういう単語も使うんだ」と思うことが徐々に増えていったんです。以前は漠然としていた歌詞がもっと限定的になっていたり、もっと親密性があるとか身近に感じられる歌詞が徐々に増えてきて。

 ただ、タイアップ曲で使っている言葉は作品によっても変わっているとは思うんですけど、作り方自体は昔から変わってなくて。最初に聴くとわからなかった歌詞の意味が、アニメを全部観てから読み返すと「なるほど~」みたいにあらすじを知れるんです。でも、ただ歌詞だけを読んでもストーリーの展開やオチまではわからないから、ネタバレにはならない。作品を全部観てからだと「ここは誰のこと、ここではこのことを歌っていたんだ」とか「これは第何話のことだったんだ」とか、非常に練られているのは昔から変わらない部分だと思います。

八木沼:歌詞に関しては、南條さんと一緒にやってきて、彼女の歌詞に引っ張られた部分もあるんですよ。「あ、こういう表現もあるんだ」とか「これは心が通っている文章だな」とかいろいろ気づかされることも多かったし。なので、個人的には「whitebird」(2012年12月発売のアルバム『Decade』収録曲)というバラードの歌詞を書いたときに、「あ、俺こういう歌詞も書けるんだ。やったな」って思いましたね。今回のアルバムに収録された「Love with You」もアニソンタイアップ(テレビアニメ『寄宿学校のジュリエット』オープニングテーマ)でしたけど、10年前ならこの歌詞をアニメに充てられなかったと思うんですよ。

南條:それは歌っていても感じました。そもそも、私が加入した時点でfripSideというユニットはすでに長く続いていたわけだし、そこにお客さんもたくさん付いていたので、守らなくちゃいけない形というのが絶対にあったと思うし、そうあって当然だったと思うんです。それが、私が加入して第2期が始まり、新しい楽曲も増えて、お客さんも入れ替わりがあったり増えたりして、今いる人たちで共有できる音楽が増えたからこそ表現方法も増えた。大勢のみんなで作り上げていったからこそ、この広がりができたのかなと思います。

『infinite synthesis 4』と新作は表裏一体(八木沼)
ーーここからはニューアルバム『infinite synthesis 5』について話を聞いていきたいと思います。『infinite synthesis』シリーズは八木沼さんの中でそのときに旬なものや夢中になっているものが反映されているそうですが、今回そういったものは?

八木沼:季節感というのを大切にしていて。fripSideは秋口から冬にかけてアルバムを出すことが多いんですけど、今回はタイアップ曲に明るめのものがあったので、春にスポットライトを当てた曲もあれば、やっぱり冬でちょっと暗いねっていう曲もあるという(笑)。

ーー「rain of blossoms」なんて、まさに春の曲ですものね。

八木沼:桜の曲ですね。これは鍵盤で遊んでいたら、「このペンタトニックスケールにこのコード、いいじゃん。気持ちいい」ということですぐに録って。そこから、この曲に関しては齋藤真也さんにアレンジしてもらったほうがいいものになるという予感があったので、彼にお願いして完成に至りました。

南條:若干、和っぽいですよね。前にどこで聞いたか忘れちゃったんですけど、『infinite synthesis』シリーズってその前に出たアルバムと対になっているという話をsatさんがしていて。

八木沼:うん、してたね。

南條:だとすると、今回は『infinite synthesis 4』と対になっているってことだと思うんです。『infinite synthesis 4』って王道のfripSide的強さみたいなものがめちゃくちゃ詰まっていて、ライブ映えしそうな曲ばかりですけど、今回の『infinite synthesis 5』はしっとりめの曲が多いじゃないですか。『infinite synthesis 4』がリード曲だらけだとしたら、『infinite synthesis 5』はわりとカップリング曲揃いというイメージ。

八木沼:そこに気がつきましたか(笑)。僕らのユニット名って、レコードのB面を指す言葉なんですよね。本当のスペルは「r(fripSide)」じゃなくて「l(flip side)」なんですけど。なので、『infinite synthesis 4』と『infinite synthesis 5』って実は表裏一体のイメージなんです。

南條:だから『infinite synthesis 4』的な強さを求めて新作を聴いたら、もしかしたら最初に「えっ?」って思うかもしれないけど、カップリング曲って噛めば噛むほど味が出るようなものが多いじゃないですか。そういう楽曲が今回は特に多くて、大人風味という印象を受けたんです。fripSideをやっている身からすると、これもすごくfripSideらしいなと思うので、ファンの方たちにどう楽しんでもらえるのか、手元に届いてからが楽しみですね。

八木沼:たぶん『infinite synthesis 4』のほうがキャッチーだとは思うんです。でも、『infinite synthesis 5』はもっと奥行きがある感じがする。

南條:だから2枚合わせて聴いてほしいし、『infinite synthesis 4』をもう一度隣に置いてほしいですね。

ーー特に『infinite synthesis 5』は、じっくり聴き込んで浸りたくなる作品ですよね。

南條:そうなんです。移動中とかにじっくり聴きたいなって。『infinite synthesis 4』は盛り上がれるので、一回聴き終えたら一回休憩みたいな感じだったんですよ。だけど、『infinite synthesis 5』は繰り返して聴けるアルバムになっていると思います。きっとこれも『infinite synthesis 3』(2016年発売)までだったらできない構成ですよね。

10年経って思うのは「時間は有限なんだ」(南條)
ーーアルバムリリース直後の11月4日からは、神戸を皮切りに全国ツアーもスタート。しかも、初日は『only my railgun』リリース日です。

南條:そこに合わせてきてますね(笑)。

八木沼:10周年ですからね。神戸からか。確か「only my railgun」って、第15回アニメーション神戸賞で賞をもらったよね。

南條:ありましたね! それもあって神戸にしたのかな。

八木沼:俺、そのときのトロフィーを持っていきますよ?

南條:えっ、重くないですか?(笑)。でも、絶対にみんな喜びますよね。

ーーそして、ツアーファイナルが2020年4月5日、横浜アリーナにて。

八木沼:横アリも、まさか2回もワンマンで立てるとは思わなかったな。

ーー最初の横アリワンマンが2015年3月なので、5年も前になるんですね。

南條:そんなに経つんだ。

八木沼:すごく楽しみだよね。

ーー節目のタイミングでもありますし、セットリストがどうなるのかも気になるところです。

八木沼:ひとつ言えるのは、ニューアルバムのツアーなので、アルバムをじっくり聴き込んでから来てほしいなと。

ーー楽しみにしています。ちょっと気が早い話ですが、今年10周年を迎えた第2期fripSideがこの先どこを目指していくのかが気になっていまして。

八木沼:まだ僕らにとっても未知数ではありますね。僕も何歳までクリエイティブができるかわからないので。今年44歳になりましたけど、さすがに50代後半になったら今のペースで曲を作れないと思うんですよ。とすると、残された時間というのはあと10年ぐらいなんじゃないかな。本当はそろそろ、若い後陣に席を譲り渡さないとダメなんですよね。もはや老害ですよ(笑)。

南條:老害って(笑)。気持ちはずっと新人のまま、「『only my railgun』聴いてください!」の頃のままなんですけど(笑)。

八木沼:だけど、自然とそういうタイミングも来るかもしれないし。

南條:第2期が始まったとき、私は25歳だったんですけど、声優業に関しても「あれをやってみたい」とかいろいろあったし、ソロで歌ってみたいという気持ちもあったし、fripSideとしても今後どういうことがあるんだろうと、未来に向けてのビジョンがただただ拓けていて更地みたいな感じだったのが、10年経って35歳になり……特にこの数年は災害とかも多かったじゃないですか。それですごく思うのが、時間は有限なんだなってこと。ライブも一回一回、リリースするのも一回一回、自分が思っていた以上に大きなことだし大事なことだし、ありがたいことだよなと、歳がいけばいくほど実感するようになって。

八木沼:10年前に始めた頃って、南ちゃんが25歳で僕が34歳だったのかな。僕自身、一番体力があってクリエイターとしての脂が乗っている時期だったし、彼女も25歳という歌手として花開くような時期に、こうやって一緒にできたということにすごく感謝しているんですよ。で、あれだけのお客さんがいるんだから、この先もまだfripSideを応援したいという声がある限りは頑張ろうと思っています。(西廣智一)

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