平田オリザの真骨頂、『ソウル市民』2部作が開幕
18/10/15(月) 0:00
青年団『ソウル市民』 撮影:青木司
現代口語演劇のトップを走り続ける平田オリザの代表作である『ソウル市民』シリーズ。平田率いる青年団が、その2作『ソウル市民』『ソウル市民1919』をこまばアゴラ劇場にて上演する。
『ソウル市民』(1989年初演)は1909年の韓国が舞台。翌年に日韓併合を迎えることとなるソウルで文房具店を営む篠崎家の、なんということもない日常。
最近、“悪意がないことのタチの悪さ”が取り沙汰されることが増えたように思う。しかしおそらくそれはSNSなどの浸透によって顕在化されただけで、昔からあったのだろう。『ソウル市民』で描かれるのは“悪意なき市民たちの罪”だ。
同時に上演される『ソウル市民1919』(2000年初演)はシリーズ第2弾。1919年、やはり篠崎家は10年前と変わることのない日常を過ごしているはずが、少しずつ彼らにも変化が訪れる……。ここで平田が描くのは、支配者である日本人の“滑稽な孤独”。
歴史の大きな動きの陰には、つねに市民が送る日常がある。人々はまるで永遠のように一日一日を過ごす。しかし、決して同じ日など存在しないし、人々の考えや行動もまた、自分たちでは気づかないうちに影響され、変化していく。
どちらか一方を見ても、もちろん受け取るものはたくさんあるだろう。しかしできることならば、2作を見ることで10年という時間に想いを馳せ、自分たちの置かれた場所をよりくっきりと見ることができるかもしれない。
『ソウル市民』が10月14日(日)、『ソウル市民1919』が10月15日(月)に幕を開け、公演はこまばアゴラ劇場にて11月11日(日)まで続く。
文: 釣木文恵
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