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平辻哲也 発信する!映画館 ~シネコン・SNSの時代に~

35日間まるごと「若尾文子映画祭」 角川シネマ有楽町

隔週連載

第30回

20/2/16(日)

大手家電量販店・ビックカメラが入居する読売会館8階にある「角川シネマ有楽町」は1スクリーンのミニシアターだ。KADOKAWAが製作・配給する作品を中心にロードショー作品のほか、同社の保有するライブラリー作品の特集上映も積極的に行っている。2月28日から4月2日までの35日間は「若尾文子映画祭」と題した特集上映を組み、若尾の出演作41本を一挙に上映する。

有楽町駅前の読売会館8階とアクセス至便。全席指定・各回入替制。237席の劇場は傾斜があって、どこからも見やすい造り。案内板にはオススメの座席も表示されている。12月1日の映画の日(1100円)、12月を除く毎月1日の映画サービスデー(1200円)はもちろん、水曜サービスデー(1200円)、日曜最終回のサンデーナイト割引(1200円)のほか、TCGメンバーズカード会員割引(土・日・月・金曜=1300円、火・木曜=1100円)といった各種割引サービスも充実している。

傾斜のある劇場

1957年竣工の読売会館は、かつては「有楽町で逢いましょう」のキャッチフレーズでおなじみの百貨店「有楽町そごう」が入居していたビル。設計は、昭和を代表する建築家、村野藤吾氏。長い歴史の中、その外観も中身も様変わりしているが、映画館にも紆余曲折があった。

当初は日本テレビのスタジオ、アーカイブの上映スペースを経て、2004年に「シネカノン有楽町一丁目」として開館。しかし、運営会社のシネカノンが倒産したことから、2010年に閉館。2011年2月に角川書店系列の角川シネプレックス株式会社が「角川シネマ有楽町」としてリニューアルさせた。13年には全国シネコンを展開するユナイテッド・シネマ株式会社が角川シネプレックスを合併。現在はユナイテッド・シネマが運営に当たり、主にKADOKAWA作品を上映。昨年はシム・ウンギョン、松坂桃李主演の『新聞記者』(藤井道人監督)が大ヒットした。

ロビー内

「若尾文子映画祭」は昭和を代表する名女優・若尾の出演作を一挙に41本上映するというもので、5年ぶりの開催。KADOKAWAが保有する大映や角川映画の豊富なライブラリーを次世代に伝えようと立ち上げた新ブランド「角川シネマコレクション」の一つで、「京マチ子映画祭」(昨年)、没後50年特別企画「市川雷蔵祭」(全国で順次上映中)に続くものになる。

若尾文子映画祭の等身大POP

若尾は1933年11月8日生まれ、現在86歳。1949年、疎開先の仙台で長谷川一夫と出会い、翌年女優を目指して上京。51年、大映第5期ニューフェイスに合格し、52年に『死の街を脱れて』でデビュー。雑誌の人気投票やブロマイドの売り上げ1位を記録するなどトップ女優に。溝口健二、小津安二郎、市川崑、川島雄三、吉村公三郎、増村保造ら巨匠監督とのタッグで多数の名作を送り出し、約160本に出演。『女は二度生まれる』『妻は告白する』では61年のキネマ旬報、NHK映画賞、ブルーリボン賞、日本映画記者賞、ホワイト・ブロンズ賞の主演女優賞5冠を達成。近年はソフトバンクのCMに白戸次郎(犬のお父さん)の母親役で出演し、話題になった。

DVDボックスも発売

今回の上映では、悪女を熱演した代表作『刺青(いれずみ)』(1966年、増村保造監督)4K復元版が初披露されるほか、『赤線地帯』(1956年、溝口健二監督)、『女は二度生まれる』(1961年、川島雄三監督)、『浮草』(1959年、小津安二郎監督)を4K復元版で上映。ほかにも、サラリーマンの恋愛と生活を軽妙に描く『明日は日曜日』(1952年、佐伯幸三監督)、甘い新婚生活を描くラブコメ『新婚七つの楽しみ』(1958年、枝川弘監督)などDVD、Blu-ray化されていない作品もラインナップ。すべてデジタル上映となる。

原田路也支配人

支配人を務めるのは原田路也さん。石川県金沢出身、ユナイテッド・シネマ金沢でのアルバイトをきっかけにユナイテッド・シネマに入社し、映画館勤務約20年。愛知、埼玉の系列シネコン、横浜のDMM VR THEATERなどを経て、1年半前から同館の支配人を任された。

「『刺青』4K復元版はマスコミ試写でも、とても評判がよかったと聞いています。劇場のスクリーンでご覧いただくというのは得がたい経験だと思います。前売り券も反響がよく、熱量のある方がご覧になるのだろうと感じています」と原田さん。期間中はゲストの登壇や特別企画なども予定されており、ホームページなどで告知予定。角川シネマ有楽町での上映後は、4/18(土)~大阪(シネヌーヴォ)のほか、広島(八丁座)、石川(シネモンド)、大分(シネマ5)、福井(メトロ劇場)などを巡る予定だ。

シネコンでの経験が長いという原田支配人だが、ミニシアターの面白さはどんなところにあるのか。「観終わった後に、お客様から『良かったよ』とか、『すごく泣けたよ』とお客様の感想を直接伺うことができることですね。それがやりがいになっています。本当にいろいろな作品ありますけれども、お客様にその気持ちよく鑑賞いただける空間をしっかりお届けするのが一番の責務だと思っています」と話す。みなさんも、ぜひ支配人に映画の感想をお話ください!

映画館データ

角川シネマ有楽町

住所:東京都千代田区有楽町1-11-1 読売会館8階
電話番号:03(6268)0015
公式サイト: 角川シネマ有楽町

プロフィール

平辻哲也(ひらつじ・てつや)

1968年、東京生まれ、千葉育ち。映画ジャーナリスト。法政大学卒業後、報知新聞社に入社。映画記者として活躍、10年以上芸能デスクをつとめ、2015年に退社。以降はフリーで活動。趣味はサッカー観戦と自転車。

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