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DPR LIVE、Sik-K、Swings……“年間ベスト級”の韓国ヒップホップ新作アルバム5選

リアルサウンド

20/3/29(日) 10:00

・DPR LIVE『IS ANYBODY OUT THERE?』
・Sik-K『Officially OG』
・Swings『Upgrade IV』
・BLNK『FLAME』
・Don Malik『仙人掌花: MALIK THE CACTUS FLOWER』

 世界中で外出を控えるべきだという今の時期。だが、フレッシュな音楽は次々と登場しており、私たちの不安や寂しさを紛らせてくれる。韓国ヒップホップシーンでは3月だけでも年間ベストと言えるアルバム単位のリリースが相次いだ。今回のキュレーション記事では、3月にリリースされて話題になっているアルバムの中から特に要注目の5作をセレクトしてみた。

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■DPR LIVE『IS ANYBODY OUT THERE?』

 DPR LIVEの韓国ヒップホップシーンにおけるポジションは実にユニークだ。彼はメインストリームとは一見距離を置くような独自的な活動を広げているようにも思えるが、Jay ParkやLoco、DEANやCrushなどが参加したデビューEP『Coming To You Live』(2017年)をはじめ、多数のアーティストとフィーチャリングを重ね、音楽シーンで高い支持を得ている。また、DPRクルー内で作り上げるDPR LIVEの音楽はオリジナリティに溢れる音楽性を持っているが、大衆的なテイストも欠けてはいない。デビュー3年にしてついにリリースされた1stフルアルバム『IS ANYBODY OUT THERE?』は、そのような長所をさらに感じられる作品に仕上がっている。これまでも賞賛を浴びて来た、洗練されたサウンドスケープに優れたラップパフォーマンス、また見事なビジュアルアートが一つの作品で完璧に合わさっている。「Kiss Me + Neon」のMVにもある“宇宙”というテーマは、DPR LIVEが墜落していく姿の描写から人生を振り返るナラティブのための仮想のスペースとして活用される。さらに、ファンクからフューチャーバウンス、シンセポップまで自在に表現するDPR CREAMとDPR IANのプロダクションは、SF的なアルバムのテーマを聴覚で明確に感じさせている。それに、DPR LIVEが空虚な宇宙で孤独に陥いて、「誰かいませんか」と叫ぶ箇所もとても印象的だ。抜群のプロダクションとパフォーマンスを楽しめる全11トラックのアルバムは、2020年代韓国ヒップホップを語る際にも欠かせない作品になっていくだろう。

■Sik-K『Officially OG』

 最近ではm-flo、JP THE WAVYなど日本人アーティストとのコラボを次々と披露し注目を集めているSik-Kが、K-HIPHOPの先輩ラッパーたちへのリスペクトを込めたEP『Officially OG』をリリースした。タイトルから分かるように、Sik-Kは自身が認めるOG(オリジナルギャングスター)ラッパーだけを迎え、彼らへの尊敬を余すことなく表現する。1番目のトラック「VJ IS CLASSIC」はVerbal Jintの業績をほめたたえる内容に溢れており、2番目のトラック「NO HOOK」にはそれぞれ<ILLIONAIRE RECORDS>と<Hi-Lite Records>のCEOであるThe QuiettとPaloaltoを迎えて、韓国ヒップホップシーンを支えてきた2人の存在感をアピールする。それ以外にも「30MIN」には元<AOMG>のCEOであるSimon Dominicが参加し、「DO MAIN 2020」には、今やビッグネームとなったラッパーが多数所属していたクルーDo’MainのメンバーZICO、Lil Boi、Ugly Duck、TakeOneが久しぶりに一つの楽曲で名を連ねた。また、Sik-Kと<H1GHR MUSIC>のレーベルメイトであるWoodie Gochild、pH-1、HAON、Jay Parkが参加した「WATER」もボーナストラックで収録されている。全トラックにおいてプロデュースを手がけるのはSimon Dominicの『No Open Flames』を手掛けたプロデューサー・GooseBumpsだ。Sik-Kが認めるOGの一人としてプロデューサーGooseBumpsと自身も含められているのだろう。

■Swings『Upgrade IV』

 Swingsがキャリアの節目にリリースしてきた『Upgrade』シリーズの第5弾となる『Upgrade IV』がリリースされた。2008年の『Upgrade』から、2011年の『Upgrade II』、2018年の『Upgrade III』と続いていた同シリーズだが、2018年12月にリリースされた外伝的な『UPGRADE 0』ではオートチュンを掛けたシングラップなど、新たなスタイルを披露していた。そんな彼には、大きな変化があった。今年1月に、自ら立ち上げた<Just Music>、<Indigo Music>、<WEDAPLUGG RECORDS>の3つのレーベルの代表職を辞任したのだ。多くの後輩ラッパーを発掘して成功させる一方、フィットネスセンターやカフェなどビジネスも順調に続けていたSwingsだが、アーティストとしては音楽内外のトラブルを経験しつつ、音楽に興味を失ったと告白したことがある。そんな彼が社長職から離れて新たな一歩としてリリースしたのが今回の『Upgrade IV』だ。彼が悩んだ結果出した音楽性の回答が込められているとも取れる本作では、トレンドを反映した前作『Upgrade 0』とは真逆で昔のSwingsスタイルに回帰している。プライドに満ちたアティチュード、優れたパンチラインを含めて昔のSwingsを感じさせるトラック「Camera Freestyle」がその代表例だ。また彼は、本作で最初にプロデューサーとして自ら全トラックを手掛けるチャレンジを成し遂げており、重い荷を下ろして戻ってきたアーティストSwingsのさらなるアップグレードを見届けよう。

■BLNK『FLAME』

 2013年の登場以降、着実に作品リリースを重ねてきたクルー・legit goonsは5年間で韓国ヒップホップシーンで自身だけの領域を黙々と開拓してきた。余裕溢れるムードとハングリー精神の格好良さを感じさせるラッパーたちの個性的なキャラクター、自主制作されるプロダクションからビデオ、グッズなどの高いクオリティが全般的にクルーのカラーを明確にしてきた。実際にlegit goonsは、韓国ヒップホップアワーズで「今年のヒップホップアルバム」に選ばれた『Junk Drunk Love』を含めて4年間で3枚のコンピレーションアルバムをリリースし、クルーとしての活動を活発に広げてきた。また、メンバーのBassagongは韓国大衆音楽賞を受賞し、Code Kunstは<AOMG>と契約して、新メンバーのJaeDalは3枚のEPをリリースするなどそれぞれもキャリアを展開させたが、2012年にクルーを立ち上げた張本人のBLNKは5年間アルバムリリースが全くなかった。いよいよリリースされたBLNKの2ndアルバム『FLAME』のプロダクションはジャズ、ブルース、ファンクをも合わせたローファイなテクスチャーで、legit goonsのムードをつなげるような愉快で余裕溢れるバイブスを与える。それに、BLNKはユニークなボイストーンを生かして自在にラップスキルを披露する。アルバムの前半ではBLNKが抱える悩みと人生の屈曲と問題を率直に告白し、後半には問題を克服する方法を試していく様が描かれる。BLNKが今の率直な姿を描いた素晴らしい2ndアルバムだ。

■Don Malik『仙人掌花: MALIK THE CACTUS FLOWER』

 Don Malikはブームバップをルーツとする若いラッパーである。彼は2014年にミックステープ『Hashtag[#]』でシーンに登場した。また、2015年に韓国ブームバップの代表格でもあるベテランプロデューサー・Mild BeatsとのコラボEP『탯줄(へその緒)』をリリースし、2016年に新鋭プロデューサー・KimaとのコラボEP『Tribeast』をリリースした。メインストリームの流行には全く捉われない彼の音楽色は確かなものだった。2019年にJUSTHISとIllinitのクルー・DOPPELGÄNGEMに合流して活動を再開した彼は、今年念願の1stフルアルバム『仙人掌花: MALIK THE CACTUS FLOWER』リリースした。アルバムにはリスナーが彼に期待する鈍いブームバップのビートにスキルフルなラップ、高いレベルのリリシズムがふんだんに取り入れられている。また、韓国アンダーグラウンドヒップホップの初期をリードしたGARIONのプロデューサーだったJ-Uがプロデューサーとして参加したことも注目を集めた。J-Uは相変わらず最高のサンプリングセンスでジャジーなバイブスのトラックを提供している。加えて、このアルバムには90年代のゴールデンエイジヒップホップや韓国の2000年前後のアンダーグラウンドヒップホップへのオマージュが込められているのも興味深い。Souls Of Mischiefの「93 ‘Til Infinity」を想起させる「伝染 (Til Infinity)」がその代表と言えるだろう。90年代生まれのラッパーが表現する90年代のヒップホップをぜひチェックしてみてほしい。(limasul)

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