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第42回ぴあフィルムフェスティバル特集

映画祭の役割とは何か? PFF荒木啓子ディレクターが語る

全3回

第2回

20/9/2(水)

PFFアワード2020の入選作品

今年はコロナ渦で多くの映画祭が中止を決定したり、オンラインのみでの開催を発表しているが、PFFは国立映画アーカイブで開催するべく準備を進めている。

一部のプログラムではオンラインでの配信も予定しているが、映画祭の基本は同じ場所に様々な人が集まり、同じスクリーンに向き合い、そこで語り合うことにあるのではないだろうか。

映画祭をオンラインのみにする考えは「まったくなかったです!」と笑顔を見せる荒木啓子ディレクターに映画祭の魅力、PFFならではのこだわりや想いをきいた。

今年は前売券のみ! チケット発売中

第42回ぴあフィルムフェスティバル
9月12日(土)~26日(土)[月曜休館]
会場:国立映画アーカイブ(東京都中央区京橋3-7-6)
チケット購入はこちら
0570-02-9999 (Pコード:551-184)
 ※各回とも上映前日の23時59分まで発売
 ※発券手数料、システム手数料は、一切掛かりません。
 ※チケットの払い戻し、交換、再発行はいたしません。
 ※チケットは会場では発券できません。必ず発券して会場までお越しください。

審査とは“選ぶ”ことではなく“発見”すること

昨年の模様。今年も国立映画アーカイブが会場になる。

1977年に「第1回ぴあ展〈映像部門〉」の名前でスタートした本映画祭は、長年に渡って自主映画を公募し、映画祭のメインプログラム“PFFアワード”から多くの商業映画監督が誕生している。その審査方法も独特で、1作品につき3人のセレクションメンバーが作品を止めることなく鑑賞して一次審査を実施。その後の二次審査では審査員全員で合議を行う徹底ぶりで、応募する側もセレクションする側も長い時間と熱意を注いで入選作品が決定する。

「コロナで最初の審査会議(一次審査)を集まってできないねって話になった時はツラかったですね。でも、入選作品を決める審査(二次審査)は何があっても会って話さないとダメだと思ったので、審査会場をひろい場所にして2メートルずつ離れ、マイクとスピーカーを配置して、それだけで思わぬ予算がかかっちゃって(笑)。

というのも、PFFの審査は点数をつけて良いものをあげていくようなものではなくて、自分の発見できないことを別のメンバーが発見して話し合うことの繰り返しで、それはやっぱり直で会って話せないとできないんですよ」

PFFアワードには応募作品の長さやジャンル、応募者の年齢などの制限が一切ない。さらに入選作品数の上限や決まりもない。すべてが応募作品を何度も観て、話し合う中で決まるという。

「ここにある入選作は私のセレクションをみてください! というものではなく、16人のセレクションメンバーが徹底的に観て話し合った結果、“何かがある”と説得されたものが残っているんです。ですから、仮に私が“まったく理解できない”と思ったとしても、その作品について熱く語る人がいて、ああ、なんということだ、発見できなかった! とたじろぐ……その繰り返しなんですよ。多数決での決定もなく、だから、入選ボーダーにある作品のことは忘れません。ラインアップ決定は本当に難しいですよね。」

PFFアワード最大の魅力は“よくわからないけど、何かがある”こと

昨年のPFFアワード表彰式の模様

荒木ディレクターが語る通り、今年上映される17作品もジャンルや上映時間、扱う題材はバラバラだ。しかし、時間と手間をかけて選ばれた17作品は、一般の映画館で上映されている作品にはないテイストや作り手の熱が感じられる。

「PFFはどのような作品を求めていますというお題は何もないですし、時間をふくめ規制は何もないわけですから、本当に純粋に何かをぶつけてくる人が勝つ映画祭だと思います。一番大切なのは“よくわからないけど、何かがある”ってこと(笑)。それを誰かが発見して、かたちあるものにしていく。それがPFFなんだと思います」

だからこそ、PFFは今年も東京・京橋の国立映画アーカイブで実際に観客が集まって、同じスクリーンで作品に向き合うことにこだわった。単に映画を集めてオンラインで鑑賞することはできる。人気作品を集めて上映することもできる。でもそれを“映画祭”と呼んでいいのだろうか?

「同じものを同じ場所で一緒に観る。それをつくった人と語ることができる。その作品を素晴らしいと思った人がいた時に、作り手と観客がお互いの存在を感じる。つまり“世の中、そんなに捨てたもんじゃない”っていうか、自分は“ひとりじゃない”っていう経験を積み重ねていかないと人間は弱くなっていくので、映画祭は生きる力を与える場所だと思っているんです。それはもしかしたら映画じゃなくてもいいのかもしれないですけど、私たちは映画は最も手間のかかった創作物だと思っているから映画祭をやっているだけで、世の中のイベントをやっている人はすべて同じ気持ちだと思います。

人は自分以外の誰かの存在によって変化していくわけですし、生涯にわたって変化し続けないと創作はできない。映画祭の“何かを動かす”機能はとても大きいので、自分はひとりじゃない、自分はまだまだ小さい存在なんだって思える場所があるのはすごく大事だと思うんです」

映画祭は作り手と観客の“予想外の遭遇”

昨年の模様。会場では観客と監督たちが交流することも。

PFFは今年で42回目。その中で社会や映画制作の環境は大きく変化し、映像制作に関するテクノロジーも大きく進歩した。かつて自主映画は8ミリフィルムで撮影し、手作りで仕上げられることが多かったが、現在、多くの応募作品はデジタル撮影。自身のつくった映像をネットに気軽にアップすることができる時代に、それでも仲間と共に映画をつくり、アワードの入選、スクリーンでの上映を目指す監督たちは何を思って“映画づくり”をしているのだろうか?

「おそらく、Youtubeに投稿している人って“自分が有名になりたい”って気持ちが大きいと思うんです。でも、映画をつくることって有名になるツールではないんですよね。映画の黄金期にはもしかしたら、モテたい、有名になりたいって人が映画制作者の中にはいたのかもしれないですけど、今はそういう人はわざわざ手間のかかる映画づくりはしないと思う。だからいまは昔よりも“ものづくり”に興味がある人が集まってきているんだと思います。

もちろん、稼いでいるYotuberの人ってすごく真面目に働いて、自分の伝えたいことがあって、そのことが続いている人たちなので、それはそれで本当にすごいことだと思うんですけど、映画づくりはそれとは全然違うもの。いま映画をつくる環境がものすごく貧困になってきていて、そのことが映画が痩せていく原因にもなっていると思うので、映画祭がそこで何をできるのか、何を補うことができるかはいつも考えています」

時間や手間がかかっても自分には描きたいものがある。描いたものを知らない誰かに見せたい。その相手と語り合いたい。同じものを素晴らしいと思える人たちに出会いたい。PFFは単に自主映画を連続して上映する、その優劣を決定する以上の可能性や広がりのある催しだ。まだ誰も知らない映画に偶然に遭遇する。自分でも予想していなかった変化が映画によって訪れる。PFFはそんな作り手と観客の“想定外の変化”の場でもあるのだ。

「“自分は自分でしかいられない”って良いことだと思うんです。それをとことんやれたら、何者かになれる。だからそういうものがある人はそれを貫きましょう。それを周囲は応援しましょうってことですよね」

今年は前売券のみ! チケット発売中

第42回ぴあフィルムフェスティバル
9月12日(土)~26日(土)[月曜休館]
会場:国立映画アーカイブ(東京都中央区京橋3-7-6)
チケット購入はこちら
0570-02-9999 (Pコード:551-184)
 ※各回とも上映前日の23時59分まで発売
 ※発券手数料、システム手数料は、一切掛かりません。
 ※チケットの払い戻し、交換、再発行はいたしません。
 ※チケットは会場では発券できません。必ず発券して会場までお越しください。

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