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Crystal Kay、「歌うたいのバラッド」「3月9日」カバーから見えた新鮮な魅力

リアルサウンド

20/9/4(金) 6:00

 Crystal Kayが斉藤和義「歌うたいのバラッド」のカバーを配信リリースした。年内リリース予定のカバーアルバムに向けての先行配信である。Crystal KayはR&Bやバラードを得意としているシンガーで技術力の高さを感じるテクニカルな歌唱をする。ウィスパーボイスも使いこなし繊細に歌を表現することも魅力だ。それに対して斉藤和義は声質の良さや独自の歌唱法が印象的なロックミュージシャン。つまり2人は方向性が全く違うシンガーだ。そのため彼女の音楽性から考えると意外な選曲に感じた。

 しかしこれがなかなかに相性の良いカバーである。原曲はギターと華やかなストリングスの音が印象的な編曲だが、カバーではR&Bテイストのリズムのドラム音が印象的。ギターの音は控えめでストリングスは使われず音数も少ない。しっとりとCrystal Kayが歌うからこそ魅力が伝わる編曲になっている。

Crystal Kay「歌うたいのバラッド」

 サビでは美しく伸びやかな歌声に惹きつけられる。彼女の声質の良さが最も活きる音が詰め込まれていないメロディである。ジャンルが違うアーティストの楽曲ではあるが、本質部分はCrystal Kayが得意としているバラードで相性が良い。おそらく「歌いたい曲」というだけでなく「意外性がありつつも相性の良い曲」という部分も考えた上での選曲だろう。

 3月にはレミオロメン「3月9日」のカバーも配信していた。原曲はバンドサウンドが印象的なロックバラードで、これもCrystal Kayの方向性とは真逆である。しかし聴いてみるとこれも相性が良い。全体的に落ち着いた編曲になっていることで彼女の魅力が引き立つトラックになっている。これも「歌うたいのバラッド」と同様にR&Bを感じるリズムになっており、様々な音を使って洒脱な雰囲気を作り出している。原曲はバンドサウンドだがカバーでは打ち込み。バンドサウンドでなくとも名曲であることを示すような、楽曲の新しい魅力を引き出すトラックになっている。この曲もサビで音を伸ばすメロディが印象的で、これも考え抜いた上での選曲ではないかと思う。

Crystal Kay「3月9日」

 Crystal Kayはオノ・ヨーコやDREAMS COME TRUEなど女性ボーカル曲をカバーすることはあったが、男性アーティストの曲をカバーすることは少ない。それも今回はロックを中心に音楽を作る2組のカバー。R&Bやソウル、ポップスを中心に歌っていた彼女にとって過去になかった新しい挑戦ともいえる。

 また近年のオリジナル曲と比べても違う方向性だ。2019年発表の楽曲「Beautiful」では、音数が多めで華やかな楽曲を歌っている。2018年の「幸せって。」では明るいポップスに挑戦し、「Summer Fever」ではEDMの影響を感じる楽曲に挑戦していた。音数を抑えた落ち着いたバラードは最近では少なく、その部分についても新たな音楽性への転換を考えているのかもしれない。それは正解だったと思うし、配信中の「歌うたいのバラッド」と「3月9日」のカバーから、Crystal Kayの新しい魅力を感じられるのも素晴らしいと思う。楽曲を再構築することで、誰も気づかなかった楽曲の隠れていた魅力を発見することにも成功している。

Crystal Kay – 「幸せって。」- Music Video – NHK ドラマ10『デイジー・ラック』主題歌

 カバーアルバムは年内リリースとアナウンスされているが、まだ発表された楽曲は2曲だけ。どのような作品になるのかは全貌が見えていないが、現在発表された曲で共通しているのは、男性ロックアーティストのバラードヒット曲をカバーしているということであり、それがアルバムへのヒントになり得るかもしれない。他にはどのような曲がカバーされるのかとついつい想像してしまう。

 例えば、若手の注目アーティストのカバーも聴いてみたい。Official髭男dism「Pretender」やKing Gnu「白日」もCrystal Kayと相性が良さそうだし、「3月9日」のように季節をテーマにした楽曲も合うだろう。つい作品への期待と妄想が膨らんでしまうが、とにもかくにもカバーアルバムのリリースが楽しみである。

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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