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『BanG Dream!(バンドリ!)』カバーアルバムの画期性 個性派バンドによる多彩なサウンドを解説

リアルサウンド

18/7/6(金) 18:00

 アニメのキャラクターボイスを担当する声優陣が実際にバンドを組んでリアルライブを行なう斬新なメディアミックス展開が話題になっている、『BanG Dream!』プロジェクト。そのメディアの1つとして、2017年3月の提供開始以来人気を拡大し、今年6月にユーザー数650万人を突破したのが、スマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下、『ガルパ』)だ。そのゲーム内で配信されているカバー楽曲を集めたシリーズ初のカバーアルバム『バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクション Vol.1』が、6月27日にリリースされた。

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 同ゲームではプレイヤーがライブハウス「CiRCLE」の新人スタッフとなり、キャラクターと会話したり、リズムゲームに挑戦しながらイベントを作り上げていく。Poppin’Partyをはじめ、Afterglow、Pastel*Palettes、Roselia、ハロー、ハッピーワールド!の5バンドが登場。5バンドそれぞれに“バンドストーリー”が存在し、ハイクオリティなLive2Dで生き生きと動くキャラクターとともに各バンドのオリジナルストーリーがフルボイスで楽しめる仕様だ。

 そして、このゲームのもうひとつの人気の秘密が、『BanG Dream!』オリジナル楽曲とともにゲーム内で楽しむことができる膨大なカバー楽曲の数々。5バンドそれぞれが様々なジャンルの楽曲をカバーしており、そのすべてを、音楽クリエイターチームのElements Gardenがプロデュースしている。バンドごとの特性に合った選曲、魅力的なアレンジは『BanG Dream!』ファン以外の間でも度々話題になっており、そこから『ガルパ』を始めたユーザーも非常に多い。そのカバー楽曲の中から10曲をCD化したものが、今回の『バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクション Vol.1』だ。

 前述した5バンドから、それぞれ2曲ずつ、計10曲が収録された本アルバムは、まさに『ガルパ』に登場するライブハウス「CiRCLE」での賑やかなライブイベントのよう。また、全楽曲がゲーム内のショートVer.ではなく、フルVer.で収録されており、大半の楽曲は今回のアルバムがフルVer.の初出となる。本記事では、それぞれのバンドの特徴と、収録楽曲について解説する。

■「光るなら」「千本桜」/Poppin’Party

 花咲川女子学園で結成されたバンド・Poppin’Partyのカバー楽曲として収録されたのは、テレビアニメ『四月は君の嘘』のオープニングテーマとして知られるGoose houseの「光るなら」と、黒うさPによるボカロシーン屈指の人気曲「千本桜」の2曲。Poppin’Partyと言えば、真っすぐな歌詞と高揚感たっぷりのバンドサウンドでキラキラとした輝きや、演奏することのときめきを表現した楽曲が多いバンド。しかし、今回収録された「光るなら」は男女混成のボーカルリレーが印象的な原曲に対して、愛美演じる戸山香澄の歌声を中心に据えた、Poppin’Partyらしい疾走感溢れるギターチューンに変換。「光るなら」という曲名も、戸山香澄が「“星の鼓動”のようにドキドキできる何か」を探して結成されたPoppin’Partyの成り立ちとリンクするような雰囲気だ。

 一方の「千本桜」は、和ロックサウンドが印象的な原曲の雰囲気はそのままに、より生バンドに近いライブ感のあるアレンジが施され、様々なアーティストにカバーされている00年代以降屈指のアンセム曲に、魅力的なバンドグルーヴが持ち込まれている。前述の「光るなら」も含めて、ロックもアニソンもボカロも並列にして楽しむ今の時代のガールズバンドらしい雰囲気が表われた選曲だ。

■「アスノヨゾラ哨戒班」「READY STEADY GO」/Afterglow

 幼馴染5人による王道ガールズロックバンド・Afterglowの楽曲はギターリフを中心に進んで行く王道のロックンロールが中心。人気ボカロP・Orangestarが制作し、ボーカロイド・IAが歌う「アスノヨゾラ哨戒班」は、かなり新鮮な選曲だ。「アスノヨゾラ哨戒班」には、公開から1周年記念としてOrangestar自身が発表したしたバンドアレンジ版「キミノヨゾラ哨戒班」も存在しており、Afterglowの「アスノヨゾラ哨戒班」はその雰囲気にかなり近い楽曲で、パンキッシュな要素を加えたAfterglowらしいギターロックになっている。

 一方、テレビアニメ『鋼の錬金術師』の第2期オープニングテーマとしても知られる「READY STEADY GO」はL’Arc~en~Cielの楽曲の中でもパワフルでパンキッシュな魅力を持った楽曲。その雰囲気はAfterglowのもともとの魅力ともリンクしている。ここでは原曲に忠実なアレンジでありながら、ひりひりとした質感のギターサウンドなどを加えることで、エッジの効いたガールズバンド像を持つAfterglowの魅力を活かした楽曲に。ガールズバンドでありながらキュートにはならない雰囲気がいかにもAfterglowらしい。

■「secret base ~君がくれたもの~」「ふわふわ時間」/Pastel*Palettes

 芸能事務所に所属するメンバーによって結成されたアイドルバンド・Pastel*Palettesは、ZONEの「secret base ~君がくれたもの~」と、テレビアニメ『けいおん!』の楽曲「ふわふわ時間」の2曲をカバー。2011年にテレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のエンディングテーマとしてカバーされるなど無数のカバー版が存在する「secret base ~君がくれたもの~」。Pastel*Palettesバージョンでは背後にうっすらと加えられたキラキラしたシンセが印象的で、原曲の切ない音にきらびやかな魅力が加わっている。

 『けいおん!』シリーズの「ふわふわ時間」は、もともと可愛らしい雰囲気の原曲に、さらにキュートさを加えたアレンジが印象的。アルバムに収録されているのはフル尺のためセリフパートももちろん収録。どちらの楽曲も前島亜美演じる丸山彩の声を活かした、キュートさを前面に出した曲に仕上がっている。

■「魂のルフラン」「ETERNAL BLAZE」/Roselia

 ハード/ラウドロックからメタル的な要素まで加えたテクニカルで妖艶なギターロックを得意とするRoseliaは、1997年公開の映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の主題歌で、『REBIRTH』編のエンディングタイトルロールで使われた高橋洋子の「魂のルフラン」をカバー。原曲は神々しさすら感じる雰囲気と当時のクラブミュージックの要素などが融合した楽曲になっていたが、Roselia版ではその雰囲気をギターやシンセの音色などで工夫しつつ、バンドサウンドに変換。サビのドラムビートや歪んだギターなどが激情を煽るアレンジになっている。

 一方、もう1曲のカバー曲、『魔法少女リリカルなのはA’s』のオープニングテーマとしてリリースされた水樹奈々の「ETERNAL BLAZE」。もともとElements Gardenの代表・上松範康が原曲の作編曲を担当していた楽曲とあって、時代を越えて生まれたElements Gardenのセルフアレンジ版と言える面持ちに。

■「いーあるふぁんくらぶ」「ロメオ」/ハロー、ハッピーワールド!

 『ガルパ』に登場するガールズバンドの中でも、着ぐるみDJ・ミッシェルを擁する変則的なバンド編成をしており、オーケストラの要素を加えたハッピーなサウンドを特徴とするハロー、ハッピーワールド!は、みきとPによるGUMI&鏡音リン曲「いーあるふぁんくらぶ」と、HoneyWorksが手掛けた映画『好きになるその瞬間を。~告白実行委員会~』の挿入歌「ロメオ」をカバー。

 「いーあるふぁんくらぶ」は、ハロー、ハッピーワールド!らしいユーモア溢れる賑やかなパーティー感、多幸感が感じられる楽曲になっている。もともと男性ボーカル曲だった「ロメオ」も、原曲のマーチングバンドのようなリズムと壮大なストリングスの音色を生かしつつ、ハロー、ハッピーワールド!らしい楽し気な雰囲気に。他の4バンドにも言えることだが、『BanG Dream!』シリーズのバンドはオリジナル曲でそれぞれはっきりと個性を打ち出しているため、カバー曲にもバンドごとの個性が表われる。

 『バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクション Vol.1』を聴いて改めて感じるのは、『BanG Dream!』シリーズから生まれた5バンドそれぞれの個性や、ポップからロック、ハードロック/ラウドロック、アイドルポップ、ジャズやクラシックに至るまで様々な音楽要素を飲み込んだサウンドの多彩さ。そうした個性溢れるバンドが生まれたことで、『BanG Dream!』の物語自体にも多様性が生まれ、このシリーズがアニメやゲーム、コミック、そしてリアルバンドというメディアミックス展開で表現してきた「バンドの楽しさ」を、より深く、様々な角度から楽しめるような魅力が生まれている。

 ゲームでは今回のアルバム収録曲以外にも多数の楽曲がカバーされているので、ぜひチェックしてほしい。2019年1月からはアニメ『BanG Dream! 2nd Season』、10月からは『3rd Season』の放送が決定するなど、今後の展開も続々発表されている『BanG Dream!』。まずは聴き馴染みのあるカバーソングから入門してみるのも良いかもしれない。(杉山 仁)

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