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米中政府のコロナ初期対応を批判する『In the Same Breath』

ぴあ

21/2/1(月) 18:30

『In the Same Breath』 Sundance.org

2016年のデビュー作『Hooligan Sparrow』、2019年の『一人っ子の国』に続き、中国生まれのドキュメンタリー映画監督ナンフー・ワンが、最新作『In the Same Breath』をサンダンス映画祭でお披露目をした。

今回のテーマは、新型コロナ。昨年秋のトロント映画祭では、やはり新型コロナをテーマにしたドキュメンタリー『76 Days』が上映されたが、そちらは都市封鎖された76日間の武漢の病院に焦点を当てるものだった。一方で、過去2作でも中国政府を批判したワンは、政府の対応にフォーカスする。2019年の12月から武漢では同じ症状を訴える人が続出していたことを見せるセキュリティビデオ、中国政府は死者数を3,300人と言っているが「桁がひとつ違う」という葬儀屋のコメント、政府のプロパガンダをそのまま垂れ流す現地メディアの様子などを、ワンは批判たっぷりに見せていくのだ。

批判の矛先は、現在ワンが住むアメリカにも向けられる。アメリカの政府は、当初、コロナの脅威を過小評価し、「アメリカは大丈夫だ」「心配する必要はない」と国民に言い続けた。アメリカのコロナ感染のメッカとなるニューヨークですら、ロックダウンが始まる直前まで同じメッセージが伝えられていたことを、ワンはこの映画で人々に思い出させる。そんなふうに現実をきっちり見なかったがために、患者が一気に押し寄せてくると、十分なマスクや防護服が足りず、医療従事者は不安な状況でケアを行うことを強いられたのだ。映画には、その状況に反論したためにクビにされた元看護士も登場する。

もし、政府が最初からことの大きさを理解し、国民に真実を語って、早急にロックダウンをしていたら?亡くなった人々の墓を映しながら、ワンはそう問いかける。コロナは進行形であるだけに、これについてのドキュメンタリーは、おそらくこの後も出てくるだろう。そんな中で、今作は、この1年を振り返り、考察する、意義ある作品といえる。

文=猿渡由紀

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