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尾崎由香&作家陣が語り合う、歌手としての強みと可能性「曲ごとにまったく違う挑戦があった」

リアルサウンド

18/8/7(火) 18:00

 尾崎由香が、メジャーデビューシングル『LET’S GO JUMP☆』をリリースした。

尾崎由香 -「LET’S GO JUMP☆」全曲試聴クロスフェードMOVIE

 テレビアニメ『けものフレンズ』(テレビ東京系)のサーバル役でブレイクした声優・尾崎由香。同作には、テレビアニメ『少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん』(NHK Eテレ)のオープニングテーマ「LET’S GO JUMP☆」(作詞曲:後藤康二)に加え、初回限定盤に「僕のタイムマシン」(作曲:沖井礼二、作詞:清浦夏実)、通常盤に「ハートビート・サイレン」(作詞曲:buzzG)、それぞれ1曲ずつ新規ソロ歌唱曲が収録されている。

 リアルサウンドでは、尾崎由香、後藤康二(ck510)、沖井礼二(TWEEDEES)、清浦夏実(TWEEDEES)、buzzGの5名にインタビュー。今作の制作秘話を語ってもらう中で、作家陣から見た尾崎由香の歌声の魅力や可能性、尾崎自身に歌手としての展望を語ってもらった。(編集部)

「ナチュラルな声がすごくキレイ」(清浦夏実)

――普段は声優として活躍される尾崎さんですが、歌手デビューの話をいただいたときはどんな気持ちでしたか?

尾崎由香(以下、尾崎):お話をいただいたのが、まだ声優デビューしてから2年目のときだったので、嬉しいと思った反面、不安と緊張もありました。今までキャラクターとしてグループ活動はしていましたけど、ソロで歌う実感がまったく沸かなかったんですよ。でも、歌うことは大好きなので楽しみな気持ちも大きかったです。

――歌手活動に対する憧れはお持ちだったのでしょうか。

尾崎:ありました。声優として歌う機会が増える中、ステージで歌う楽しさをすごく実感している時期だったので、「もしソロで歌ったらどうなるんだろう?」って想像したり、いつかソロでステージに立ってファンの方と楽しめたらという気持ちは何となく持っていたんです。まさかこんなに早くその機会をいただけるとは思いませんでした。

――歌うこと自体は昔から好きだったんですか?

尾崎:学生の時はよく友達とカラオケボックスに通っていましたし、今でもヒマさえあれば一人でカラオケボックスに行くんです。歌うと気分転換にもなるし、リラックスできるんですよね。aikoさんとか女性シンガーさんの歌を歌うことが多いんですけど、他にも多方面の曲を歌うのが好きで、sumikaさんとか男性のバンドの曲も普通に歌ったりします。ロックフェスにも毎年1回は必ず遊びに行きますし、あまりイメージはないんですけど、実はロックも大好きです(笑)。

――作家陣のみなさんは尾崎さんの歌声にどんな印象を抱かれましたか?

後藤康二(ck510)(以下、後藤):はい、まずレコード会社の方から資料をいただいて、歌声を聴いた印象は、とにかくラブリー&キュート(笑)「なんてカワイイんやろう」ってね。デビュー曲の「LET’S GO JUMP☆」に関しては『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』(NHK Eテレ)のタイアップの話が同時に進行してたので、その声から感じる”ワクワクする印象”つまり尾崎さんのチャーミングさと『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』の”ほのぼのとしたハートウォームな世界観”がうまくリンクした楽曲を…と制作に臨みました。

buzzG:僕は最初に「LET’S GO JUMP☆」の音源を聴かせていただいて、後藤さんもおっしゃるようにとにかくラブリーかつキュートだったので、自分の“寂しいムードのギターロック”という作風と、どのくらいのバランス感でギャップを持たせたらいいのかを考えましたね。

清浦夏実(以下、清浦):私たちもまず「LET’S GO JUMP☆」の音源を聴かせていただいたんですけど、私の第一印象はみなさんと少し違って、ナチュラルな声がすごくキレイな方という印象があったんです。見た目の可愛らしさや女性的なところがありながらも、少年っぽく聴こえるところがあるなあと思って。それで「僕のタイムマシン」の歌詞では〈僕〉という一人称を使ってみたり、〈飛ばしてこうぜ〉っていう男の子っぽい言葉を使ったりしたんです。

沖井礼二(以下、沖井):僕らはチームで仕事してるので今の話にも繋がりますけど、最近の声優さんの曲は、声の上のほうの成分を使う傾向が強いじゃないですか。僕らは今回「LET’S GO JUMP☆」や尾崎さんが普段喋っている声を聞かせていただいて、「この人は声の下の成分がキレイ」と思ったんですよ。僕は女性の声の下の成分のふくらみが大好きなんですけど、それを自分なりに活かした曲を作れると思ったのが第一印象ですね。「LET’S GO JUMP☆」でのグロッケン的な声の使い方というよりも、もう少し下のフルート的な声で歌ってもらえたらと思って。尾崎さんは最初はちょっと戸惑われてましたけど、僕としてはドンピシャだったし、結果上手くいったのでさすがだと思いましたね。

 

――今作にはタイプ別のカップリングを含め3曲が収録されますが、どの曲も尾崎さんの歌い方が異なっていて、それぞれ違う魅力が引き出されている印象があります。尾崎さんご自身は自分の歌声についてどうお考えですか?

尾崎:いままでは声優としてキャラクターソングしか歌ってこなかったので、最初は「自分が尾崎由香として歌う声ってなんだろう?」って戸惑う部分があって、正解を結びつけるのが難しかったんです。でも、いろんな声優さんから意見を聞くなかで、自分が歌の世界観に合った気持ちや感情を持って歌えば、たぶんそれが私の歌う歌のベストなんじゃないかなと思うようになって。自分が曲の世界に入るように歌うとレコーディングが上手くいくということは、今回の3曲を通して学びました。

――やはりキャラソンで歌う場合とは勝手が違うんでしょうか。

尾崎:全然違いますね。キャラソンの場合はキャラクターを通して歌うので、いち自分というよりも、まずはキャラクターの声質じゃないとダメですし。曲の世界観というよりもキャラクターとして生きることがいちばん大切なので。

沖井:僕らの曲では最初にそういうお話をしましたよね。尾崎さん側からまず「どういうキャラで歌いましょう?」と聞かれたので「キャラにならないでください」というお話をしたんです。僕から注文したのは「今の年代の等身大の女性として歌ってください」と「主人公にならないでください」ということで。例えば、この歌の主人公が出てくるストーリーを朗読する語り部のような距離感で歌ってほしいとお願いしたんです。そのほうが全体の雰囲気としてまろやかになるし、感情が入りすぎてる歌というのはポップスとして聴きにくいと思うんですよ。ただ、それをどういう風に表現するかで試行錯誤しましたよね。

尾崎:その歌い方を掴むまでには結構時間がかかりました。一回スイッチが入るとすんなりいくんですけど、そのスイッチを探して見つけるまでがすごく大変だったんですよ。切り替えの仕方が全然わからなかったので。

清浦:でも、曲に合わせて器用に切り替えられるわけですから、それは私たちとしてもいろんな提案ができるということですものね。

沖井:スキルがある。

後藤:素晴らしいですよね。

――清浦さんは同じ女性シンガーとして、尾崎さんの歌声をどうご覧になられますか?

沖井:商売敵だよね(笑)。

清浦:いやいや(笑)。でも、尾崎さんは小さなころから役者のお仕事をなさってて、芝居心をお持ちでいらっしゃるので。私は歌心は芝居心だと思ってるので、その点は正直私なんかよりもずっと先輩だと思います。

尾崎:いえいえ! 清浦さんのほうが先輩です!

「尾崎由香の“大人”な部分を表現した」(沖井礼二)

――なんか譲り合ってますが(笑)。ここからはクリエイターのみなさんに曲ごとのお話をお伺いさせてください。まず表題曲の「LET’S GO JUMP☆」ですが、この曲の作詞作曲編曲を一括して担当された後藤さんは、尾崎さんの魅力を引き出すためにどんな工夫をされましたか?

後藤:(2017年の)年末に初めて顔合わせでご挨拶させていただいたんですけど、その際にスタジオに入ってキーチェック・レコーディングをやってみたんです。ただ、尾崎さんが多忙を極められていらっしゃったこともあって、スタート時間がなんと朝の10時(笑)。「こんな時間だと声帯もまだ起きてないだろうな」と心配しつつ、何パターンか用意したキーで歌っていただいたんですね。でも、これがね、いきなり声が出る出る(笑)。そこでいちばんパリッとしたところに触れて、用意したキーの中でもいちばんキラキラしたものを「これが好きです」「楽勝です!」と言ってくれて(笑)。

尾崎:楽勝とは言ってないです!(笑)。

後藤:ハハハ(笑)。それでテレビのオンエアに向けたプロセスもあったので、まずテレビサイズのレコーディング、そしてフルサイズのレコーディング…と2回現場をご一緒させていただきました。歌詞の世界観に関しては、まずオンエア用1コーラスは『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』のほのぼの感とか観てくれているチビっ子がワクワクするようなところに尾崎さんの魅力をリンクさせるイメージで、その後のフルサイズ…特に2番以降はアニメの世界観は応酬しつつ、さらに “等身大の尾崎由香”を出せたらなと思って。満を持してのデビューシングル、ずっと応援してくれているファンの皆さんや仲間への「出逢ってくれてありがとう」という感謝の気持ちを表した”ギフト”ですね。もちろんキラキラ元気な楽曲ではありつつ、ちょっと甘酸っぱくて切なくて、いつでもファンのみなさんに思い出してもらえるような曲にしたかったんです。デビュー曲に関わらせてもらえるのは音楽家としてとても光栄なことですからね。

尾崎:この曲はすごく明るいし、デビューするにあたっての自分の気持ちとすごくリンクするので、私も歌いやすいし、いただいた時に「フレッシュな気持ちを歌にしてみなさんに届けたい!」という気持ちがすごく強くなったんです。レコーディングも楽しくて、〈手をたたいて PAN☆PAN☆〉のところの手拍子とか〈かかと 鳴らせ BAN☆BAN☆〉でかかとを鳴らす音もスタッフのみなさんと録音したんですよ。

後藤:そうそう、おもしろかったですね。すべてのレコーディングを終えたあとに、アディショナルとしてみんなで録音しようよ!ってね。ディレクターさんとかエンジニアさん、マネージャーさん、みんなでゾロゾロとブースに入ってノリノリで手拍子&足踏み(笑)。僕は尾崎さんの隣だったんですけど、身長差があったのでマイクが(尾崎の)上のほうにあって(笑)。

尾崎:けっこう背伸びして叩きました(笑)。でも、そんな経験は初めてだったので、「曲ってこうやってみんなで作るんだ」と思いましたし、ソロでは初めてのレコーディングでしたけど、すごく良い思い出になりました。

――歌の雰囲気で言うと、今回の3曲の中でも可愛らしさはもちろん、ピュアな幼さみたいなところがいちばん出てる曲だと思ったのですが。

後藤:歌の世界観は尾崎さんから醸し出されるムードに尽きます。やっぱり『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』の曲としてオンエアされるところもあったから、逆に年齢なんかも飛び越えて、チビっ子が聴いても大人が聴いても「明日もがんばろう!」みたいな気持ちになればイイなと。それを何よりチャーミングに歌ってくれたのは尾崎さんの表現によるところだと思うし、そういう意味では何度聴いてもハッピーになれる気持ち良い曲になってうれしいですね。最高!

尾崎:やっぱり『少年アシベ GO! GO! ゴマちゃん』のオープニングテーマになるということで、子どもたちに楽しく聴いてほしいですし、アニメの世界観に入り込めるような曲になればという気持ちを込めてレコーディングに挑んだので、そういう感じになったんだと思います。

――あと、後藤さんは乃木坂46「ガールズルール」やSTARMARIE「ナツニナレ!」などを手がけられてて、個人的には夏ソングが得意なイメージを持ってるんですが、「LET’S GO JUMP☆」も夏っぽい印象がありますよね。

後藤:期せずしてリリースが8月ですが、そこは尾崎さんとも相談しながら、あまり季節感のあるワードは盛り込まないようにして、春でも夏でも…いつ聴いても元気になれる曲にしたいねって。夏っぽいということは、つまり”開放感がある”ということだと思うし、見事に尾崎さんが世界観を作ってくれたところなのかなと思っています。

――なるほど。MVが沖縄撮影だったので、そのイメージに引っ張られたのかもしれません。

尾崎:あのMVはまさに夏っていう感じですものね(笑)。

尾崎由香 -「LET’S GO JUMP☆」ミュージックビデオ

――続いて初回限定盤のカップリング曲「僕のタイムマシン」ですが、作詞を清浦さんと沖井さんのお二人、作曲と編曲を沖井さんが手がけられてます。こちらはどういったオファーで書かれた曲なのですか?

沖井:僕は昔にCymbalsというバンドをやってまして、これまでもお仕事で「Cymbalsのあの曲みたいな感じで」というオファーをいただくことが多かったんですけど、今回は具体的にどの曲ということではなく「Cymbalsっぽいもの」というお話をいただいたんです(笑)。ただ、Cymbalsは解散して15年近く経ってるので、一度聴き直して昔の自分と対面することになって(笑)。

清浦:どんな感じだったんですか?

沖井:僕は昔にCymbalsというバンドをやっていまして、これまでもお仕事で「Cymbalsのあの曲みたいな感じで」というオファーをいただくことが多かったんですけど、今回は具体的にどの曲ということではなく「Cymbalsっぽいもの」というお話をいただいたんです(笑)。ただ、Cymbalsは解散して15年近く経ってるので、一度聴き直して昔の自分と対面することになって(笑)。

尾崎:ファンの方にもリリースイベントとかで披露すると「Cymbalsっぽくてすごく好きです!」ってよく言われるんですよ。

沖井:がんばりましたから(笑)。

清浦:研究しまくってましたからね。

沖井:そんなことをやってると、曲を作った当時の辛かったこととか悲しかったことも思い出して(笑)。でも、そういう気持ちだったからこういうフレーズにしたんだなということにも気付いて、それを今回の曲に盛り込んだりもしたんです。それは、こうやって引っ剥がす作業をしなきゃ思いつかなかったことだし、僕としてはデトックスじゃないけど、自分が今までに作ってきたものを整理できたところがあって、今作ってるTWEEDEESの新作にも影響が出てると思うんですよ。(尾崎に向けて)ありがとうございます。

尾崎:光栄です(笑)。

沖井:なおかつ、土岐麻子ではなくて尾崎さんが歌うものなので、ちゃんと組み替えなくてはいけない部分もあって。そこは先ほどの声の成分の話もそうだし、本人の持っているキャラクターや雰囲気も盛り込まなくてはならないし。あと、Cymbalsは2000年前後の話だったけど、今はもう2018年なので、そのままコピーするのではなくてアップデートしないとおもしろいものにはならないと思って工夫しましたね。実は「僕のタイムマシン」ほどアップテンポの曲はCymbalsにはないんですよ。今聴き直すと意外とダルいですよ。

――いやいや(笑)。

沖井:だからテンポもそうだし、リズムの組み方も意識して、音色とかキックの位置とかも考えました。あとは先ほど“キュートでラブリー”というお話がありましたけど、たぶんそういう楽曲は僕以外の人が作られると思ったので、「僕のタイムマシン」ではそれ以外のところを担当してもらおうと思って。例えばサーバルちゃんとかのイメージではなくて、もう少し切なくしたり、尾崎さんの今の実年齢を考えたら、もうちょっとだけ大人にしようと思ったんです。尾崎さんは今26歳でしたっけ?

尾崎:25歳です。

沖井:……すみませんでした!

尾崎:いえいえ、あまり年上に見られることがないのでちょっとうれしいです(笑)。

沖井:ええ子や(笑)。まあ、25歳というのは人生にも深みが出てくる年齢じゃないですか。そういう部分を曲で表現してあげたいという気持ちがメロディに入っていますね。

――歌詞は清浦さんがメインで書かれたのですか?

清浦:そうですね。沖井さんがCymbalsを思い出す作業をずっとしてたので、私が「タイムマシンがあったらいいのにねえ」という話をポロッとしたんですけど、その時に「これをテーマにしたらいいんだ!」と思いまして。もちろんCymbalsのための曲を作っているわけではないので、そこから尾崎さんに寄せた歌詞を書いていきました。

沖井:でも曲のタイトルは僕が決めたんですよ。これは本当に個人的な話なんですけど、僕が音楽を始めるにあたって非常に影響を受けたザ・コレクターズというバンドに「僕の時間機械(タイムマシーン)」という曲があるんですね。今回は僕の初期衝動じゃないですけど、Cymbalsとかそういうものを思い出しながら作った曲でもあったので。僕ももうすぐ50歳になりますが、今回はいい感じに20代に戻らせていただいて。この曲が“僕のタイムマシン”なのかもしれない(笑)。

「歌を通して自分をさらけ出した」(尾崎由香)

――尾崎さんが「僕のタイムマシン」をいただいたときの印象は?

尾崎:私は渋谷系というジャンルの曲にはまったく触れてこなかったので、あまり馴染みのない曲調ではあったんですけど、このシングルを制作するにあたっていろいろな曲を参考に聴かせていただくなかで、Cymbalsさんの曲はすごくお洒落で音楽的にもすごく気に入って、私から「ぜひこういう感じの曲を歌いたいです!」とお願いした曲だったんですよ。私の担当ディレクターの方もCymbalsさんの音楽が好きで、「尾崎さんにはこういう曲が合うんじゃないか」と思われていたので、みんなの気持ちが合致したんです。

沖井:この話を20年前の僕に聞かせてやりたいですね(笑)。

尾崎:まさか本当に沖井さんが作ってくださるとは思ってなかったので、みんなで喜んだんですけど、初めて歌うタイプの曲だったのでいちばん苦戦もしまして。私は不安になりがちなので、事前に準備とか練習を念入りにするタイプなんですけど、この曲は準備しても準備してもわからないと思うことが多くて、自分の中で一回も納得しないままレコーディングスタジオに行ったんです。そういう経験は初めてだったし、レコーディングブースに立つまではすごく不安だったんですけど、沖井さんのディレクションで本当に魔法にかけられたみたいな感じになりました(笑)。

沖井:でも、尾崎さんと僕らで一緒に作っていきましたよね。僕も歌い手ではないので、実際に歌う人がその場に立って声を出してみないと、どんな曲になるのかはわからないんですよ。そこで尾崎さんが試そうとしてる歌い方に対して、僕がいろいろ意見していくことで、だんだん「これだね」と思えるものが出来ていって、すごく良いセッションだったと思います。尾崎さんは苦労したとおっしゃりますけど、僕はだんだん形になっていくのが楽しかったですね。すごくクリエイティブな現場でした。

尾崎:だんだんと不安要素が抜けて私も楽しくなってきたから、レコーディングもスムースになっていったんじゃないかと思うんです。最初に沖井さんと清浦さんにお会いしたのは「僕のタイムマシン」のドラムをレコーディングしてる時だったんですけど、そういうところから一緒に曲を作る経験も初めてだったので、すごく思い入れのある曲になりました。清浦さんのコーラスも生で聴かせていただきましたし、お二人のチームワークを目の前で見て、ずっと感動してました。

清浦:尾崎さんは制作の状況もずっとご覧になってて、ドラムを録る日も自分は歌わないのに来てくれたりもして。ちゃんと自分の作品に責任を持って見学に来てくださるんだなって感じました。

沖井:お忙しい中、リズム録りの現場から来てくださってるのは僕も嬉しかったですね。

尾崎:感動してしまったんですよ。すごく楽しくて、ドラムをずっと見てましたから(笑)。

沖井:窓のいちばん見えやすい位置でジーッと見てましたもんね(笑)。

――通常盤のカップリング曲「ハートビート・サイレン」はbuzzGさんらしい青春感のあるロックナンバーです。こちらはどんなイメージで作られたのでしょうか。

buzzG:僕は普段作家をやりながらボーカロイドの曲を作ってるんですけど、そのボーカロイド曲で僕が持っている“寂しいムードのギターロック”というオファーをいただきまして。「LET’S GO JUMP☆」は光の曲だったので、僕は影の部分を書きたいなと思いました。例えば、尾崎さんも最初におっしゃってましたけど、ソロデビューの期待や嬉しさと同じくらい不安も抱えてらっしゃると思うので、特にそういう部分を歌詞で書きたかったし、ご本人もそういう部分をどこかで発散したいだろうなと思ったんです。

尾崎:インタビューで「発散できる曲です」とよく言ってますし、ライブとかでもすごく思い切り歌ってて、実際に発散してます(笑)。カッコいい尾崎由香をみなさんの前で披露できてると思いますし、この曲を歌った時は必ず「エモい」と言われるんです(笑)。もう「エモい」が恒例化してますね。

沖井:その手があったか(笑)。

buzzG:レコーディングの時も僕は「エモい」しか言ってない感じだったので(笑)。この曲はカップリングとお聞きしてたので、陰と陽じゃないですけど、「LET’S GO JUMP☆」と同じ盤に入ればおもしろいかなと思って作りましたね。

尾崎:すごくカッコいい感じのギターロックですよね。私は普段こういう曲調のものを好きでよく聴いていて、実は自分がカラオケでよく歌う曲にも近いテイストなんですよ。今の尾崎由香にはあまりないイメージなんですけど、「こういうカッコいい尾崎由香もいるんだよ」というところを伝えたかったので、挑戦でもあり期待の大きい曲でもありました。だからこの曲はいちばん素に近い尾崎由香が出てるんじゃないかなと思ってます。

――“いちばん素に近い”というのは普段のイメージから考えると意外ですけど、本当にロック好きなんですね。

尾崎:そういう部分を出す機会が今までまったくなかったんです。キャラクターソングでもロックな曲はなかなかないですし、お仕事で「ハートビート・サイレン」みたいな歌声で歌うこともまったくなかったので。「LET’S GO JUMP☆」とは180度違うタイプの曲調ではありますけど、自分の中ではいちばんハマった感覚はありますし、ファンの方にも「今までと全然違うけど、こんな感じの尾崎さんもすごく素敵です」と受け入れてもらえて。「こういう歌を歌いたい!」と思っていたど真ん中の曲をいただけて嬉しかったです。

――レコーディングでこだわられたところは?

buzzG:尾崎さんが今おっしゃったように“素に近い”ということだったので、あまり細かいことは言ってなくて、ディレクションは本当に「エモい感じで」ぐらいでしたね(笑)。歌も後半に差し掛かるにつれてどんどんノッてきて、ボルテージが上がっていく感じがすごくドラマのあるテイクになって。エモかったです(笑)。

尾崎:この曲はギターロックですけど歌詞には切なさもあるので、そういう部分も表現できたらと思いつつ、今までの曲では使うことがなかったファルセットでも歌うことができたんですよ。最初の部分はファルセットを使ってるんですけど、いちばん最後のところでは自分をさらけ出す意味も込めて、地声で吹っ切れたように歌ったりもしてて。

buzzG:こちらが「最後は地声でいきましょう」とか指示を出さなくても、自然と地声で歌われるんですよね。

「いずれはソロ歌手としてステージに立ちたい」(尾崎由香)

――自分の中で曲の世界観をイメージして歌を組み立てられてるんですね。

尾崎:曲の世界観を意識するのは役者をやってるからこその部分だと思うんですけど、今回はそれを大切にしながら曲ごとにまったく違うチャレンジができました。この曲に関しては自分のボルテージを上げて、全部を出し切りたかったんです。

沖井:尾崎さんは今回のレコーディングでは三者三様のディレクションを受けたと思うんですけど、僕はその印象の違いを聞いてみたくて。というのも、我々は作家なので、人がディレクションしてるところを見る機会があまりないんですよ。

尾崎:後藤さんはすごく優しい方で、ずっと「ベリーキュート!」って言ってくださるので私も楽しくなっちゃうんですよ(笑)。そこが「LET’S GO JUMP☆」の曲にピッタリだと思いましたし、やっぱり作ってくださる曲そのままの方というイメージが強くて、とっても楽しいレコーディングでしたね。

後藤:僕はね、キューボックス越しにずっと「めっちゃエエやん!最高!」って言いまくってたな(笑)。

尾崎:沖井さんとは今回が初めてだったので、レコーディング前は緊張して「怖い方だったらどうしよう?」と思ってたんです。

沖井:それ、よく言われるんですよ(笑)。

尾崎:でも、本当にわかりやすく丁寧にディレクションしてくださって。感動したのが、沖井さんはレコーディングする際に「行ってらっしゃい」って言ってくださるんですよ。

沖井:歌う人というのは歌の世界に入り込まなくてはいけないじゃないですか。だからあれは“こっち側”ではなくて“あっち側に行ってらっしゃい”ということなんです。

清浦:ボーカルブースってけっこう孤独になりますもんね。「これでいいのかなあ?」って思うと不安になってくるけど、そこを上手く寄り添ってくれるのが沖井さんの魔法なのかなと。

沖井:自分もデビューした時からブースの寂しさを知ってるからね。ブースの中でベースを一生懸命弾いてる時に、コントロールルームの聞こえないところで何か喋ってるのを見ると嫌じゃないですか。だから僕はできる限りトークバックをするようにしてるんです。尾崎さんはその必要はなかったけど、本当に不安にされてる方の場合は、僕も一緒にブースに入ったりしますし。気持ちが近いほうが絶対にいいと思うし、とにかく「沖井礼二は怖くない」ということを言っていただければ(笑)。

――では、buzzGさんのディレクションは?

尾崎:「ハートビート・サイレン」のレコーディングでは、とにかくエモさとかカッコよさを出すために追求してたんですけど、すごくすんなりできたというか、自分の中で素のままで歌えた感じがあったんですよ。

buzzG:僕はずっと“エモいbot”になってただけなので(笑)。

清浦:楽曲とご本人のシンクロ率が高かったのかもしれないですね。

――さて、尾崎さんは今作で待望の歌手デビューとなりますが、今後の歌手活動について、どのようなビジョンや目標をお持ちですか?

尾崎:いまはまだデビューしたばかりで3曲しかないので、これから次のシングル、アルバムと、いろんな私の曲を歌いたいなと思ってます。今回の3曲とはまた違ったアプローチの曲にも挑戦したいですし、いろんな曲を集めて、いずれはソロでライブのステージに立ちたいと思っています。

――クリエイターのみなさんは、尾崎さんの今後の活動にどのような期待を抱いてますか? もしまた尾崎さんに楽曲を提供できる機会があるとすれば、どんな曲を書きたいかもお聞かせいただければと。

後藤:まず、期待というかエールとしては、日本レコード大賞の新人賞ですね(笑)。あとはいろいろ聴いてみたいジャンルや作風もあると思うし、せっかくこうして制作陣でご縁ができたので、コライトじゃないけど一緒に曲を書いたりもしてみたいな。これは余談だけど…制作陣のみんなで一緒に食事する機会をいただいたりして、そういうひと時ってとても貴重だったし、制作にもいい形で反映されると思うんですよ。例えば作詞作曲やアレンジをシェアするとか、いろんなやり方があると思うから、みんなでアーティスト「尾崎由香」をもっとカラフルに彩って、そして更に輝いてくれたら最高ですね。願わくば“尾崎由香と仲間たち”みたいな感じ?(笑)、これからもクリエイティブなお付き合いができればと思いますね。

buzzG:僕も後藤さんと似たような感じですけど、いまの3曲だけでもすごくカラフルでいろんな色があるので、ジャンルだけではなくて、例えば尾崎さんと一緒に作詞してみるのも楽しそうだと思いますね。

清浦:私はこの中では唯一女性として参加させてもらっているので、アニメが好きだったり尾崎さんのファンの方だけじゃなくて、女性が聴いてもいいなあと思えるようなアプローチもできると素敵じゃないかなと考えてて。尾崎さんはそれができる方だと思うので。

沖井:尾崎さんは、これからも26歳、27歳と活動を続けていくと、人としての深みやキャラクターも変わっていくだろうし、たぶんお芝居にしても役柄がいろいろと広がっていくと思うんですよ。そういう演じる役の深みと一緒に曲も深めていけたらと思っていて。そのためには我々ももっと尾崎さんのことを知らなくてはいけないし、彼女はこれからどんどん成長していくと思うんですよ。そこに置いていかれたくないし(笑)、一緒に勉強していきたいんですよ。

尾崎:光栄です!

沖井:たぶん我々が尾崎さんのために書いた曲は、他の方が歌うと違和感が出ると思うんです。それは尾崎さんに書かせていただくことによって我々がもらえる何かだと思うし、一緒にモノを作っていく上でそこにしかない何かを作っていけたらなあと思いますね。それは僕らのためにもなると思う。

(取材・文=北野創/写真=堀内彩香)

■リリース情報
『LET’S GO JUMP☆』
発売中
価格:初回限定盤(CD+DVD)¥2,000+税
通常盤(CDのみ)¥1,300+税

<初回限定盤 CD収録内容>
1.LET’S GO JUMP☆
※TVアニメ『少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん』(NHK Eテレ)オープニングテーマ
作詞、作曲:後藤康二(ck510)
2.僕のタイムマシン
作詞:清浦夏実(TWEEDEES)・沖井礼二(TWEEDEES/ ex-Cymbals) 作曲:沖井礼二
3.LET’S GO JUMP☆ inst
4. 僕のタイムマシン inst

<通常盤 CD収録内容>
1.LET’S GO JUMP☆
※TVアニメ『少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん』(NHK Eテレ)オープニングテーマ
作詞、作曲:後藤康二(ck510)
2.ハートビート・サイレン
作詞、作曲:buzzG
3.LET’S GO JUMP☆ inst
4.ハートビート・サイレン inst

<DVD収録内容>※初回限定盤のみ
1.LET’S GO JUMP☆ MV
2.LET’S GO JUMP☆ メイキング

初回限定盤特典:撮り下ろしアナザージャケット3種ランダム封入(全10種)
通常盤特典:封入オリジナルステッカー

<チェーン店別特典>
タワーレコード:オリジナルA4クリアファイル(撮り下ろし限定写真)
Loppi・HMV:オリジナルB3サイズポスター(撮り下ろし限定写真)
アニメイト:オリジナルA4下敷き(撮り下ろし限定写真)
とらのあな:オリジナルブロマイド(撮り下ろし限定写真)
ゲーマーズ:オリジナル特大缶バッジ(撮り下ろし限定写真)
ソフマップ:オリジナルポストカード(撮り下ろし限定写真)
その他、サポート店:オリジナルICカードステッカー【3種のうち1種ランダム配布】(撮り下ろし限定写真)

■イベント情報
『尾崎由香 「LET’S GO JUMP☆」発売記念イベント』
8月12日(日)①
会場:【大阪】HMVグランフロント大阪
ミニライブ+ハイタッチ会

8月12日(日)②
会場:【大阪】タワーレコード梅田NU茶屋町店
ミニライブ+ハイタッチ会

■関連リンク
尾崎由香 オフィシャルサイト
尾崎由香 オフィシャルTwitter
尾崎由香 Instagram
少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん オフィシャルサイト

尾崎由香 サイン入りチェキプレゼント

尾崎由香のサイン入りチェキを1名様にプレゼント。応募要項は以下のとおり。

応募方法

リアルサウンドの公式Twitterをフォロー&本記事ツイートをRTしていただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンドTwitterアカウントよりDMをお送りさせていただきます。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。

リアルサウンド公式Twitter

応募期間:8月21日(火)

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