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大久保佳代子 (オアシズ)の 人生そろばん

パウダー状の餃子を出す町中華

毎週連載

第46回

19/11/24(日)

私には行きつけのお店が何軒かあります。だいたい誰かに連れていってもらって、気に入った店を行きつけにするパターン。

その何軒かの共通点は、まずお店の大きさが大き過ぎず小さ過ぎずちょうど良いこと。個室個室している仰々しい雰囲気でもなく、でもプライベート感もある作りのお店ですね。そこまで値段も高くなくて、店員さんもマスターとスタッフ2~3人くらいの感じが良くて、お客さんも落ち着いた人が多いのが好ましいですね。あと、出来れば、スッタフさんが多少業界慣れをしていてくれると、さらにありがたい。

業界慣れっていうのは、例えば、別のテーブルで食事をしているお客さんが「アレ、大久保さんじゃない?」って絡んで来ようとしたときに、間に入ってくれて「すみません。プライベートで飲んでいらっしゃるので」みたいに止めてくれると、非常に嬉しくてすぐまた行っちゃう。

最近開拓して、ヘビロテで利用させてもらっている焼鳥屋さんがあるんですけど、そこメチャメチャ良いですよ。店員さんの距離感が良い。私が行ったときに、個室が埋まっていると「ごめんなさい。今日埋まっちゃってて、カウンターになっちゃうけど、大丈夫ですか?」みたいにサラッと気を使ってくれるあたりとか。そうすると「いやいや、全然カウンターで」って、こっちも気持ち良くなりご機嫌な酔っ払いに。やっぱりお店で失敗したくないですから。あと何回、美味しいごはんとお酒が飲めるのかを考えたら、1回1回を大事にしたい。

これまで「これはヒドい!」ってお店、ありましたもん。その1つは、三茶にある町中華のお店。だいたい町中華って外れないと思っているんですが、この店は大ハズレ。街中華って昼間からビールも飲めるし、餃子だって今は冷凍食品だってあれだけウマくなっているんだから、マズいはずがないだろうと。

ところが、その町中華は、想定をはるかに超えてきて。待たされた挙句、出てきた餃子が見た目的には「ちょっと焼きが甘いかなぁ」くらいの白さで。まぁそれは良いとして、タレを付けて一口噛んだら、本当にね、砂が水を含んだみたいな感じの無味無臭でびっくり。残りの餃子をタレの皿に戻したら、具がパウダーみたいにサラサラとタレの中へ流れ出し。「ヤバい!全部流れ出しちゃう」と思って慌てて食べたけど。まぁ、マズい。

たまたま何かの間違いかもしれないから今度は麻婆豆腐も頼んでみたんですよ。でも、その麻婆豆腐も味にまったく深みがない。「辛い!」「醤油!」豆腐の醤油煮?みたいな感じで。帰りたくなったけど、お店の人はメチャメチャ親切なんですよ。私が食べている間に、たまたまお店が取り引きしてる信用金庫の人が商談に来て。その信用金庫の人に出すコーヒーのついでに、私のところにもコーヒーを出してくれて。実家で出すようなインスタントコーヒーにすでに砂糖とミルクがインされちゃっている安っぽい味の。だから、余計に帰りにくくなっちゃって。

お店の人は信用金庫となんか話をしているし、「ごちそうさまでした」とも言い出しにくく。ようやく信用金庫との話を終えたところで、「じゃあ、そろそろ。ごちそうさまでした」って言ったら、そのお店の人が思いきり「大久保さん、ありがとね! また来てね」って。良かった~。無理して完食して。残すって感じ悪いからね。

でも、「あれは本当かな?」って思うくらいマズかった。夢だったんじゃないかっていうくらい。何を食べてもマズいって、もはや貴重だから、もう一度、行ってみようかな。



構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

大久保佳代子おおくぼ・かよこ

1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
http://www.p-jinriki.com/talent/oasiz/

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