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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

難しいこの時期、色んな意見ややり方があって良い

毎週連載

第132回

3月下旬に久々に人前で歌を歌いました。末井昭さんの奥さんで写真家の神蔵美子さんのイベントだったんだけど、本当に気持ち良かったな。銀杏BOYZのツアーは中止になってしまったし、お客さんの前で生で歌える機会は限られているからね。

昔、銀杏BOYZのライブで僕のメールアドレスを公開したことがあって、それ以来、お客さんからよくメールをもらうようになったんだけどさ、今のライブをやっていない状況に対しても色々な意見が届く。大きく分けると「無観客でも良いからライブをやってほしい」っていう意見と、「完全に新型コロナウイルスが収束して、安心して楽しめる状況になるまではライブはやらないでほしい」っていう意見。

誤解を恐れずに言うとさ、僕の気持ちも全く同じで、両方の思いがあるんだ。本当のことを言えば、今すぐにでもお客さんの前で歌いたいよ。

2014年のアルバム『光のなかに立っていてね』のときは僕以外のメンバーが抜けちゃったから、必然的にアルバムツアーができなかった。そして、去年アルバム『ねえみんな大好きだよ』を出したけど、コロナ禍ど真ん中だったから、またアルバムツアーが中止になっちゃった。

だから、今すぐにでもお客さんの前で歌うことができたら最高だなと思うけどさ、やっぱり突き詰めて考えると、僕が考えるライブは、演奏する側だけのことじゃなくて、お客さんの叫び声とかも含めてのことだから。お客さんが踊ったり黙って聴いたり、自由に過ごしている濃厚接触ありきの空間が僕にとっての「ライブ」なんだ。だから、今のところ銀杏BOYZの場合は中止っていう選択をしたってこと。

これはバンドによって考え方は色々あって良いと思う。無観客ライブをし続けたり、感染防止対策を最優先にしながらライブをし続けるバンドを否定しているわけではないの。ただ、そういう色々な考え方がある中でさ、銀杏BOYZの場合はしばらくツアー、ライブをやれない状況になったってことなんです。

お客さんから「絶対に投げ銭はしないでください」みたいな声もあったな。銀杏BOYZではたぶんやらないと思うけど、ただ、これもバンドや演者ごとに考え方が違って良いと思うんだよね。様々な事情で「投げ銭」が必要な場合があるのは僕もよくわかるからね。

少し前に、聖火ランナーに参加する人への批判が相次いだでしょ。でもさ、このときにも思ったけど、走ってるほうを批判してもしょうがないよね。誰かが「やる」って決めたことに対して「走る」ことを選択した人を批判してもしょうがないよ。

新型コロナウイルスで混乱し続けている今だけど、周りが波風立たせてもしょうがないし、考えとか、その上で決めた答えとかは色々あって良いと思うんだ。このコラムが公開される頃には東京オリンピックがどうなるかもはっきりしてると思うけど、オリンピックで一番大切にしなくちゃいけない対象は「選手」だよ。

世界中の選手たちが、この大会に向けて何年も前から取り組んでいて、選手によっては最後の大会になる人も少なくないと思うんだ。その選手たちを置き去りにして「やるな」「やれ」とかは簡単に言えることじゃないなと僕は思う。

だからこのコロナ禍の時期は本当に難しいんだ、どんなことでも決断したり、判断したりするのが。こうやって喋っていてもさ、時間が経つにつれて僕自身の考えが変わるかもしれないし。ただひとつ言えることは、今のところは「銀杏BOYZとして歌いたい気持ちはあるけど、いったんは中止という選択肢を選んだ」っていうこと。誰にとってもキツい状況だけど、どうかわかってもらえるとうれしいです。

3月に出させてもらった神蔵美子さんのイベントでの写真

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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