この世界の(さらにいくつもの)片隅に
19/12/17(火)
驚くほど別の映画になっている。前作はすずさんと周作、すずさんと径子の関係を中心に、北条家での生活のリアルをスクリーンに焼き付けた作品だった。
今作は、そこに遊郭のリンを加え、複雑な愛の葛藤の物語として生まれ変わった。周作とすずさんの結婚生活は唐突に始まり、なんとなく関係が深まる印象だったが、リンとのエピソードがその「なんとなく」の部分に明確な輪郭を生み出し、それが日常描写にも緊張感をもたらしている。
何気なかったはずの食卓、掃除、洗濯、就寝、それら生活の全てのシーンが全く違ったものに見えてくる。日常とはこんなにもうつろいやすく、また強固なものであるのかと戦慄と感動を覚える、新たな傑作だ。
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