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RADWIMPS×新海誠が築いた音楽とアニメの蜜月 『天気の子』地上波初放送を機に捉え直す、良質な相乗効果

リアルサウンド

21/1/3(日) 6:00

 本日1月3日、新海誠監督による映画『天気の子』が地上波で初放送される。映画が公開された2019年時点で“抗えない事象によって変わりゆく世界”を描いていたこの作品が、コロナ禍という困難に直面しながら生きる現在の我々のもとへ運ばれる意義はあまりにも大きい。そんな『天気の子』を語る上で欠かせないのが、劇中で鳴り響くRADWIMPSの音楽だ。

 『君の名は。』(2016年)でもインストゥルメンタル含めて劇中音楽を全曲担当したRADWIMPSだが、『天気の子』でも31曲に及ぶ楽曲を制作した。バンド形態にとらわれることなく、様々なアプローチで作られたインスト曲はもちろんのこと、ボーカル入りの主題歌は5曲にも及び、映画を形成する大きな要素となった。物語が動き出す予感が漂う「風たちの声 (Movie edit)」、晴れゆく空のショットに重なる「祝祭 (Movie edit) feat.三浦透子」など、その映像の意味や登場人物の描かれていない心情を深く掘り下げていく曲ばかり。ダイジェスト的な場面の連続を劇的に演出しているのだ。

祝祭 (Movie edit) feat. 三浦透子 RADWIMPS MV

 終盤に流れる「愛にできることはまだあるかい (Movie edit)」や「大丈夫 (Movie edit)」といった楽曲もシーンを大きく躍動させ、心を揺さぶる。台詞やアニメーションそのものでも登場人物の感情は十分伝わってくるが、それを数段階押し上げるのがRADWIMPSの演奏と野田洋次郎の歌声だ。それはもう1人の登場人物かのように、語り部として物語を押し進めるかのように存在感を示すRADWIMPSの音楽は、単なるBGMにとどまらない重要な役割を果たしている。

愛にできることはまだあるかい RADWIMPS MV
大丈夫 RADWIMPS MV

 本作の主題歌でも特に印象的なのは「グランドエスケープ (Movie edit) feat.三浦透子」だろう。インストかと思わせるような金属音の瞬きから徐々に曲の輪郭が生まれる。そして、アニメーションと連動しながら至上のサビへ向かって駆け抜けていく壮大な1曲だ。映画がなければ生まれなかったであろう楽曲構成であり、この曲調でなければ演出できなかったシーンがそこにある。音楽と映像が一体となり、映画全体を大きくうねらせるこの楽曲と場面は、RADWIMPSと新海誠による丹念な共同制作の賜物だろう。主人公とヒロインの想いを飛び越えた超常的な祈り、観客の心情をも巻き込んで高揚するような最後の合唱に伴うシーンは間違いなくハイライト。今回の地上波初放送でも、多くの視聴者が息を飲んで見守る瞬間になるはずだ。

 新海誠とRADWIMPSの蜜月は、アニメーション作品と音楽の掛け合わせによって生まれる刺激的な相互作用が再び注目されるきっかけとなった。エンドロールで掛かるテーマソングのみならず、劇中で流れる書き下ろしの挿入歌が格段に増えたのはここ数年のこと。『君の膵臓をたべたい』、『HELLO WORLD』、『あした世界が終わるとしても』、『プロメア』、『泣きたい私は猫をかぶる』、『ジョゼと虎と魚たち』など、複数の劇中歌を持つ映画が2016年以降増加している。実写作品と異なり動きの表現に制約のないアニメーションだからこそ、あらゆるタイプの楽曲を取り込みながら映像と音楽の相乗効果が作品へともたらされる。RADWIMPS×新海誠の組み合わせは、そのインパクトを強く再認識させてくれた。

 作品との良質なコラボレーションは、その作品の印象を楽曲にも刻むことができる。劇中で聴いた時のワクワクや、エンドロールで余韻に浸りながら聴いた記憶をライブの場で蘇らせることも可能になるのだ。RADWIMPSも2020年11月に行われたデビュー15周年記念ライブでも「グランドエスケープ」が2曲目を飾り、序盤を一気に盛り上げている様が印象的だった。映画公開後も、その思い出を引き連れながら楽曲の強度は高まり続けていく。

映画『天気の子』スペシャル予報

 LiSAが『鬼滅の刃』と強い結びつきを果たし、Eveと『呪術廻戦』のタッグが映像との調和で高評価を得るなど、音楽とアニメーションが起こす化学反応はさらに影響力を強めている。異なるカルチャーが交差する瞬間に生まれる強いコンテンツ力が人々を魅了し続けているのだ。今回の『天気の子』放送で初めてRADWIMPSと新海誠の格別な相性を知る人も多いと思う。音楽に注目しながら鑑賞することで、新たな鑑賞体験を得られるはずだ。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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