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SNS時代に音楽をリスナーへ届ける方法とは? SUKISHA、葉山柚子、夜中出社集団に聞いた

リアルサウンド

18/8/3(金) 12:00

 ソニー・ミュージックエンタテインメント主催のオーディション『Feat.ソニーミュージックオーディション』ファイナリストが決定した。

 『Feat.ソニーミュージックオーディション』は、音楽トレンドに新風を吹かせるアーティストを募集したオーディション企画。ファイナリストには、ソニーミュージックがトレンド作成に必要な予算、スタッフ、インフラ、ワークショップをバックアップ、音楽トレンドランキングのグランプリを目指していく。

 今回ファイナリストに選ばれたのは、あさぎーにょ、KID CROW、SUKISHA、ドアノブロック、葉山柚子、夜中出社集団(五十音順)の計6組。ファイナリストたちに密着したリアリティショー『Feat.ソニーミュージックオーディション』のオンエアもGYAO!と音楽チャンネル・MUSIC ON! TV(エムオン!)でスタートしている。

 リアルサウンドでは、ファイナリスト6組のインタビューを2回に分けて掲載。後編ではSUKISHA、葉山柚子、夜中出社集団にが登場。SNS上でバズを起こし“トレンド”を生み出すための戦略をはじめ、アーティスト活動を始めたきっかけ、オーディションを勝ち抜くための秘策になどついて話を聞いた。(編集部)

SUKISHA「自分を見てくれている人間を的確に刺していく」

 2017年8月に活動を開始したSUKISHAは、同時に公開した楽曲「4分半のマジック」のMVがSNS上で大きな反響を呼んだ。その後も、音楽クラウドファンディングサイト「muevo」で、ミニアルバム制作のための資金を募った結果、同サイトの最速時間2時間20分を記録し、達成度309%の72万円を集める。ボーカル、コーラス、各楽器の演奏やミックス・マスタリングなど、曲がパッケージされるまでにまつわる全てを1人でこなすSUKISHAは、オリジナル楽曲のほか、インストゥルメンタル、カバーなども数多くアップしており、現在はメロウなオリジナルナンバー「恋する幽霊 (The Ghost in Love)」(1stアルバム『Segment of Cakes』収録)のMVが注目を集めている。

――活動開始と同時に公開した「4分半のマジック」のMVは、大きな反響を呼びました。振り返って見て、当時はどのような心境でしたか?

SUKISHA:戸惑いでしたね。その前は本名でシンガーソングライターをやっていて、泣かず飛ばずだったわけですよ。そこから、世の中の好きなものに寄せて作ってみたのが「4分半のマジック」だったんですが、MVをアップして告知したらめちゃめちゃ拡散されて。前例が上手くいってなかったので、「何がどうなっているんです……?」って感じでしたね。

――リスナーからはどのようなコメントがありましたか?

SUKISHA:「中毒性が高い」とか「めちゃめちゃかっこいい」とかですかね。戸惑っていたので、意味が分からなかったですよ。クラウドファンディングでは、知らない人が10万円コースに入れてくれたり、CDも買ってくれるし、今も不思議です。自分の立ち位置が分からない。

SUKISHA / 4分半のマジック(4 and half minutes Magic)

――ミニアルバム制作のために資金を募ったクラウドファンディングでは、「muevo」の最速時間2時間20分を記録し、達成度309%の72万円を集めました。

SUKISHA:先にお金をもらって欲しい人にだけアルバムを作ることってできないのかなと思っていたら、muevoの人から「クラウドファンディングをした方がいい」と教えられて。結果、びっくりするくらいの金額が集まりました。

――ライブの現場ではファンからリアルな声を聞くこともあると思います。

SUKISHA:ライブは基本あまり出演しないで、月に1度やるかやらないかって感じです。面白いのが、ネットで知った人たちが長野や群馬からわざわざ観に来てくれるんですよね。SNSでのフォロワーの数って、実際のライブの動員にあんまり反映されてると思っていなくて、3000人のフォロワーがいれば、3000人全員がくるわけじゃない。100人も10人も来ない。でも、知ってくれてかっこいいと思って足を運んでくれると、「すげぇ、インターネット!」と思います。

――SNSの使い方としては、YouTube Liveでトラック制作の配信も行っていますよね。

SUKISHA:人間が享受できる楽しいことって、3種類あると思っていて。1つ目が食べたり、飲んだりする“消費”。2つ目が感想を言い合ったりする“共有”だと思うんですよね。そして、最後に“生産”があると思うんですよ。ブログを書くとか、音楽を作るとか、、世の中の人たちって“生産”の楽しみを知らない人が多いと思っていて。僕はトラック制作の様子を配信することで、自分が何をやっているのか興味を持って欲しいし、DTMをやってみたいとか、音楽のことをもっと好きになってくれたら嬉しいです。

 あとは、SUKISHAで活動を始めてから2人弟子ができて、レッスン料をもらったりしているんですよ。インターネットで知り合って、それからSkypeで教えています。だから、直接は会ったことはないです。トラック制作を生配信をすることによって、それを増やせるんじゃないかっていう目論見もありますね。「4分半のマジック」でいろんなものが動き出した感じです。

――2010年から奥田民生さんは『奥田民生ひとりカンタビレ』としてライブツアー形式で楽曲レコーディングをする公演を行っていますね。

SUKISHA:民生さんは、以前からやってるみたいですね。僕も、お金を発生できるようにしたいなと思っていて。ネットショップのBASEでチケットを売って、購入者限定のYouTubeストリーミング配信にするなど、クローズドな場を設けて新しいお金の稼ぎ方を作りたいんです。インディーズで活動している人たちって、実力はあるけどお金が稼げてない人や、不本意ながら燻っている人も少なくない。自分らは音楽をやっているぞ、人生楽しいぞと思ってほしいですし、もう少し自尊心を持って欲しいんですよね。新しい勝ちパターンを出したいなと思っていて、それの一環ですね。

ーーなるほど。

SUKISHA:例えば、バンドだったらスタジオの様子を配信するのが、お金になればいいじゃないですか。以前、フレンドファンディングアプリのポルカで、「アフロにしたいです。代わりに新曲制作の限定配信に招待します」という形でやったんですよ。それは、バンドだったら「エフェクターが欲しいです。代わりにスタジオの様子を配信します」とかで成立する。新しい楽なスタイルで活動ができるな、と。CDも現場レベルでは売れるとは思うんですけど、マクロな視点で見ると買わない人が増えてるじゃないですか。バンドの売り上げがグッズとCDだけっていう状況を変えたいなとは思っていますね。

――Chance The Rapperはストリーミング配信のみで、ビルボードにランキング入りし、グラミー賞のルールを変えましたね。

SUKISHA:ドレイクの新しいアルバム『Scorpion』は、1週間で再生回数10億回超えですよ。それだけで相当儲かってるだろうし、CDを売るだけではないやり方も考えたいです。

【MV】SUKISHA / 恋する幽霊 (The Ghost in Love)

――今回『feat.』のオーディションに応募したのは、どういった部分に惹かれたのでしょうか。

SUKISHA:友達の勧めですね。音楽トレンドを作るとか、SNSを活用するという部分がぴったりじゃんって感じで。インターネット好きな人間なんで、アナログじゃなくデジタルな感じが面白いなと思いました。これはオーディションしてる側も考えていると思うんですけど、オーディションで発掘された人間が上手くいくかは分からない。音楽聴く人たちって、自分の好きなものじゃないと買わないし、どれだけお金をかけてもリスナーに刺さらないと売れないんですよね。そういう状況を踏まえた上で、新しい音楽の消費の仕方、音楽の楽しみ方をリスナーに勧めて行った方が、作り手側も楽しくなると思います。

――『feat.』の審査基準はどれだけSNSでバズらせるかが鍵になりますが、なにか作戦はありますか?

SUKISHA:ほかの人たちと比べて、自分がどういう立ち位置にいるのかを考えています。若くもなければ、外見にアドバンテージがあるわけでもない。それにバンドでもないし、集団でもなければ英語が喋れるわけでもない。ただの31歳のおっさんなわけですよ。どうやって一般リスナーの心を掴むかって言ったら、音楽を作るしかないじゃないですか。音楽を作りまくってやりますよ。オリジナルの音源を作ったり、カバーしたり、いろんなことをやりたいと思います。というか、それしかない。やることはシンプルに、曲を作ります。実際にそれで勝ち取ったものがあるわけだから、自分を信じてやっていくだけです。

――インターネットでは大半が可視化されているので、どれだけバズったかが分かります。

SUKISHA:でも、TwitterのRTとかいいねってタダじゃないですか。だから、あまり期待もできないなって思ってます。いいねをされたからといって、その人が自分のファンというわけではないですし、可視化されることで安心できるし、みんなが評価してくれているのが分かるけど、それが確実ではないなとは思っています。

――先ほど「4分半のマジック」は、「世の中の好きなものに寄せて作った」とおっしゃっていましたが、トレンドに関してはどう捉えていますか?

SUKISHA:基本的には他人に興味があるので、Twitter上でMVが流れてきたら絶対見るし、話題に上がっているのが、どんなものなのかは見に行きます。でも、自分のやりたいことだけをやっていても、ファンがついてきてくれない場合も多いですし、自分を見てくれている人間を的確に刺す必要があって。それには歩み寄りや分析が大事だと思いますね。以前、シンガーソングライターとSUKISHAの活動の間で、アニソンカバーをしていた時期があって、『けものフレンズ』の「ぼくのフレンド」はニコニコ動画で15万回再生されて、めちゃくちゃバズったんですよ。その頃の曲を今のSUKISHAのアカウントで上げても、そんなに反応はなくて。やはり、自分やコンテンツを見ているターゲットは何者なのかっていうのを想定して投げないとダメなんですよね。きっと、そこを考えるのがトレンド作りなんだろうなと思っています。

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葉山柚子「新しい人に応援してもらうための努力が必要」

 葉山柚子は、ライブ配信アプリ「イチナナ」で9万人のフォロワーを持つ人気の17ライバー。同じライブ配信アプリ「Uplive」でも中華圏から絶大な人気を誇っており、日本語と中国語を交互に使い分けながら、一人ひとりのコメントに応えていく親しみのある配信が人気の理由だ。『feat.』ファイナリスト進出にあたり、葉山はおよそ2カ月に渡る『葉山柚子の挑戦!!日本一周フォロワー10万人の旅♪~私らしい音楽を見つける為に~』と題した、日本一周の旅を現在敢行中。Instagram、Twitter、YouTubeなどで、旅の模様が随時アップされている。

ーー葉山さんは、ライブ配信アプリで多くのフォロワーを獲得し、約2年間毎日ライブ配信を行ってきました。まずは、配信を始めた理由から教えて下さい。

葉山柚子:最初は「Uplive」で配信をスタートし、知り合いの方に勧められたのがきっかけでした。現在「イチナナ」では約9万人、「Uplive」では、中華圏の方も多く約40万人の方にフォローしていただいています。始めた頃は1日1回の配信で5時間放送することもあったので、それが応援してくれるきっかけだったのかなと思います。当初はトーク中心の配信がメインだったのですが、ファンに向けた曲を歌ったり、メッセージを紙に書いたり、ファンと一緒に遊べるゲームやコンテンツをどんどん取り入れていきました。周りの方にも支えて頂き、試行錯誤しながら一生懸命やってきましたが、「あんな子がこんなことするんだ」ってファンの方にも喜んでもらえていたと思います。毎日配信をしているとどうしても飽きられてしまうので、常に新しいことに挑戦するようにしています。

ーー今はどのくらいの時間配信を行っているんですか?

葉山:今は毎日2時間くらいの配信をしています。大体1万から2万人の方に見ていただいていますが、多いときは3万人、4万人に見ていただくこともあって。こちらからは見えないのであまり実感はないのですが、改めてその人数を想像すると自分自身とても驚いています。

ーー『feat.』ではどんな配信を?

葉山:愛犬のクロエと一緒に「日本一周フォロワー10万人の旅」に出ます。基本的にはInstagramを中心に運用していくのですが、Twitterのフォロワー数も一緒に増やしていけたらなと思います。このオーディションのグランプリになるために、初めてギターでの弾き語りに挑戦しますし、この旅の中でアーティストとしての葉山柚子を見つけたいです。もちろんライブ配信も行いますし、YouTubeにも動画をアップしていく予定です。

葉山柚子 マイナーコード MV

――なるほど。実際に自分の足でファンに会いに行って着実に数字を重ねていくと。

葉山:ライブ配信を見てくれる方々が日本全国にいるので、ファンのみなさんに会いに行く良いチャンスだと思っています。旅の道中でギターを練習し、各地で路上ライブに挑戦したいです。でも、これまで行ったことのない地域にも行くので、配信を見ている人や地域の方々に助けを求めることもあると思います。本当にきつくなった時は、「今どこどこにいるから、来てー!」って呼びかけるかもしれませんね(笑)。

――ゴール地点は決めているんですか?

葉山:明確なゴールは決めていませんが、ギターを背負いながら富士山に登り、ラストは地元の神奈川で自分を見つめ直します。あと、これは番外編的な感じですが、9月には台湾にも行く予定です。

――葉山さんは『feat.』のファイナリストとして、SNSでバズらせるための作戦はどう考えていますか?

葉山:背中にQRコードを貼ったオリジナルTシャツを着て、とにかく一人でも多くの人に会い「フォローしてください」とお願いします。「会ったことある」「見たよ」っていう一つひとつの出会いが、私がこの先SNSでバズったときに、大きなアドバンテージになると思っています。

――ライブ配信アプリで、フォロワーが増えたと感じたアピールの仕方はありましたか?

葉山:台湾の曲を歌ったりしたことで台湾のフォロワーが増えましたし、それから継続して見てくれるようになって。あとファンの方の名前を覚えてコミュニケーションを取ったり、曲のリクエストがあれば次の日に歌えるように準備したりと、そういう努力はしていました。

――優勝賞金はどのように使う予定ですか?

葉山:優勝賞金を使ってセブ島でMV撮影をしたいです。オーディションの後は日本一周で私のことを知ってくれた人も増えていると思うので、見ている人にとってもご褒美的な配信ができればな、と。私は基本的に部屋の中で配信をしているので、たまに外に食事に行ったり、表参道とかを散歩していると、みんなも喜んでくれるんですよ。私にとっても、ファンにとっても嬉しい配信になるんじゃないかなって。

――葉山さんの目標とするアーティスト像を教えてください。

葉山:ジブリの音楽が好きで、目標はジブリの主題歌を歌うことなんです。特に、「さよならの夏~コクリコ坂から~」「いのちの記憶」の2曲が好きですね。世界観はシンプルなんだけど、歌詞の中に様々な世界観や人、ストーリーがあって、いろんな解釈ができるのも好きなんですよ。私もみんなで一緒に楽しめるような曲を歌っていきたいですし、いい意味で“学芸会”みたいなライブをやってみたい。歌うだけのライブじゃなくて、色んなことを詰め込んだエンタメショーにできたら良いなって。やっぱり、ファンが楽しんで、元気になってくれるようなステージをやりたいので。

ーー『feat.』ファイナリストとしての意気込みを聞かせてください。

葉山:この旅ではライブ配信を通して、弾き語りでの路上ライブだったり、ファンの人とのふれあいをリアルタイムで見せられると思っています。その出会いを通じて楽曲を制作していく過程も配信できます。それに台湾を始めとした海外のファンからもグローバルに応援してもらえるというのも私の強みだと思うので、ほかの人に負けない一生懸命な部分を武器に、できることは全て、全力で挑戦していきたいです。チャンレンジがテーマなので、日本一周の中で『各地の日本一〇〇!』にも挑戦し、新しい葉山柚子を見せていきたいです。

■葉山柚子
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夜中出社集団「バズを起こすことは隙間産業に近い」

 ボーカル3名(まさ、ネギ、P助)、マネージャー兼DJ(おばけ)、総合プロデューサー(ゆとり社長)、サウンドプロデューサー(久保木凌多)の6人で構成される夜中出社集団。アカペラアイドルグループ ・The Snatch!の元メンバーでもあり、株式会社yutoriの代表取締役であるゆとり社長がメンバーを集め、昨年結成したBlue Flamingoを前身にしたグループだ。クラウドファンディングで目標金額を大きく上回る71万円を調達するなど、コアなファンを巻き込みバズを起こしてきた6人は、グループの実態やコンセプトなど多くがいまだベールに包まれている。

――まずは、グループを結成したきっかけから教えてください。

ゆとり社長:去年の4月に僕がメインになって結成しました。もともと学生時代にバンドを組んでいて、ファンにチヤホヤされて少し天狗になっている中、いざ社会人になってみたら全く自分の実力が通用しなくて……。その経験をきっかけに、僕と同じような境遇の人に向けてなにかできることがあるんじゃないかと思いはじめて、もう一度音楽をやってみようと夜中出社集団を始めました。

――ゆとり社長さんやP助さんは、The Snatch!として活動されていたんですよね。

ゆとり社長:アカペラアイドルグループで歌っていました。そこから、元グループのメンバーでもあるP助をはじめ、Twitterで面白そうだと思って声をかけたネギを中心に集まったのが、前身のBlue Flamingoです。もともと、アカペラからスタートしたグループだったので、人を癒すことができるハーモニーが僕らの強みになると思っていて。夜寝る前に現れてみんなが快眠できるようなお休みソングを歌うアカペラ集団として活動を始めたのが、ちょうど去年の夏頃です。

万歳!働き方改革!/夜中出社集団

――11月にCAMPFIREでクラウドファンディングを開始し、1カ月で目標の30万円を大きく上回る71万円を集めました。

ゆとり社長:お休みソングを生配信で届けたかったんです。毎日、みんなが疲れている夜10時半に、携帯を覗くと僕らがいて、その日のストレスを対話しながら浄化する。さらに、それを曲にできる存在になりたくて。各々で配信することはできますが、グループで毎日夜の10時半に集合するのって、一緒に住む以外の選択肢以外考えられなかったんです。一軒家に住むとなると、初期費用に60~70万かかるので、クラウドファンディングをすることにしました。クラウドファンディングは、応援してくれている人たちの熱量も高まるので、今後活動を続けて行く上での戦略にもなるかな、と。

――クラウドファンディングを始めた時のファンの反応はどうでしたか?

ゆとり社長:The Snatch!の休止から2年くらい経っていたので、目標金額は初期費用にして低めの30万円で見積もっていたんです。でも、僕らの予想以上の反響があって、スタートから3日で30万円を突破し、最終的にはお釣りがくるくらいの額になってました。

――当時を振り返って、71万円集まった理由はどこにあると思いますか?

久保木:The Snatch!の時に応援してくれたファンが、2年間離れずに根強く待ってくれたのが大きいですね。

痛勤リーマンズ/夜中出社集団

――そこから夜中出社集団にグループ名を変えて、『Feat.ソニーミュージックオーディション』に応募しファイナリストに選ばれた。

おばけ:みんなで仕掛けや戦略、コンセプトを固めていったのですが、夜中出社集団を価値あるアーティストにしていこうという方針に決まって。今回のオーディションのコンセプトである「自分たちをプロデュースできるアーティストを育てたい」という部分と僕らの方針は親和性があるなと感じたので応募しました。

ネギ:ゆとり社長はSNSの使い方が上手なんですよ。

ゆとり社長:プレッシャーをかけるのはやめてくれ(笑)。僕は株式会社yutoriという会社も運営していて、「古着女子」というInstagramのファッションアカウントを作ったところ、約半年で13万人くらいフォロワーが付いたんです。SNS上でみんなが求めているものを察知して、そこにアウトプットしていくことも得意で、The Snatch!の頃に配信した動画も5000~6000のいいねが毎回付いていました。みんなが求めているものに自分の好きな要素を上手く混ぜて、コンテンツを作ることには自信があります。

――ゆとり社長さんの中で、SNSでのバズの起こし方や方法論はありますか?

ゆとり社長:一言で言えば、隙間産業に近いです。意外性のあるものや誰もやったことのない組み合わせを出すと反響は良いですね。例えば、「インスタ×ファッション」はすでにやってる人がたくさんいるけど、「インスタ×古着」をやっている人はいなかったから「古着女子」はバズったし、The Snatch!だったら「アイドル×ダンス」「アイドル×バンド」はあったけど、「アイドル×アカペラ」は誰もいなかったんです。アカペラをやっている人は大人しい人が比較的に多いんですよ。僕は赤髪とか派手なキャラが取り柄だったから、アイドルとして活動することで新鮮さもあったし、より広い層にリーチできたのかなって。今回のオーディションでもその掛け算をどう作るかが重要かなと思っています。

ネギ:今、このグループにおける掛け算はどうお考えになってるんですか?

ゆとり社長:なんでお前が聞くんだよ!(笑)。掛け算として言えるほど、まだ完璧に整ってはいないので、仮説を出して探っていく感じかな。一旦、7月にコンテンツを出してその反響を見てから、答えが出ればいいかなって。コンセプトや企画はもちろん、どんな人にどう広げてもらうのか、それを行うための仕組みはすべて考えています。ただ、それが上手く機能するのか……楽曲面のクオリティや方向性はSNSの施策とは別になるので、そこはチームとして団結して作り上げていくポイントになると思います。

――今、言える範囲ではどのようなものを思い描いていますか?

ゆとり社長:僕たちは代弁者だと思っていて。夜中出社集団と名乗ってますけど、メンバー全員が会社とか社会の中では搾取されている側の人間というか。どうしようもない理不尽とか圧力によって、好きでもないことを強いられている人が感じる違和感っていろんなものがあると思っていて。その人たちの気持ちを代弁していく存在になりたいんですね。イメージはグラフィティーアーティストのバンクシーの思想に近くて、政治的な風刺を曲にできれば、と。

――ボーカルの3人はどうお考えですか?

ネギ:揶揄的で、めちゃくちゃポップっていう部分では、モータウンに近い音楽になるかもしれません。

久保木:社会風刺のメッセージを、例えばヒップホップのようなクールなサウンドに乗せるのではなくて、あえてポップなサウンドに乗せることによって、メッセージをそこまでシリアスにしない、ちょうどいい投げかけができるかなって。

ネギ:聴く側が「そうだ! そうだ!」となるのではなく、「うわ、確かにそうだわ」っていう反応がほしいですね。

P助:僕はこれからライブで人前に立つことも多くなっていくと思うので、観てくれる人の楽しめる空間が作れたらいいなと思っています。

まさ:パフォーマー各々の役割があった上で、お茶目な、わちゃわちゃしている感じを出していけたらいいですね。誰でもできる簡単な振り付けでファンのみなさんと一緒に踊ることで一体感を出したりとか。

ネギ:個人的な考えですが、ボーカルグループの場合は歌やパフォーマンスの面で個性のある人はあまりいないと感じていて。僕らの場合は一人ひとりの個性を引き立てていけたらと考えています。

――最後に、『Feat.ソニーミュージックオーディション』への意気込みを聞かせてください。

おばけ:みんなが興味関心を持って拡げたくなるものを作るという点においては、他のファイナリストの中でも僕らが一番長けていると思うので、ほかのグループよりも大きなバズを作っていけるよう頑張りたいですね。

ネギ:支援金の300万円を使ってバズるものが作れなかったら、この先も一生作れない。

ゆとり社長:使えるお金が今までで一番大きいので、音楽というマーケットでフルに使っていきたいです。ネギが言ったように僕らがこの3カ月で面白いものを出せなかったり、今後に確信を持てない事態に陥ってしまったら、このグループは終わると思っています。

■夜中出社集団 関連リンク
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(取材・文=渡辺彰浩)

■番組概要
『Feat.ソニーミュージックオーディション』
GYAO!  毎週金曜日配信
MUSIC ON! TV(エムオン!)毎週木曜日放送
※MUSIC ON! TV(エムオン!)は一週遅れての放送。
出演者:平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)、池田美優

番組視聴/オーディション特設ページはこちら

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■関連リンク
Feat. ソニーミュージックオーディション公式HP
Feat. ソニーミュージックオーディションTwitter

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