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おとな向け映画ガイド

今週のオススメは『すみっコ…』を含むこの4作品。

ぴあ編集部 坂口英明
19/11/25(月)

イラストレーション:高松啓二

この週末に公開の作品は30本(ライブビューイングを除く)。全国のシネコンで拡大上映されるのは『ドクター・スリープ』。ミニシアターや一部シネコンなどで上映される作品が29本です。この中から、おとなの映画ファンにオススメしたい3作品と、上映中の話題の1本をご紹介します。

『ドクター・スリープ』



スタンリー・キューブリック監督が1980年に発表したホラーの名作『シャイニング』。リゾートホテルの冬季閉鎖中に管理人として雇われた売れない小説家ジャックが、次第に狂っていき、最後は妻と息子を襲う……。古いゴシック調のホテルの不気味さ、主演ジャック・ニコルソンの狂気、映像的にも恐ろしく、記憶に残る作品でした。これは、その続編。何とか生き残った、あの超能力=シャイニングの持ち主、ジャックの息子ダニー(ユアン・マクレガー)が、惨劇のトラウマをかかえたまま40代となり、そして因果は巡る……、というお話です。

新たに登場するのは、ダニーと同じシャイニングを持つ少女アブラ(カイリー・カラン)、そして彼女のような超能力保持者を狙う謎の集団とその女ボス、ローズ・ザ・ハット(レベッカ・ファーガソン)。サイキッカーが入り乱れての超絶バトル。最終決戦の場所は……、あのホテル……です。ダニーの脳裏にやきついているさまざまなイメージや、前作とよく似た雰囲気の役者たちもでてきます。

前作を映画ファンは大傑作と評価しましたが、原作者スティーブン・キングは気に入らず、自身で別にTV映像化。が、このTV版のできがいまいちで、と両巨匠の対立はいまや伝説です。キングは2013年に小説の続編を書くのですが、その映画化には、キューブリックの遺族とキングの両者を納得させる必要がある、そういうハードルを越えてきた続編です。キューブリックの『シャイニング』をリスペクトしつつ、そのファンをうならせ、『IT』などのキング信者も満足させる、その課題はクリアできるかー。

『ファイティング・ファミリー』



全米のCATVなどで大人気のプロレス、WWE。イギリスからひとりその世界に飛び込んだ実在の女性、リング名「ペイジ」の、異色スポ根映画です。まず、彼女の家族にびっくりします。イギリス北部の町で、レスリング・ジムを営んでいるのですが、ヘビメタのオジー・オズボーン一家みたいな、ド派手で本音まるだし、やや露悪趣味。モヒカンで髭面の親父、唇にピアスの母親、口をひらけば4文字言葉の連発です。WWEはそんな彼らのあこがれの総本山。家族の夢を背負い、ペイジはWWEのファームNXT(入門クラス)をクリアし、晴れの舞台への道を歩むのです。

WWEの大スター、ドウェイン・ジョンソンが本人役で特別出演し、彼女の道をアシストするのですが、その存在感たるや圧巻です。ペイジを演じるフローレンス・ビューはレスラー役は初体験。WWEは、もちろん完全ガチンコではないにしても、体を張った試合ぶり、高度なテクニックと体力を身につけるための訓練の様子も生半可なものではありません。そんな舞台裏が覗けるのも魅力ですが、実は、ペイジを支える家族のドラマも重要な要素。『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』などの太っちょコメディアン、ニック・フロスト演じる父親を始め、本音で生きる母、家族思いで不器用な兄。やや乱暴で、そして泣かせる人情劇でもあります。

Fighting with My Family
(C) 2019 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC., WWE STUDIOS FINANCE CORP. AND FILM4, A DIVISION OF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

『幸福路のチー』

SMAPの「あのころの未来に……」の歌詞が印象的なあの歌(『夜空ノムコウ』)を思い出しました。アメリカに暮らす現代の台湾女性が、祖母の死で久しぶりに故郷に帰り、生きてきた道を振り返る。少女から40過ぎのオトナになるまでを描いた台湾のアニメ映画です。彼女が何を考え、どんなふうに生きてきたか。そこに、台湾の現代史が織り込まれます。

1975年の4月5日、国民党の蒋介石総統が亡くなった日に主人公チーは生まれます。6歳のときに、田舎から、台北郊外の「幸福路」という町に両親と引っ越し、小学校に入学。ランドセルに黄色い帽子、チーの姿はまるでちびまる子ちゃんです。いじめっ子、お金持ちの子、さまざまな事情のクラスメートがいます。仲良くなったのは駐留アメリカ軍人を父に持つ金髪のハーフ、ベティと、わんぱくなエンでした。3人は日本のアニメ『ガッチャマン』ごっこをしたり、子供ながらに真剣に夢を語りあっていました。

38年も続いた戒厳令が終わり、民主化のなかで青春時代を過ごしたチー。いまは決してうまくいっていないわけではないけれど、これでよかったのだろうか……何かがちがう。人生のなかで、ふと立ち止まるとき、故郷の景色が浮かんできます。それでも日々は続きます。水彩画のような温かいタッチで、どこか我々にとっても懐かしく、心が和む作品です。

首都圏は、11/29(金)からシネマカリテほかで公開。中部は、12/21(土)から三重・進富座、1/3(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、11/29(金)から京都シネマ、1/24(金)からテアトル梅田ほかで公開。

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

最後の一本は、上映中の作品です。いま、大変な話題になっています。実は、小学生対象のアニメと考え、ほぼスルーしていた映画でした。それが11/8に公開されると、大作映画目白押しのなか、興行ベストテンの3位に登場。2週目は動員50%増で2位に躍進する大ヒットとなりました。内容も、ぴあの初日満足度調査でもダントツの1位という評価です。『この世界の片隅に』『カメラを止めるな!』『若おかみは小学生』『愛がなんだ』などと同じように、大掛かりな宣伝ではなく、SNSなどで作品のよさが拡散した映画です。

観て参りました。遅ればせながらですが、オススメ致します。

「すみっコぐらし」、不勉強にも知りませんでした。リラックマやたれぱんだのような、いわゆる癒やし系のゆるキャラです。その初めての映画化。映画でも最初にキャラを紹介してくれます。ひとみしりのしろくま、自信のないぺんぎん、とんかつのはじっこ、えびふらいのしっぽ、はずかしがりやのねこ……。みな、引っ込み思案で「すみっこ」が好き。すみっこにいると、おちつくという存在たちです。

その「すみっコぐらし」たちがある日、お昼にでかけた喫茶店で、世界のおとぎ話が入った飛び出す絵本を見つけます。それからは、すみっコキャラが、桃太郎やマッチ売りの少女、人魚姫といった絵本の世界と一体となっていく、冒険もあり、感動もある、ファンタジックなストーリーです。脚本は小演劇界注目の「ヨーロッパ企画」角田貴志。ナレーションは井ノ原快彦と本上まなみが担当しています。

実にかわいい。映画が評判になったのは、そのかわいさと、大人も泣ける、といううわさです。私はひねくれているので、泣けませんでしたが、自称引っ込み思案なので、この「すみっこが好き」な感じはすごくわかります。全国のイオン系のシネコンで公開中です。このぶんだと、お正月まで上映されると思います。お近くに小学生の女のお子さん、またはお孫さんがおありなら、ぜひご一緒にご覧になるのをオススメします。きっと、映画のあとの会話が楽しいものになると思います。都心の映画館では、おひとりのおとなのお客さんも多いそうです。この映画を楽しむポイントは、感動とか、感激とか、あまり多くを期待しないことです。ひとりでのんびり、ぼんやり観るのが一番かも。でも人気ですからネット予約はお忘れなく。

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