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第27回読売演劇大賞受賞の橋爪功「誇らしいような、ドキドキした気持ち」

ナタリー

20/2/29(土) 11:00

第27回読売演劇大賞贈賞式より。

第27回読売演劇大賞の贈賞式が、昨日2月28日に東京・帝国ホテル東京で実施された。

読売演劇大賞は、演劇文化の振興のために1994年に創設された賞。今回は、大賞・最優秀男優賞に「Le Pere 父」の演技が高い評価を得た橋爪功、最優秀作品賞にNODA・MAP「『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera」、最優秀女優賞に神野三鈴、最優秀演出家賞に松本祐子、最優秀スタッフ賞に服部基が輝き、杉村春子賞を菅田将暉、芸術栄誉賞を劇団四季のミュージカル「キャッツ」、選考委員特別賞を岡田利規が獲得した。受賞者には正賞としてブロンズ像・蒼穹、副賞として大賞・最優秀演出家賞に200万円、このほかの最優秀賞ならびに杉村春子賞、芸術栄誉賞、選考委員特別賞にそれぞれ100万円が贈与された。

読売演劇大賞では、各賞の最優秀賞を前年受賞した人物が、翌年の同賞プレゼンターを務める。杉村春子賞プレゼンターの松下洸平は「(菅田が評価された)『カリギュラ』は東京千秋楽を拝見しましたが、感動を飛び越えて、胸が痛かったです。そういう作品に巡り合えること自体、たくさんあることではありません。なので、演出の栗山民也さん、そして菅田将暉さんには完敗という気持ち」と称賛を贈る。菅田は「普段は作品が終わるとすぐに(セリフを)忘れるんですけど、『カリギュラ』は未だにこびりついていて。それくらい、体と心に残っている作品に出会えたことに、本当に感謝しています」と語り、「(台上からの)この風景を胸に、お芝居できることにただただ感謝しつつ、自分なりに楽しく感謝してやっていきたい」と意気込みを述べた。

選考委員特別賞を受賞した岡田は、「消しゴム森」ニューヨーク公演のため贈賞式を欠席。岡田はビデオメッセージで、まず出演者11名にニックネームで呼びかけ「タイ社会の現実と闘いながら芸術を実践している皆さんの、おそらくはそこに由来しているのでもあろうセクシーな存在感が、『プラータナー:憑依のポートレート』という演劇をより特別なものにしました」と感謝を口にした。さらに原作者のウティット・ヘーマムーン、翻訳の福冨渉、セノグラフィー・振付の塚原悠也へも感謝の言葉を重ね、さらに「何より喜ばしいのは、タイの小説を原作とした、タイ人俳優による本作が、日本の演劇のコンテクストの中で評価されたことです。このようなことが、もっとたくさん起これば」と呼びかけた。

最優秀スタッフ賞を獲得した服部は、「チャイメリカ」と「組曲虐殺」での照明が評価された。服部は「私は出演者にスポットを当てる仕事をしているので、自分に光が当たっているのはむずむずします……(笑)」と話し、会場の笑いを誘う。また受賞に繋がった2作品が共に栗山民也の作品であることに触れ、「栗山さんは劇場に入る前から、照明を含めた視覚の効果や作用をかなり緻密に組み立てる演出家。劇場に入ってもそのハードルは高いので、彼の世界観をもう1つ深くできたらという思いでやっておりました。それぞれの作品のスタッフの代表として、こういった賞がいただけたと思っております」と笑顔を見せた。

最優秀演出家賞のプレゼンターを担当する栗山民也は、受賞者席を見やり「友達がたくさんいてうれしいです(笑)」と話したあと、「昨年亡くなった中村哲さんが、ご自身のコラムや本に『誰かのために』という言葉を必ず書かれていたのがすごく印象的で。それが今、一番大事なことなんじゃないのかなと思っています」と発言。最優秀演出家賞に輝いた松本は、横山拓也の戯曲「ヒトハミナ、ヒトナミノ」と、クロアチア出身の劇作家テーナ・シュティヴィチッチの戯曲「スリーウインターズ」の演出が評価されたことに「この2人の劇作家との出会いが、私をここに連れてきてくれました。どちらも人の心の深いところにある痛みに敏感に反応し、そこをえぐって描かれた作品です。この賞を励みにして、人の心に届くような、何か価値観に刺激を与えられるような作品を、地道に作っていければ」と思いを語った。

最優秀女優賞のプレゼンテーターとして登壇した蒼井優は「神野さんは私にとって希望の女優さん。昨年、私が最優秀女優賞を獲ったとき、今日身につけているネックレスを神野さんからいただいたんですけど、『来年は優から(ブロンズ像を)受け取るのは私しかいない』と張り切ってくれて(笑)。そんな素晴らしい先輩がいることに、希望を感じます。これからも必死に神野さんに食らいついていけたら」と話し、神野にブロンズ像を渡す際には、熱い抱擁を交わした。神野は「大好きな優から渡してもらえて幸せです! また、今日来られなかった井上芳雄くんから『こんなときだからこそ、演劇の素晴らしさを、そして作り上げた人たちの努力を讃える夜を過ごしてください』とメールがありました。今日、思い切りその時間を過ごしたいと思います」と笑顔を浮かべた。昨年上演した「組曲虐殺」については「大切な作品」と述べ、「初演は井上(ひさし)先生の本が遅くて(笑)、再演は井上先生を喪ったことで記憶がありません。なので今回の再々演で初めて作品として向き合えた気がします」と振り返る。

最優秀作品賞のプレゼンテーターであるケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)は、新型コロナウイルスへの危機感が高まる現状を「非常に異常な事態。普通に上演できることは当たり前じゃないんだな、ということを痛感します。どうなるかわからないので、不安ではありますが、これを乗り越えて楽しめるものをみんなで一緒に作っていきたいと思っています。ぜひ応援してください」とコメント。「One Green Bottle」のニューヨーク公演のため贈賞式に参加できなかった野田秀樹の代理で、「『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera」出演者である松たか子がブロンズ像をKERAから受け取った。松は「野田さんが日本にいないばっかりに、私が受け取らせていただきました(笑)。野田さんのインスピレーションと、“Q”が遺したアルバムをもとに、ワークショップや稽古、そして本番を通して、ずっと進化することができた作品だと思います。これからも、観てよかったと思う芝居だったり、観なければよかったというほどの衝撃を持つようなお芝居が作れるよう、がんばります」と意気込みを述べた。

野田は、ビデオメッセージで、大賞を受賞した橋爪に「東京芸術劇場の芸術監督として『Le Pere 父』の台本を読んだ時、『これ、橋爪さんに絶対いいな』と思ってお願いしたのですが……もしあの時そう思っていなければ、『Q』が大賞を獲ったのかなって(笑)」と話し、会場を笑いで包んだあと、「いつも素晴らしいキャスト、スタッフさん、アンサンブルに囲まれて作品を作っていますが、『Q』は特に時間をかけたこともあり、非常に素晴らしいハーモニーが生まれたのでは。『Q』に参加してくれた皆さんに感謝します」とコメントした。

ミュージカル「キャッツ」で芸術栄誉賞を受賞した劇団四季からは、吉田智誉樹代表取締役社長が登壇。受賞を「亡くなった浅利慶太に聞かせてあげたかった」と話し、「今回、現役の我々というより、先輩方が受賞されたんだなと思います。試しに『キャッツ』に関わった俳優さんとスタッフさんの数を数えてみたら、それぞれ500人ずつおりまして、こんなにもたくさんの方々が『キャッツ』を支えてきたのだなと気付きました」と感慨を述べた。

大賞と最優秀男優賞を受賞した橋爪は「年甲斐もなく、誇らしいような、ドキドキした気持ちでいっぱいです」と語りつつ、「野田がこの作品を紹介してくれましたが……野田は今、ニューヨークにいます。でも、この賞のために(『Le Pere 父』の演出家)ラディスラス・ショラーはフランスからわざわざやってきています。彼に最優秀作品賞をあげたいのですが、今から変更はできないものでしょうか! 野田は不届きなやつです!(笑)」と冗談交じりに発言し、会場の笑いを誘った。そして「野田のおかげでフロリアン・ゼレールが書いたこの戯曲に出会えました。この作品を通して、いろいろな意味で、向こうの芝居を日本でやっていいんだという手応えを感じました」と述べ、「最後は女房の話なんですけど。電話連絡があった時に、うちの家内が満面の笑みで『よかったね、お父さん』と言ってくれました。それが一番うれしかったです」と締めくくり、会場を温かい拍手で包んだ。

第27回読売演劇大賞

大賞・最優秀男優賞

橋爪功

最優秀作品賞

「『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera」

最優秀女優賞

神野三鈴

最優秀演出賞

松本祐子

最優秀スタッフ賞

服部基

杉村春子賞

菅田将暉

芸術栄誉賞

「キャッツ」劇団四季

選考委員特別賞

岡田利規「プラータナー:憑依のポートレート」

優秀作品賞

・「Le Pere 父」
・「人形の家 Part2」
・「スリーウインターズ」
・「A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』」

優秀男優賞
菅田将暉、平田満、水谷貞雄、山西惇

優秀女優賞
枝元萌、Crystal Kay、増子倭文江、若村麻由美

優秀演出家賞
瀬戸山美咲、野田秀樹、蓬莱竜太

優秀スタッフ賞
笠原俊幸、鈴木光介、塚原悠也、土岐研一

※「Pere」の1つ目のeはアクサングラーブ付きが正式表記。

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