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ポスターデザインから舞台のロケ地まで 中国とジブリ作品の歴史を紐解く

リアルサウンド

20/7/24(金) 8:00

 日本で映画館が約2カ月間の休館期間を経て6月から再開されたという話を聞き、中国にいる自分としては大変羨ましくなり、こっちは今年初めから今も映画館が再開してないんだと「コロナマウント」を取りたくなった。中国はこの辺りがまだ神経質で、これまで何度か映画館の条件付きの再開が発表されたが、正式な再開にはまだ至っていない。先日、感染予防対策を行うという前提の下で、感染低リスクエリアの映画館の営業を7月20日から再開するという発表があった。現時点で新作の上映は報じられておらず、主に国内の有名作品を再上映するらしい。

【写真】『金曜ロードSHOW!』ジブリ作品放送ラインナップ

 日本では、6月下旬から『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ゲド戦記』の4作のジブリ作品が再上映されている。映画館で新作を上映する本格的な再開の前に、国民的映画で客足を回復させるという方法は正しいと思うし、中国の映画館再開の際のヒントになれば幸いだ。

 ジブリ映画は中国でももちろん人気のはずだが、スタジオジブリの公式ホームページによると、スタジオジブリの作品が中国大陸で正式に上映されたのは、2018年12月に上映された『となりのトトロ』が初めてだという。そして上述の4作品のうち、『千と千尋の神隠し』がその2作目として2019年6月に上映された。面白いのは、『天空の城ラピュタ』や『風の谷のナウシカ』を1990年代に上海などの映画館で観た、というコメントがネットにあることだ。

 調べてみると、80~90年代にトトロ、ナウシカ、ラピュタが中国で上映されたのは事実のようで、1992年には日中国交正常化20周年を記念して『となりのトトロ』が上映されている。このことがスタジオジブリに忘れられているのか、それとも異例扱いされているのかは不明だ。また上映がなくとも、中国ではDVDや配信などさまざまな形でジブリ作品は観られ続けてきた。だから日本人と同様に子どもの頃からジブリ映画に接してきた中国人にとって、2018年の『となりのトトロ』が中国大陸での初正式上映というニュースは意外に思っただろう。

■特殊な中国版ポスターのデザイン

 『となりのトトロ』および『千と千尋の神隠し』の中国公開は日本でも話題になったが、その大きな理由の一つは中国版ポスターのデザインにある。中国人デザイナー・黄海によるこれらのポスターは、映画のストーリーをすでに知っている者に対して作品の魅力を改めて訴え掛ける内容になっている。

 これらのポスターを見ると、中国ではジブリ映画の知名度が非常に高く、一昨年と昨年の「初上映」は過去に何らかの形で映画を見た大多数の人々に対する「再上映」的な意味を持つことが分かる。子どもの頃に『千と千尋の神隠し』を観た人が大人になって再び、あるいは自分の子どもを連れて観に行くのは、日本と似ているかもしれない。

 中国のポスターといえば、『千と千尋の神隠し』には実写版ポスターがある。中国語吹き替えを担当した俳優らが映画のワンシーンを再現しており、千役の周冬雨がハク役の井柏然に手を引かれて走るシーンや、カオナシ役の彭昱暢と一緒に列車に乗っているシーンなどがある。実写版ポスターは中国では賛否両論だったが、もし『千と千尋の神隠し』を舞台で上演するならこういう絵になるだろうかと思わせた。

 興味があれば、中国語になるが以下のサイトでポスターの比較を行っているので見てほしい(参考:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1636597467882664007&wfr=spider&for=pc)。

■中国にもジブリの舞台

 中国での『千と千尋の神隠し』人気を表すエピソードの一つに、ロケ地の誤解がある。本作の重要な舞台である油屋のモデルとなった建造物やロケ地は複数あり、特定の場所は存在しないと言われ、日本でも多くの建造物がモデルとして注目された。その中で中国でモデルとして噂されているのが、重慶市にある洪崖洞だ。古風な石造りの建造物が密集し、夜は赤やオレンジのライトが全体に灯り、夜景が特に人気の観光用商業施設だ。いくつもの建物が重なった構造が油屋に似ているとされ、中国ではここも『千と千尋の神隠し』のモデル地の一つと思われているようだ。実際、洪崖洞は重慶の伝統的な建築様式である「吊脚楼」を現代に再現したもので、映画との関係はない。そもそも洪崖洞は2006年に完成しており、2001年公開の映画が参考にできるはずがない。だが、昨年の中国上映の際に洪崖洞は再び話題になり、今でも映画の関連場所として誤解する人が少なくないようだ。また、モデル地ではないと知られながら、油屋によく似た場所としても愛されているらしい。

 日本の映画館が6月下旬から営業を再開し、ジブリ4作品が再上映されるとともに『千と千尋の神隠し』が週間興行成績の1位になったというニュースは中国でも取り上げられている。今のところ映画館再開の目処が全く立っていない中国だが、これを機に中国でも、ジブリの再上映は叶わないとしても、新作映画の公開とともに過去の名作映画を再上映して消えた客足を復活させてほしい。

(阿井幸作)

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