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乃木坂46の勝負作『何度目の青空か?』が担う使命ーーグループの目指す今後の姿とは?

リアルサウンド

14/10/10(金) 11:00

 乃木坂46の記念すべき10枚目シングル『何度目の青空か?』が10月8日に発売された。CDデビューから3年を迎えた今年、グループとして勝負の年にリリースされる今回のシングルはいったいどのような内容になっているのだろうか。今回は本シングルに課せられた使命と目指す目標に焦点を当て、考察していく。

10枚目の表題曲「何度目の青空か?」に課せられた使命

 今回のシングルがグループにとって重要なものであることは、単に”10枚目”という区切りのよさからではない。デビュー3年でグループとして一つの節目を迎えることはもちろん、乃木坂46を最前線で引っ張って来たメンバーが20歳前後まで年齢を重ね、アイドルとして一番成熟している時期を迎えていること、また乃木坂46にとってライバルであるAKB48グループに従来ほどの勢いが感じられないことが挙げられる。そんななかでリリースされるのがこの10枚目のシングルであることを再認識しておきたい。

 「何度目の青空か?」はリリースが決まった時点でいくつかの大きな使命を課せられることとなった。一つは出演が期待される第65回NHK紅白歌合戦に向けたシングルとなることだ。9枚目のシングル『夏のFree&Easy』は50万枚を超える売り上げを記録したものの、8枚目シングルの『気付いたら片想い』のときと比べるとシングルの勢いや反響も期待以上のものではなかった。紅白出場に向けた最後のアピールとしてこのシングルは50万枚以上の売り上げはもちろん、それ以上のインパクトをシーンに与える必要がある。

乃木坂46のファンの中で、紅白となると必ず出てくるのが、「どの曲を歌うか」というトピックだ。売り上げでいえば、今年発売した「気付いたら片想い」や「夏のFree&Easy」が有力だが、ファンの中で上がるのは別の曲の場合が多い。そのうちの一つが5thシングル「君の名は希望」である。3万人を集めた神宮公演で本編の最後を飾ったこの曲は、メンバーからもファンからも大切にされており、トップクラスの人気と評価を得ている。生田絵梨花がピアノを弾き、昨年行われた代々木公演のようにストリングスを加えれば、ほかのアイドルには出せない乃木坂46だけの魅力を見る側に感じてもらえるだろう。ところが、「君の名は希望」を披露するにはいくつかの障害がある。乃木坂46の中では人気曲なのは間違いないのだが、売上としては前のシングルである4th「制服のマネキン」からの伸びも弱く、タイアップも特になかったため世間的な認知度はそう高くない。歌番組で新曲以外を披露するときも待望論はあってもなかなか歌われることがないという実情がある。

 この「君の名は希望」をおさえて乃木坂46の代表曲として歌番組などでよく披露されるのが、2ndシングル「おいでシャンプー」である。この曲は乃木坂46が初めてオリコンシングルチャートで1位を獲得した曲であり、ライバルグループAKB48指原莉乃のソロ曲との同日発売対決で話題をよんだ曲でもある。センターが生駒から変わった今でも乃木坂46の代表曲としてメディアで披露されていることは、運営側が世間に認知してもらいたい乃木坂46のイメージがこの曲に詰まっているということだろう。また、サビの振り付けが横一列に列車のように並び前後に揺れるだけなので、カメラに1人1人の顔が抜かれやすくパフォーマンスの自由度も高いという大きなポイントもある。

では、乃木坂46らしさもあり、世間的な知名度もあるこの曲で決まりかというと、少し気になることがいくつかある。

まず、10thセンターの生田、8~9thセンターの西野七瀬がこの曲では3列目である点。2014年の締め括りに2014年センターを務めた2人がいないのは少し寂しい。また、「おいでシャンプー」の選抜メンバーは現在の10thシングルと選抜メンバーが16人中7人も異なっている。今や選抜常連組となっている秋元真夏、深川麻衣、若月佑美がいないほか、兼任中の松井玲奈ももちろんいない。乃木坂46の場合、表題曲をやる際にピンチヒッターの登場はあるものの、基本的にオリジナルメンバーで披露することが多い。そうしないと、乃木坂46の中で最も重要なイベントであるシングル選抜発表の意味合いが薄れてしまうからだ。

今、上り坂にある乃木坂46の最高の状態を見せるには、結局新曲の選抜メンバーで新曲を歌うのがベストなのかもしれない。そうなった際に、新曲「何度目の青空か?」は第65回NHK紅白歌合戦への出場という課題に加え、「君の名は希望」「おいでシャンプー」という2曲に太刀打ちできる作品にならなくてはならないのである。

「青春」という「時間」を切り取るアイドルとして

 10thシングル表題曲「何度目の青空か」は、発表前からプロデューサー秋元康氏が“神曲”だと太鼓判を押すほどの自信作で、生田が初めてセンターを務める曲ということもあり、ファンから大きな期待を集めていた。かくして、リリースされた本曲は表題曲としては「君の名は希望」以来となる4つ打ちバラードになっている。サビの前と後で曲の印象がガラッと変わるのが印象的だ。シリアスでどこか不安を誘うキックとピアノの旋律で曲は始まるが、サビではティンパニの響きとともに空が開けるような歌声を聴かせてくれる。また、4thシングル表題曲の「制服のマネキン」に始まり、「世界で一番孤独なLover」「その先の出口」「ここにいる理由」、今回カップリング曲として収録されている「私、起きる。」などクラブミュージックも積極的に取り入れている乃木坂46だが、今回の曲も2度目のサビのあとからCメロにつれてEDMテイストな盛り上げからのブレイクダウンを加えている。そして最後は得意の転調からの大団円で、壮大な物語の幕が閉じられる。

 詞は秋元氏が生田を意識して作ったのがよくわかる。10thシングルから復帰した生田は復帰後のインタビューで、外からグループを見ることで「自分が素晴らしい仲間と多くの特別な経験をさせてもらってることに改めて気づいた。」と語っている。その思いを代弁したこの曲から、乃木坂46として必死に駆け抜けてきた中で忘れていた何かを立ち止まり再確認し、新たな気持ちで出発するセンター生田の決意を感じることができる。

 また、基本的に表題曲は「きみとぼくのストーリー」がテーマになることが多い乃木坂46だが、今回は他者との関係を歌った曲ではなく、自分自身の今を見つめなおすことがテーマとなっている。「何度目の青空か?」で示される今とは歌詞通り青春時代のことである。乃木坂46の魅力といえば、「私立女子校の青春」という時間を切り取った存在であることだが、10枚目に来て改めて初心に返り、乃木坂46の魅力を再確認する意味もこの楽曲には含まれている。

 勝負の曲「何度目の青空か?」の魅力を真に理解するためには、カップリングを含めた収録曲にも目を向ける必要がある。鍵を握るのは「時間」だ。

 松井玲奈を除いた10福神メンバーが歌う「Tender Days」と高校生ユニットの「私、起きる。」は、それぞれ「何度目の青空か?」で歌われる青春時代を軸にした「過去」と「未来」の楽曲である。「Tender Days」は昔通った喫茶店を舞台に青春時代に思いをはせる楽曲だ。過去を懐かしみ羨むことは誰しもあることだが、それをやわらかな乃木坂46テイストに仕上げることで悲しみや切なさがやわらいでいくように感じる。一方、「私、起きる。」は布団から出れない学生のための歌というよりは、眠れる乃木坂46の未来(=高校生ユニット)たちに覚醒を促す曲だ。彼女たちが起きた先に広がる世界こそが「何度目の青空か?」で歌われるような素晴らしい青春なのである。つまりこの2曲は出発点は違えど、青春を描いているという点で同じベクトルを向いているといえる。

 乃木坂46らしさを体現するメンバーとして最も挙げられるのが、今作センターの生田であるように、今作全体のテーマは乃木坂46の魅力を再確認することにある。青春時代が過ぎ去った人にも、これから迎える人にも、そして今青春時代を過ごしている人にも青春の素晴らしさを語りかけ、その青春を切り取った存在である乃木坂46の魅力を感じてもらうことがこのシングルの目指すところなのである。

 今作で乃木坂46は紅白出場を達成し、万人にとっての青春となることができるのか。その答えが出るのはもうすぐだ。

■ポップス
平成生まれ、音楽業界勤務。Nogizaka Journalにて『乃木坂をよむ!』を寄稿。

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