恋愛映画でこれほど余韻に浸り、それが長時間続く感覚を味わえたのは久しぶり。胸キュン映画とかそんな軽々しいものではなくて、リアルでポップで胸が騒がしく音を立て、涙って心臓が泣くってことだったと思い出させてくれた作品でありました。 よく練られた脚本は、時間軸を急かさないように丁寧に綴りながら、繊細な編集により気づけば時が経っていたなと脳裏によぎるくらいの包み込むトーン。恋に落ちるふたりの過程を少しだけ離れて見つめるカメラがどこまでも優しく、観客である私たちがふたりを見守っているような錯覚に捉われていく摩訶不思議。 とにかく有村架純史上最高の演技！　細かい表情から声のトーン、仕草まで生々しくて、恋をしていた頃の自分を投影してしまうほどなのだから。そしてどんな役でも自分のものにしてしまう菅田将暉氏は、個人的にはこれくらい私的なサイズ感の映画が一番似合う。 くっついているところをずっと見ていたいふたりの心がどうやって近づいてどうやってすれ違うのかを目撃しながら、自分の恋の思い出に没入していくなんて、恋愛映画の成功法としか思えない。脚本の坂元裕二氏と土井裕泰監督の相性も抜群なんだと実感し、個人的にも恋愛映画の金字塔になった作品であります。

21/1/26(火)