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ホラー、ミステリー、トンデモ映画が大好物

春錵 かつら

映画ライタ―

君の誕生日

2014年、韓国で起きた大型客船セウォル号の沈没事故。乗員・乗客の死者299人、行方不明者5人、捜索作業員の死者8人を出したこの大事故は日本でも連日報道され、乗客を置いて真っ先に逃げ出した船長らが殺人罪で起訴されたり、当時の朴槿恵大統領の行動に国民の不信感が募り罷免のきっかけになるなど、韓国全土を揺るがす大事件に発展したことは、まだ記憶に新しい。 本作は、そのセウォル号沈没事故で息子を亡くしたある夫婦の物語だ。息子が亡くなる様子は、劇中では殆んど語られることはない。自分の救命胴衣を友人や妹に譲った高校生、溺れる人を助けようと海に飛び込んだ高校生、自分の救命胴衣を乗客に着せて亡くなった乗務員。危機的状況でかかってきた電話や死の間際まで届いたメール。日本でもニュースで報道されたように、その様子は多く語らずとも世界の人たちが知るところだ。 息子を失った時にそばにいられなかった夫と、幼い娘と二人で息子の死を背負わなければならなかった妻。どうしようもなかったことにさえ、怒りと意地で塗り固めることが彼女の生きる術だったに違いない。観客から見た彼女は、息子の死と共にいつもあるが、息子の死には向き合えていない。 これから何度誕生日を迎えても年を重ねることのない、大切な人たち。どうか彼らの思い出が、辛く悲しいものから優しく心温めるものになりますように。

20/11/23(月)

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