『ヘレディタリー／継承』のアリ・アスター監督によるこの長編第2作は、カルト集団の祝祭を描く内容と、ホラーらしからぬ鮮烈な光と色彩に満ちたビジュアルが早くから話題になっていた。 それに加えてこの映画、実は主演女優フローレンス・ピューの憑依演技が凄まじい。彼女が演じるアメリカ人女子大生ダニーは、よりによって無理心中による家族全員死亡の悲劇に見舞われた直後にスウェーデンへの旅に出る。そんなこのうえなくネガティブな精神状態のヒロインが、想像を絶する悪夢のような儀式に巻き込まれたらどうなってしまうのか。 おまけに“失恋”という設定も追い打ちをかけ、お花畑での狂乱の祭りのさなかに意外な変容を遂げていくダニーの運命から目が離せない。そして虚ろな目つきで“どん底からの覚醒”を体現したピューの大熱演も圧巻のひと言だ。

20/2/22(土)