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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

名もなき生涯

怖い映画だ。正気なのに、周囲が狂気だと、孤独を深めていくしかない。 第二次世界大戦下、ドイツに併合されたオーストリア。山々に囲まれた小さな村で、フランツ(アウグスト・ディール)は最愛の妻ファニ、3人の娘と農業を営みながら幸せな日々を送っていた。しかし、そんな長閑な地域にも戦争の足音は聞こえてくる。ナチスを信じられないフランツは否定的な姿勢を取り、村で孤立していく。ついに召集令状が届くが、信念を曲げずに兵役を拒否し…。待ち受けていたのは過酷な運命だった。 寡作の名匠テレンス・マリック監督が描く実話に基づく物語。最期まで己を貫く実在の農夫の姿を、寄り添うように追う長回しの映像が斬新だ。観客も主人公と同じ空気を吸っているような没入感。ワイドレンズで接近して撮影しているため、主人公のそばで心を痛めながら見守っているような感覚だ。その他の人物は実際に見えるよりも遠くにいる印象。観客も同じ疎外感を抱く。 全編にわたって広角の映像という作品は記憶にない。隅々まで焦点を合わせることで、理解が得られない人間関係を鮮明にとらえた演出が心を打つ。1年前に亡くなった名優ブルーノ・ガンツが出演しているのがうれしい。

20/2/20(木)

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