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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか

自分に何ができるのか、自分は何をしたいのか、自分は社会に向かって何を表現すべきなのか。それをくっきりと見据えられる人間など滅多にいるものではない。だが、まさに石岡瑛子展は、そんな人間の強靭さをまざまざと見せてくれる企画だ。 石岡の仕事は、鮮烈なポスターグラフィックの旗手として活躍した1970年代までと、アメリカに渡ってから衣装デザインを主なフィールドとしてきた1980年代以降に分けると、概略的には理解しやすい。有名なパルコのポスターたちが持つ力感を前にすると、この人には日本は最初っから狭かったのだろうと分かる。 だから、監督のフランシス・フォード・コッポラ自身にインパクトを与えた2種の『地獄の黙示録』日本版ポスターは、その2つの時期をつなぐ、石岡の世界に向けてのパスポートだったのだ。「ヘリコプターの群れ/サーフィン」と「ジャングルの炎上/カーツ大佐」、この2つを描いたスーパーリアル・イラストレーションの名手滝野晴夫さえ、アート・ディレクター石岡の完璧主義には舌を巻いていたという。きっと石岡には「映画」という枠組みさえ窮屈だったのではないか。なぜなら彼女は常に「レヴォリューショナリー」(革命的)を自分自身に課していたが、映画の方は必ずしもいつも革命的である要はないからだ。『ドラキュラ』のダークで華麗な衣装デザインは、まだ映画の内側の仕事だったかも知れない。だがその先は、映画の方が石岡についてゆかねばならないのだ。彼女が求めたのは、映画のために働くデザインではなく、映画という制度と対峙し得るデザインであった。 筆者は仕事柄、展覧会をどうしてもシネマの眼で見てしまう。だから、草月アートセンターや羽仁進監督とのコラボレーションなど、初期の映画関連の仕事が本展で割愛されていたのは残念だった。だがギンザ・グラフィック・ギャラリーで催されるもう一つの『石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか』の後期(2021年2月3日より)で展示されるものと期待している。

20/12/11(金)

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