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ホラー、ミステリー、トンデモ映画が大好物

春錵 かつら

映画ライタ―

VS 狂犬

“生”にしがみつくか、手放すか。 本作は四肢麻痺になった少女の孤独な闘いを描いたワンシチュエーションで、アニマル・パニックで、サバイバルなホラーだ。 ふれこみでは原因を「謎のウィルス」とされているが、感染原因となったケガも症状も狂犬病そのもので潜伏期間が極端に短い。「恐ろしくスピード感のある狂犬病」といったところ。狂犬病と聞けば映画『クジョー』を思い浮かべるが、焼き直しのような作品ではない。 タイトルからもわかるように「犬」がヒロインの脅威になるわけで。犬好きとしては人間の不手際により酷い目に遭う胸クソ映画だったらどうしようと恐る恐る観たが、この悲劇は致し方ない。「どうしようもない悲劇」というのは時として起こり得る。本作がその類だ。 時として「物語を発動させるために登場人物を怠慢で愚鈍に描く」脚本があるが、本作はその不自然さがない。死にたがりだった少女が生に執着することですら、自然だ。観客を犬に必要以上に感情移入させなかったのも良い。とても良く練られた脚本と演出だと思う。 「どうしようもなかった」を受け入れるのと、「自分のせいだ」と責め続けるのと、一体どっちが楽だろう。

20/10/30(金)

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