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水先案内人のおすすめ

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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

アンモナイトの目覚め

観終わった後、ひとつ大きな深呼吸をする。そして「ケイト・ウィンスレットは何と素晴らしい女優に成長したのだろう」と呟いてみる。17歳の『乙女の祈り』(94)の少女役から『愛を読むひと』(08)のナチス女囚役を経て、本作で大女優に昇り詰めていく様を実感できた喜びを、口にせずにはいられない。『アンモナイトの目覚め』はそんな映画だ。 本作は、ケイトと『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19)の若きアカデミー賞女優シアーシャ・ローナンの、初共演作。流産してうつ病を患う人妻(シアーシャ)と、世間に背を向けて暮らす人嫌いの古生物学者(ケイト)の愛憎を繊細に、大胆に、美しく描き上げる。 1840年代のイギリスの海辺の町。ケイトが演じるのは実在の古生物学者メアリー。13歳の時に成し遂げた化石の“大発見”が大英博物館に展示されるも、表の歴史からは消えて、今は観光客の土産用にアンモナイトを拾ってきては売るのを生業にしている。彼女は流産のショックから立ち直れず、抜け殻のようになったシャーロットと知り合う。感情を押し殺して生きてきたふたりの女性の出会い。 地の果てを彷徨するふたりの女性の魂と肉体が結ばれて昇華する描写が、素晴らしい。性愛描写の極致。昨年の『燃ゆる女の肖像』を想起せずにはいられない傑作が生まれたことを、喜びたい。

21/3/16(火)

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