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中川 右介
1960年生まれ、作家、編集者
透明人間
20/7/10(金)
TOHOシネマズ 日比谷
SFかと思ったら、サイコホラーだった。 作られたのはコロナ禍前なので偶然だが、「見えない敵」に怯えて暮らすヒロインの恐怖と苛立ちが、コロナ禍のなかで生きている者の心情にシンクロする。 なぜ透明になれるのかは、映画では詳しくは説明されない。透明になる方法はこの映画のテーマではないのだ。簡単に言えば、薬学的な方法ではなく、光学的な方法だ。 とにかく、その人は見えないのだ。見えない人間に監視されていると、ヒロインは気づく。それが誰か、心当たりがある。そしてなぜ自分につきまとうのかも。究極のストーカー被害の映画だ。しかし、透明人間がいると周囲に訴えても、誰も理解してくれない。 凶暴で醜悪な敵も怖いけど、透明人間はもっと怖い。ウイルスや放射能も「見えない敵」と言われるが、透明人間も見えない敵だ。この映画に出てくる透明になれるスーツは、技術としては数十年後には実現できるかもしれないのだと、パンフレットに書いてあった。 もし実用化されたら、世の中はひっくりかえる。究極の兵器だ。絶対に開発してはいけない、とまじめに思ってしまう。 それにしても、怖かった。
20/7/7(火)