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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

フェアウェル

“悲しい嘘”で、人の心の温かさを視覚から感じられる映画。 しかも大笑いしちゃうようなアメリカンコメディとも違い、そこは監督がアジア人だからなのか、クスッと音が漏れちゃうレベルの優しい笑いでフンワリ涙まで誘うんだから、そのバランス感覚たるやお見事なのであります。 ルル・ワン監督の実体験を映画化したのだから、オークワフィナ演じるビリーが監督自身なのでしょう。中国人であり、アメリカで育った彼女ならではの移民特有の感覚から、中国に暮らす祖母や親族たちを見つめ、自分自身の存在意義に気づかされていくのが、結婚式などのその国の文化的エピソードを交えながらシークエンスで見えてくるんです。 そして、オークワフィナがやっぱりイイ! 『オーシャンズ8』でも『クレイジー・リッチ!』でも『ジュマンジ/ネクスト・レベル』でも、ラッパーならではのコミカルな演技で、唯一無二の存在なのに、『フェアウェル』で見せたどこにでもいそうな友達的存在感なのに、引き寄せられてしまう猫背の立ち姿。この映画でゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞なのも納得なのですよ。 それでいて、『ルーム』やら『ムーンライト』『ミッドサマー』のA24の配給と知ると、良質映画の太鼓判を押された気になってしまう。 だけど、本当に、実体験とはいえ、この脚本とキャスティングを考えたルル・ワン監督の才能は、今後も楽しみでならないのです。次もオリジナル脚本で観たい!

20/9/28(月)

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