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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

カルト集団マンソン・ファミリーの手に落ちた女優の無念すぎる死。“シャロン・テート殺害事件”も綴られていることを知り、大きな期待と多少の恐怖心を持って試写へ挑んでみたら、今まで以上にタランティーノという人が好きになってしまったんですよ! 映画というものはどうしたって、監督の性格が映し出されてしまうもので、今までタランティーノ監督に対しては、1960年代に焦がれ、自分が恋したカルチャーをリスペクトするやんちゃな大人子供だと勝手に理解しておりました。 それが今作では、タランティーノ監督の好きなものを集めた映画から、一気に世界に投げかけるエンタメ界への応援歌となっていたのだから興奮しないわけがないっ! さて、ハリウッドの黄金期である1960年代というと、スティーブ・マックイーンがいて、ブルース・リーがハリウッドで『グリーン・ホーネット』に出演していて、マカロニウエスタン映画やテレビドラマが制作されていて、ヒッピーの子供たちが多く現れ、マンソン・ファミリーが事件を起こしたセンセーショナルな時代。 物語には彼らが実名で登場し、当時の映画のワンシーンも取り入れながら、ポランスキー監督そっくりさんと手を繋いだマーゴット・ロビー演じるシャロン・テートに焦点が合っていくのです。 そんな中に、もしこんな俳優とこんなスタントマンがいたら?というフェイクを織り交ぜて描くIF(もしも)映画は、間違いを正しながら映画の力を信じるパワフルな愛の物語でした。 現実にはいなかった主人公のひとりで、ひと昔前のスターを演じるレオは、栄光にすがり、苦しみもがく感情の塊みたいで、まさに人間そのもの。 いっぽう、ブラピ演じるスタントマンはまるで地球に舞い降りたガーディアン・エンジェルのように、レオ演じる俳優を勇気づけ、支え続け、俯瞰でハリウッドを眺めながら、ときにヒッピーの女の子の過ちにも目を向け、すべてを正しい形に戻していこうとするのです。 しかもラストには、煙草を吸うシーンが子供に悪影響を与えるというので、ハリウッドを相手に裁判が起こった出来事に対する返事のような演出もあり、タランティーノ節も健在! まさに物作りにまで人々が気軽に物申すようになった現代社会への宣戦布告にもなっていたのだから、胸が熱くならないわけがないのです! 今、タランティーノは、自分の愛するものをすべて集めて、ハリウッドの未来や、映像表現の自由を映画で訴えている最中。その志はブラボー! そして拍手を贈ります!

19/8/27(火)

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