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水先案内人のおすすめ

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ダメな人が出てくる情けない話やバカげた映画を中心におススメ

村山 章

映画ライター

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

タランティーノは、1969年のハリウッドを描く本作の企画を思いついたときに『ジャッキー・ブラウン』の原作者エルモア・レナードの小説スタイルに似た、複数のプロットが絡み合う群像劇を想定していたという。しかし途中で考え直し、「ストーリーなんていらないんじゃないか」という結論に達した。ある意味蛮勇にも思えるコンセプトだが、これが非常に効果的に、そして新鮮に機能している。 本作は、落ち目のテレビスターのリック(ディカプリオ)、マイペースなスタントマンのクリフ(ブラピ)、そして実在の女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)の数日間をスケッチしつつ、殺人教団と言われたチャールズ・マンソン一味の存在が不吉に浮かび上がる。ただし“プロットが絡み合う構成の妙”みたいな褒め方は絶対にできない。ただただ無造作にシーンを並べたような荒っぽい手触りが、不思議なほど心地いいのだ。 そして筋の通ったストーリーよりも、69年という時代の終わりと始まりを感じ取っている登場人物たちの“夢と希望と哀愁と諦念”こそがドラマの核であると気づかされる。つまりはタランティーノが描く“感覚”を味わうことが本作の醍醐味。いつまでも観ていられる豊かな時間の映画だと思う。

19/8/27(火)

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