「映画は観るものだから撮影監督の腕が本当に重要…」という町山智浩さんの言葉は先日紹介した『ソング・トゥ・ソング』や1月29日にロードショー公開される『天国にちがいない』のような映画にぴったりとあてはまる。 2002年に『D.I.』という映画でその独特なユーモアと豊かなイマジネーションで世界に衝撃を与え“現代のチャップリン”と賞讃されたエリア・スレイマンの卓抜したセンスに完全にKOされつつ、ソフィアン・エル＝ファーニという撮影監督の存在がなかったら、新作の企画を売り込むため、故郷ナザレからパリ、ニューヨークへと旅に出た映画監督スレイマンのユニークさというのは1本の映画として結実しなかったのではないかと思ってしまう。 言葉を一切発することなく旅を続けるスレイマンと重なるアートな映像と、ぴったりシンクロする音楽。“音楽コンサルタント”としてヤスミン・ハムダンの名前がクレジットされていたが、ヤスミンとスレイマンが夫婦であると知り、妙に納得させられた見事なコラボレーションだった。

21/1/26(火)