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水先案内人のおすすめ

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時代劇研究家ですが趣味は洋画観賞。見知らぬ世界に惹かれます。

春日 太一

映画史・時代劇研究家

恋の病 ~潔癖なふたりのビフォーアフター~

実に練られたラブストーリーだった。 どちらも防塵服を着ないと外に出られないほどの潔癖症な男女、ボーチンとジンがひょんなことから出会い、やがて恋に落ちる。そしてふたりは一緒に暮らすようになる。 “変人”として孤独に生きてきた者同士が、初めて価値観を分かち合える理解者に出会えた……そんな喜びに前半は満ちている。 ここまでだけでも“よくできたラブコメ”なのだが、それだけでは終わらない。後半、ボーチンの潔癖症が治ってしまうのだ。 「何も変わらない」そう誓うボーチンだったが、段々と“堂々と外出して人と触れ合う喜び”を知り、社交的になっていく。ジンは取り残された気分になり、再び孤独を覚える。 風変わりなジンに惹かれるボーチンの目線から描かれる、幸福感あふれる前半。孤独に苛まれるジンの目線から描かれる、苦くて重い後半。演出の仕方も含めて、それはまるで別の映画のようにすら映る。 恐らく、それが作り手の狙いでもあるのだろう。状況が変わってもなお相手を慮り続けること、差異を受け入れ続けること、その難しさが前後半の極端なギャップにより残酷なまでに突き刺さることになった。

21/8/3(火)

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