Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

中村種之助『踊りの会』

江戸の昔から毎年盛夏は、若手役者たちが大役に挑戦し修行に励む季節だ。江戸三座の大立者たちが休演し地方へ避暑や巡業へ行っている間、若手役者と新米狂言作家が組んで江戸の芝居小屋で大役や新作に挑戦したと言われる。 現代でも若手たちの公演は盛夏の風物詩。国立劇場の歌舞伎界・稚魚の会合同公演や、尾上松也の自主公演『挑む』もこの夏上演される。松也がこの会を開催するのも今回が最後。生田斗真をゲストに迎え、父尾上松助ゆかりの『赤胴鈴之助』を新作として上演する。また播磨屋ゆかりの大役に兄弟で挑戦する会として夏に行われていたのが、中村歌昇と中村種之助兄弟の『双蝶会』。この夏は種之助が一人で自主公演を開く。その名もストレートに『踊りの会』。 「昨年ずっとコロナ禍で家にいて、芝居に関して何もできない日々が続いていました。思い立って自分の出演した舞台の映像を見てみたら、これでお客様の前で芝居していたのかと愕然としました。今までは根拠ないけれどどこか自信もって勤めていたのですが、これではいけない、何とかしなくてはと思い立ちました」と種之助は語る。 選んだ演目は『子守』『まかしょ』と、『春興鏡獅子』。『子守』と『まかしょ』は、「小さいころから藤間流宗家のところでお稽古してきましたから、この組み合わせでやってみるのも面白いかなと思いました。それに(市川)猿之助さんから、以前アドバイスされたことが頭の片隅にありました。でもなぜこの2本を薦めてくださったかわからないままなんです(笑)。僕が立役と女方を両方やっていると認識持っていてくださったのかなと。うれしかったですね」と語る。 いずれも風俗舞踊だ。「子守をしている若い娘の生活感、どういう暮らしをしていてどういう体の使い方をするのか、深いところまで考えてやらせていただきたい。まかしょは、踊りの教科書みたいでは面白味がないので、”もっとお洒落に踊りなさい”と教わっています」『鏡獅子』については、「なにしろ大作、名曲。多くの先輩方のなさった舞台がきっとお客様の目に焼き付いていることでしょう。歌舞伎舞踊の王道、小細工も利かない、とにかく一生懸命に、真摯に向き合っていきたいです」 踊りが大好きだという種之助。「子供のころは稽古場に行くのがいやだなと思っていました。でも体を動かすのは好きで、台詞について注意されるよりも、体の動きを注意される方が僕にとっては理解しやすかった。こうすればいいんだというのが次々に見えてくる感じでした。それが踊りを好きになるきっかけです。今回、踊り三番を踊るのは自分でも無謀だと思っています。でも今しかできないことをやろうと。とにかくうまくなりたい、いい役者になりたい。また今回は、会の裏も表もすべて自分でやろうと思っています。大変ではありますが、独り立ちの意味も込めて挑戦しようと思います」。 アツい夏の挑戦を楽しみに、劇場へ出かけたい。

21/7/25(日)

アプリで読む