試写状に載っていた「バイトを始めた銭湯は、深夜に風呂場で人を殺していた――。」というキャッチコピーにひかれて出かけたが、面白さは想像以上だった。 東大出身なのに特にやりたいこともなく、フリーターとしてうだつの上がらない生活を送っている和彦を中心にひょんなことから人生が大きく動き出してしまう人たちの人間模様を、ドラマ、サスペンス、コメディ、ホラー、恋愛など様々なジャンルを盛り込みながら、青春エンタテインメントと呼べるような作品に仕立て上げたのは、8月で32歳になる田中征爾。初監督作品になる『メランコリック』は昨年の第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で監督賞を受賞。昨年『カメラを止めるな！』が受賞し話題となったウディネ・ファーイースト映画祭でも新人監督作品賞を受賞しているが、この新しい才能には絶対に注目だ。プロデューサーも同い年の32歳。不思議な脱力感と浮遊感はこの世代にしか作り得ないものかもしれない。

19/7/31(水)