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水先案内人のおすすめ

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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

ドレス・コード? ─ 着る人たちのゲーム

京都国立近代美術館で大好評を博した『ドレス・コード?』展が、熊本市の現代美術館を経由して東京にやってくる。当初は東京展の計画はなかったというから、その勢いが分かるというもの。 例えば筆者にとってハイ・ファッションという分野は、日頃は関心の外側にある。だがこの展覧会は、そもそもある時代の、ある人間社会の持つ文脈に応じたファッションはいかに生成されてきたのか、という基盤自体を問うているから面白い。何しろ、第ゼロ章の題は「裸で外を歩いてはいけない?」。この人はなぜこの時、この服を着るのか? 当たり前のようで当たり前ではない多重の問いに、あちこちで衣服そのものが答えるのだ。 もちろんハイ・ファッションもそれら多重のコンテクストの網目として創造されており、会場を華やかなものにしているが、それ以上に圧巻なのは会場の出口近く、都築響一による一連の写真《ニッポンの洋服》だ。いまや有名になった北九州の成人式、場末スナックのママさん、地下アイドル、なつかしのボディコンまで、日本の大衆ファッションのオルタナティブを、これでもかというぐらい単刀直入に提示している。そしてセーラー服や学ランといった、ニホンの制度としての「学校制服」に切り込む映画ポスターのコーナー(ほとんどは国立映画アーカイブ所蔵)も見逃せない。会場内でも異彩を放つ空間だが、国立の美術館や東京オペラシティに、まさか『嗚呼!!花の応援団』の青田赤道が登場する日が来るとは……。 この展覧会は、私たちが生きることの「自由」を、実はかなりまっすぐ問うている。この展覧会が未来にアップデートされるとすれば、今まさに展開されようとしているコロナ時代、ポストコロナ時代の面妖な装いは、いったいどう考察されるのだろうか。

20/7/5(日)

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