『ドリームガールズ』で主演のビヨンセを完全に食い、アカデミー賞助演女優賞を受賞したジェニファー・ハドソン。後に『キャッツ』での「メモリー」の歌唱は全シーンがかすむ程ズバ抜けた美しさで、改めて彼女のカリスマ性を引き立たせる結果を生んだ。だからこそ、アレサ・フランクリンは彼女しか想像出来なかったし、『リスペクト』は、その期待を10倍にして答える歌唱と存在感を演技でも披露してくれる大傑作に仕上がっている。 しかもアレサの波乱万丈な人生を説明セリフや描写で過剰に表現せずに、彼女の体験を表情で想像させる演出により、更にジェニファー・ハドソンの魅力が際立ってくるのだから興味深い。 ソウルの女王が世に残した「リスペクト」や「ナチュラル・ウーマン」などの名曲がどうやって生まれたのか？　歌手としての下積み生活や早くに母親になってしまったアレサの未熟さと男女平等を歌で世界に伝えていく裏での私生活まで描かれていく。 さらに日本でも今年5月に公開されたドキュメンタリー映画『アメイジング・グレイス／アレサ・フランクリン』で映し出されていたゴスペルコンサートの再現度の高さにも驚く。ひとりの女性の数奇な運命と彼女の弱さと強さは、多くの人の心を揺さぶるに違いない。

21/10/28(木)