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NO MUSEUM, NO LIFE.
鈴木 芳雄
編集者/美術ジャーナリスト
森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私
20/1/25(土)~20/7/12(日)
原美術館
名画のモデル、映画の演者、歴史上の人物に森村泰昌は30年以上に渡って扮してきた。なぜそうしてきたのか、なぜその表現をしたかったのかが今回の展覧会で少しだけわかった。戦後復興期に大阪で生まれ、日本の高度成長を目の当たりにしながら育った彼。歴史の大きなうねりと、個人史のさざ波に揺れる。両親たちに染み付いた戦前の教育や思想を知ると、世の真理なんてパッと変わるという「空虚」を感じたのだろう。長じてロラン・バルトを読み、この国の首都の中心には静かな空虚があることに気づいた。「真理や価値や思想というものは(中略)いくらでも自由に着替えることができるのだ」。時空を超え、ときにジェンダーを変え、何者かに「着替える」モリムラ芸術の根源はそこにあるのかもしれない。
20/2/11(火)