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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

燃ゆる女の肖像

なにもかもが美しい。それは映画を観ているというよりは動く絵画を観ているような感覚なのに、しっかり感情がこちら側に届いてくるという洗練された脚本力によりぐいぐい物語に引き込まれていく心地良さも加わっての新感覚。顔立ちが美しいのとは違う真の美しさを教えられているような、ゆっくりと花開く色香の開花の瞬間だったり、視線から仕草まで目を奪われてしまう圧倒的な存在感だったり、気持ちの良いタイミングでの音の入れ方だったり、曲線をなぞるようなカメラワークだったり、海風の音や炎の色合いだったり、とにかく全てにうっとりするのです。 画家の物語だからこそ、画家の視点で映画全体が彩られ、観ている自分たちの視覚がアーティスティックに変化したかのような錯覚に囚われるのだから凄いの一言。セリーヌ・シアマ監督は今後、多くの俳優たちからラブコールを受けるに違いない。 登場人物に共感するのとは違う、観ているうちに一体化するこの感覚こそが、素晴らしい脚本と言えるのかも知れない。うっかり没入し過ぎて、行末に苦しみ、心がかき乱されてしまったなんて、なかなか体験出来ることではないし、それだけ魔力のある映画なのです。

20/12/3(木)

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