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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

幸福路のチー

アニメ産業不毛の地ともいわれる台湾で生まれた一人の少女の成長物語。ソン・シンイン監督の半自伝的な物語は郷愁を誘うファンタジックな映像が特徴ですが、そこに留まりません。大陸から渡ってきた国民党による台湾語禁止の学校教育や38年にわたる世界最長の戒厳令解除を経て民主化に向かった史実も盛り込んだところに映画としての重みがあります。文化的背景は異なっても「自分たちの物語だ!」と世界の観客が絶賛するのもそこにあります。 実はソン監督、実写で撮るかどうか迷いました。アニメの経験がなかったからです。しかし成長にともなう残酷さや痛さを温かみのあるノスタルジーに変換するためにはこの手法が欠かせないと判断。資金集めからアニメーションスタジオの設立まで4年をかけて完成させました。映画を学ぶ過程で「人には誰でも語るべき歴史がある」という「確信」を得たことが本作の脚本を書くきっかけになったようです。 幸運も重なりました。アニメの声に女優のグイ・ルンメイが参加したこと。長編のもとになった短編「幸福路上」の台北電影奨受賞時の審査員が彼女。もちろん声の出演承諾です。また人気歌手のジョリン・ツァイがテーマソングを歌ってくれたことも大きかったです。彼女は舞台となった幸福路近くの出身です。多くの幸運が集まりました。これも実力でしょう。

19/11/25(月)

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