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水先案内人のおすすめ

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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

戦後独立プロ映画のあゆみ-力強く PARTII

『狼』8/11〜8/17 ラピュタ阿佐ヶ谷 特集「戦後独立プロ映画のあゆみ―力強くPARTⅡ」(7/28〜9/28)で上映 戦後独立プロの雄・近代映画協会には、“イタリアン・ネオリアリズム”を彷彿させるリアリズム精神に満ちた傑作がたくさんある。 『裸の島』『鬼婆』『第五福竜丸』『人間』などがそれで。本作もその一本。実際に神奈川県で起きた、男3人、女2人の生命保険勧誘員による “郵便車襲撃事件” が元ネタになっている。 舞台は昭和二十年代後半、戦後の深刻なデフレ、失業者・浮浪者が溢れる神奈川県のある街。厳しいノルマを押し付けられた生命保険の勧誘員の男女五人が、郵便自動車強盗犯に転落するまでの苦悩が描かれる。 血の出るような貧困にあえぐ彼らに、無理算段を強いる保険会社。保険の契約がとれず苦悩する勧誘員。生きるために犯罪に手を染めてしまう人間性の弱さと、彼らを追い詰めた社会悪を鋭く突いている新藤演出。その軋轢から生じるサスペンスの醸成が見事だ。 戦後日本の格差社会と、今現在の日本が重ね合わさっているところに新藤兼人のジャーナリスティックな才能が光る名作。余談だが、犯人のひとりを元シナリオ・ライターにしたという設定は、映画人の自虐だろうか。

19/8/8(木)

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