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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています

相田 冬二

ライター、ノベライザー

世界の涯ての鼓動

自分の大切なひとが、目の前にいないからこそ、愛おしさがこみあげる。そんな経験は誰しもあるだろう。 それは、ただのさみしさなんかじゃない。物理的に距離を置くことで、精神的な冷静さが生まれる。自分なりに濾過された心模様には、至近距離で互いの熱と熱とを交わしているさなかには得られなかった清んだ色彩がある。近すぎて見えなかったものが、ふと見えたりもする。 逢えてよかった。そんなふうに思えるのは、相手が“いま、ここ”に不在だから、ということは案外多いもの。 女も男も、死ぬかもしれない仕事に情熱を燃やしている。それは恋よりもはるかに深い充実感に満たされるものだった。だが、ふたりは出逢った。出逢ってしまった。 自分が死ぬことと、相手が死ぬことと、どっちが辛いだろう。 どちらも辛いのだ。なぜなら、もう二度と逢えなくなるから。 あなたが死んでも。わたしが死んでも。 あなたとわたしが、もう二度と逢えなくなることには、なんの変わりもない。 恋は、離れることで、真実が見えてくる。 ヴィム・ヴェンダースは“近景”と“遠景”を等価に描いてきた映画作家だ。 好きなひとのそばにいるときのやさしさ。好きなひとが遠くにいるときのやさしさ。 このやさしさたちには、同じ価値がたしかにある。

19/8/2(金)

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