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時代劇研究家ですが趣味は洋画観賞。見知らぬ世界に惹かれます。
春日 太一
映画史・時代劇研究家
フェアウェル
20/10/2(金)
TOHOシネマズ 日比谷
物語は至ってシンプル。 ガンに侵され余命短い祖母を見舞うために帰郷した孫とその家族が、祖母にそのことを隠しながら共に暮らす。 それだけの話なのだが、これが素晴らしく感動的。 最近話題になった『100日後に死ぬワニ』が示したように、先に悲しい結末が待ち受けていると受け手があらかじめ知っていると、そこで繰り広げられる何気ない日常がかけがえのないもとして受け止められ、儚さとともに光輝き出す。 本作の作り手・演じ手たちも、そのことを熟知しているのだろう。決して劇的に大きく盛り上げる演出も演技も決してせず、時おり温かいユーモアを交えつつ淡々と描いている。だからこそ、個々の描写が沁みる。 優しい気持ちになれる作品だ。
20/10/1(木)