Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

現代の名人芸を追い続ける

山本 益博

1948年生まれ 料理評論家、落語評論家、プロデューサー

柳家さん喬独演会「百年目」を聴く

春爛漫、桜が満開の季節に近づくと、いつも聴きたくなる演目が『百年目』である。 謹厳実直で仕事一筋であるはずの大店の番頭は、じつは、店から少し離れた場所に部屋を借り、着物を入れた箪笥だけを置いておく、粋で洒脱な遊び人だった。桜の満開の見ごろの時に、芸者連中と隅田川の堤に花見へ出かける。 ところが、酔った勢いで警戒心を失った番頭が浮かれ出したところで、店の主人と鉢合わせしてしまう。ここからドラマが急展開してゆく。春の落語の名作中の名作で、年配の大看板しか掛けられない演目と言えよう。 昭和の名人なら、三遊亭圓生、桂文枝、桂米朝、それに古今亭志ん朝の十八番だった。店に帰っての番頭と大旦那のやり取りが噺の眼目だが、大旦那の度量を示すには、落語家の練達した技量がものを言う。この場の大旦那を描きだせるのは、現在では、柳家権太楼か柳家さん喬ではなかろうか。

21/2/21(日)

アプリで読む