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水先案内人のおすすめ

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王道をゆく日本映画を中心に、問題作、旧作日本映画も

大高 宏雄

1954年生まれ 映画ジャーナリスト

カスリコ

高知発のモノクロ作品『カスリコ』が身に染みる。人間が落ちていくときの魔のような移ろいゆく時間の流れを、繊細に切りとっているからだ。博打でしくじった石橋保扮する元料理人が、博奕場で客から少しばかりの施しの金を貰うカスリコなる〝仕事″で、糊口をしのぐ。石橋の、自身の運命を素直に受け入れていく落ちぶれ感がいい。周りの人間描写も実に的確で、俳優たちの力量が存分に引き出されている。博打が題材だと、東映のヤクザ映画のように、荒々しい男たちが緊迫感溢れる場面を作ることが多い。『カスリコ』は、そうはならない。高橋長英演じる博奕打ちの御大はじめ、市井の普通の人たちが、きわどい人生模様を歩んでいるがごときで、そこが逆に見所になるといった寸法だ。低予算で、よくやった。応援したくなる作品である。

19/6/28(金)

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