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水先案内人のおすすめ

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生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

ミセス・ノイズィ

コロナ禍の生活で、おうち時間が長くなってきた人も多いのではないでしょうか。そうなると、気にはしなくても、目や耳に入ってくるのはお隣さんのこと。私事ですが、仕事場の方は壁が薄くて、時折、生活音が聞こえてきます。もちろん、これはお互い様なのですが……。 昨秋の東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門に出品された本作は、そんなお隣さんの騒音をきっかけに、大騒動に発展する姿を面白おかしく、シニカルに描いたコメディです。コロナ禍のために公開が延期になりましたが、まさにステイホームの今、見るべき映画となっています。 スランプ中の作家(篠原ゆき子)は、仕事がうまくいかないこともあって、早朝からふとんを叩くお隣さん(大高洋子)の騒音にイライラ。愛娘(新津ちせ)をめぐる事件も発生し、「お隣は非常識だ」と激怒。それは、ささいな近隣トラブルであったはずでしたが、ネット動画でも流れたことから、大騒動になっていきます。 近隣トラブル映画は世界中で作られています。パッと浮かぶのは、庭木が発端になる米アカデミー賞外国語映画賞アイスランド代表に選ばれた『隣の影』、キリスト教徒のレバノン人男性とパレスチナ難民の男性の口論がやがて裁判沙汰になるレバノン映画『判決、ふたつの希望』。どちらも必見の傑作です。 本作は、ワイドショーで大きく取り上げられた“騒音おばさん”がモチーフになっているようですが、後半の展開が驚き。天野千尋監督の鮮やかな切り口と構成力がお見事。篠原ゆき子と大高洋子のバトルも注目です。楽しめる作品であると同時に、国同士でも、こんなことはあるかもなぁと、深く考えさせられます。

20/12/3(木)

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