Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

本気のしるし 劇場版

こういう映画もあるのか、と驚かされた作品。『淵に立つ』『よこがお』の深田晃司監督が演出した名古屋の地方局「メ~テレ」製作の連続ドラマを再編集した228分の劇場版。なんと、今年の第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション2020に選出された。 原作は星里もちる氏の同名コミック。職場の二人の女性(石橋けい、福永朱梨)とあいまいな関係を続ける主人公・辻(森崎ウィン)がある日、その場しのぎの嘘ばかりをつく浮世(土村芳)と出会ったことから、思わぬ転落人生を歩むことに……というラブサスペンス。 実は筆者は90分くらいの作品がちょうどよい、と感じてしまうタイプ。当初、約4時間という長尺には、思わずひるんでしまったが、すっかりハマって、長さを感じなかった。辻は女性関係にだらしないが、優しさも持ち合わせている男。ある時、線路上で立ち往生している車を助けたことから、謎めいた浮世と出会い、なぜか引かれてしまう。 ところが、浮世は助けた張本人をおとしめたり、挙げ句、「お金がないから貸して欲しい」という始末。その上、借金取りに追われる身の上で、辻は大金まで貸すことに。一体、浮世は何を抱え、何に追われているのか? とにかく、土村が演じる得体のしれないヒロインが魅力的。それを受け止める森崎もさすが。だからこそ、森崎演じる主人公同様、この映画の深みにハマってしまうのだ。 ネット配信の台頭もあって、多様な「映画のカタチ」が出てきており、何をもって、映画というコンテンツを定義するべきなのか、難しくなっている。もはや、ドラマ、映画を分けるのは無意味だ。単なるフォーマットや露出の方法の違いなんだろう。まさに「本気」で作った本作はドラマでもあり、映画でもあるという両性具有の異色作となった。傑作!

20/10/6(火)

アプリで読む