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水先案内人のおすすめ

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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

きみの瞳(め)が問いかけている

吉高由里子と横浜流星を観る映画。 吉高は、事故で視力をほぼ失っている女性の役。テレビなどでは、外に向かって感情を放つキャラクターが多いが、今回は、目が見えず、自分のせいで両親が亡くなり、それゆえに消極的で内向的となったヒロインを、うまく演じている。 横浜はキックボクサーの役。極真空手の世界大会で優勝しただけあって、自ら演じる試合のシーンは迫力がある。日常のシーンでも、内に秘めた暴力性と優しさが同居している青年を、演技とは感じさせずに演じている。この年齢の青年俳優にしかできない役だ。 韓国映画を原案としているが、物語の構造はチャップリンの『街の灯』。名作は換骨奪胎できるという、いいお手本だ。 横浜の役がチャップリンの役にあたるが、キャラクターはまったく異なる。それでも物語が要求するせつなさを、横浜はチャップリンとは別の形で表現する。 古典的名作がベースにあり、それを臆せずに踏襲するので、物語に破綻はない。堂々とした模倣が、いさぎよい。涙腺の弱い人は泣ける。 偶然の重なりが気になると言えば気になるのだが、そういう偶然がないことには成り立たないストーリーなので、つっこむのは野暮というもの。

20/10/14(水)

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