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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

国立劇場 12月文楽公演『仮名手本忠臣蔵』

歌舞伎でもおなじみの『仮名手本忠臣蔵』。今月の文楽公演では全十一段の長いこの浄瑠璃の中でも、若いふたりの殿様、桃井若狭助と、塩谷判官、そしてそれぞれの家老・加古川本蔵と大星由良助にスポットを当てた段を上演する構成となっている。 幕府執事の高師直に反感を抱く若狭助。殿中で師直を斬ろうともくろむが、なぜか本蔵はことさら止めることをしない(「松切の段」)。だが足利御殿の完成を祝う饗応の宴にやってきた師直の駕籠に本蔵は面会を申し出る。なんと師直家来の鷺坂伴内にわいろを渡すのだった(「下馬先進物の段」)。目下の若狭助にわびて逆に鬱屈をかかえる師直。そこへやってきたのは塩谷判官だ。彼の妻に横恋慕する師直は、判官に罵詈雑言を浴びせる。耐えかねた判官は師直に斬りつけるが、様子をうかがっていた本蔵に抱き留められ、師直にとどめをさせなかった(「殿中刃傷の段」)。判官は切腹の沙汰となり、腹に刀を突きたてたところへ国家老の由良助が到着する(「塩谷判官切腹の段」)。由良助は形見の血刀に復讐の思いを込め館を立去る(「城明渡しの段」)。本蔵の娘・小浪は、由良助の息子の力弥と許嫁の仲。だが本蔵が判官を抱き留めたことで、加古川家と大星家とは不仲のままだ。力弥に添いたい、添わせたい、小浪の母・戸無瀬と小浪は、遠路はるばる大星家のある京の山科へと旅をする(「道行旅路の嫁入り」)。 今月は、お軽勘平や斧定九郎、寺岡平右衛門らが登場する段は上演されないが、物語の中心となる刃傷事件と塩谷家断絶という武家の世界の一大事を軸に展開されていく。上演される段の並びによって、おなじみの『忠臣蔵』もまた見え方が変わってくるのが面白い。 ちなみに歌舞伎の通し上演では実録風の十一段目「討入の段」が上演されることが多いが、文楽では討入そのものの場はない。討入直後の引き上げの場面と、主君の菩提寺で師直の首を墓前に収め焼香する場面で幕となる。

21/11/24(水)

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