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ホラー、ミステリー、トンデモ映画が大好物

春錵 かつら

映画ライタ―

ハチとパルマの物語

人間のせいで犬が酷い目に遭う姿を感動にすり替える映画が嫌いだ。今はもういない世界一の愛犬・ダンテと出会ってから、その傾向は一層強まった。 本作の序盤、そういう類の映画だったらどうしようと、不安になったのは否めない。だが本作は蓋を開けてみれば、犬への愛が随所に垣間見える愛しい作品だった。1970年代が本作の主な舞台だが、今現在の犬に対して良しとする行動をなるべく誤解させない、必要以上に犬を擬人化しない、といった配慮を感じる。 日本のハチ同様、ロシアでは有名な忠犬、パルマの物語。こちらは自分を捨てた飼い主をひたすら待つ一匹の犬と、母を亡くした少年の友情を描いている。 コロナ禍で気軽に犬や猫を飼い始め、想像と違ったと捨てる人間が後を絶たないが、そういう人間はとかく「愛」を利用する。 愛という名の下に、放棄を「犬の幸せ」にすり替え、あるいは虐待を「躾」にすり替える。「人間の真の友」と呼ばれる犬たちの素晴らしさを知り得たかもしれない彼らは、不幸にもそれを生涯知ることはないだろう。 犬はいつも待つ。世界にただ一人、たとえそれが、どんな人間であろうと。宇宙にも勝る寛容と、尽きることない愛に溢れた彼らのために、私たちは一体何が出来るだろう。 本作は世界中のすべての犬たちに捧げられた映画だ。飼い主が与える愛情とは比べ物にならないほど多くのものを与えてくれる彼らの偉大さを思い出させてくれる。どの犬も漏れなく、飼い主にとってのハチでありパルマなのだ。今あなたの隣で眠る犬も、あなたがかつて一緒に過ごし、今は心に住んでいる犬も。

21/5/26(水)

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