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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

永遠の門 ゴッホの見た未来

1970年代後半から80年代にかけて、ニューペインティングの旗手として注目を浴びた画家シュナーベルだが、近年は映画監督としての評価が高まっている。画家であるがゆえに、満を持してファン・ゴッホを主人公とする劇映画に取り組んだのだろう。パリに出てから亡くなるまでのファン・ゴッホの晩年に焦点を当ててはいるものの、「伝記映画を撮るつもりはなかった」というだけに、状況説明や人物の関係といった付加情報は少なく、時系列や場所の転換を理解するのがやや難しいかもしれない。予め画家の生涯をざっと押さえてから見ることをお薦めしたい。 まず驚いたのは、63歳のウィレム・デフォーに37歳のファン・ゴッホ役の白羽の矢を立てたこと。映画の進行につれて、そのデフォーがどんどんファン・ゴッホに見えてくるという驚きがそれに続く。さらに、スプリット・ディオプターというレンズを用いて、晩年の画家が見ていたであろう風景をとらえようとする試みもインパクト大。画面の上下で被写界深度の異なる風景は目眩に似た効果を引き起こし、逼迫した画家の精神状態までも映し出しているかのようだ。登場する130点の絵画はシュナーベル自身が制作。制作場面ではシュナーベルの指導を受けて訓練を積んだデフォー自身が描いているため、制作現場の臨場感も満載だ。 そして衝撃のラストがあなたを待っているのだ。ファン・ゴッホの最後とは……(ネタバレになるゆえ、詳しくは語れず)。

19/11/5(火)

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