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水先案内人のおすすめ

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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

トルーマン・カポーティ 真実のテープ

このドキュメンタリーの原作ともいうべきジョージ・プリンプトンの『トルーマン・カポーティ』(野中邦子訳・新潮社)は膨大なインタビューの集積による<オーラル・バイオグラフィ>の傑作だが、トルーマン・カポーティという20世紀アメリカ文壇の寵児のスキャンダラスな生涯を、その光と影を、無垢と放埓を描くにはもっとも相応しい形式であっただろう。 カポーティは、南部の小さな田舎町に生まれ育ち、『遠い声 遠い部屋』、『冷血』の画期的な成功で天才作家と持て囃される。だが、その早すぎた晩年には、深く耽溺したニューヨークのハイソサエティの世界を<虚栄の市>として描き出した未完の『叶えられた祈り』によって、自ら破滅を引き寄せるかのようにして人生の幕を下ろす。 映画は貴重な映像とナレーション、関係者の証言をコラージュのように織り交ぜて、カポーティの屈曲に満ちた人生を跡付けている。圧巻は、やはり、1966年、ニューヨークのプラザホテルで500人の友人を招待して行われた「黒と白の舞踏会」の映像だろう。男女ともにマスクをつけた異様でゴージャスな光景は、どこかキューブリックの『アイズ ワイド シャット』(99)の虚ろな仮面パーティのシーンを思い起こさせる。 カポーティは、TV、映画というメディアとの異常なまでの親和性の高さも特筆される。カポーティを最初に映画界に引き込んだのはジョン・ヒューストンである。ヒューストンは『悪魔をやっつけろ』(54)の撮影に入ってもシナリオができておらず、急遽、カポーティを呼び寄せて書かせたが、出来は惨憺たるものだった。「トルーマンはブルドッグが大好きだとつねづね言っていたが、それも当然だと思うね。なぜなら、トルーマン自身がブルドッグなんだから」というジョン・ヒューストンの寸評は言い得て妙である。

20/11/7(土)

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